水源連第6回総会に参加して

1999年9月28日/辰巳の会常任理事 碇山 洋

 新たに水源連(水源開発問題全国連絡会)に団体加入した辰巳の会を代表して、9月26日に熊本県人吉市で開催された第6回水源連総会に出席しました。


 台風の影響で交通が大混乱するなか、金沢の自宅を25日朝6時前に出発し、夕方5時前には人吉に着く予定が、実際に着いたのは夜10時半でした。おかげで、水源連総会にあわせて開かれた「清流球磨川・川辺川を守る全国集会−−漁民とともに日本一の尺アユを守ろう」(18時30分開会)には出席できませんでした。


 26日朝9時から人吉商工会議所で開かれた水源連総会には、宮崎空港からタクシーでかけつけたという人など、台風直後で公共交通が壊滅状況のなか、全国から約60名が参加しました(25日夜の全国集会には地元市民・総会参加者をはじめおよそ170名が参加)


熱心な討論が展開された第6回総会


 総会冒頭、地元代表、水源連代表がそれぞれ開会あいさつ。つづいて、@基調報告、A公共事業見直し機関について、Bダム中止後の生活再建措置について、C河川整備基本方針・整備計画について、Dダム事業見直しなど最近の動きについて、E費用負担問題について、Fウォータープラン21の問題点、G共有地トラスト・土地収用訴訟について、Hホームページについての9本の報告が事務局からありました。


 Aの公共事業見直し機関について、事務局・島津暉之さんが、「泥棒の親分に泥棒を取り締まることができないのと同じことだ」と、ダム審、公共事業再評価を批判したうえで、前回総会で議論された公共事業見直し機関の提案は、新規立法よりも公害紛争処理法改正のほうが実現可能性が高いとして、当面はその方向で運動をすすめることを提案しました。


 Bの生活再建措置については、佐藤謙一郎衆院議員(民主党)の質問趣意書にたいする答弁では、建前上は再評価によってダムが中止になる可能性があるにもかかわらず、中止後のことは何も検討していない≠ニいう無責任な回答であったことが報告されました。また、八ッ場(やんば)ダムの「生活再建策」の予算では、3247億円のうち1817億円が道路を中心とする交通対策になっている例が紹介され、ハード中心の対策からソフト重視の対策への転換を求めていく必要があることが指摘されました。
 辰巳ダムでも、計画が中止されると道路など関連事業も止まってしまうという心配が地元にはありますが、関連事業の内容の是非をわきにおけば、現状では行政裁量権がきわめて大きいので、行政上のメリットがあると判断されればダム中止後も事業名を変更して関連事業は継続されるだろうという、岡本雅美教授(日本大学)の見解が紹介されました。


 Cの河川整備基本方針・河川整備計画の問題では、基本方針で流域全体のダム〔群〕の配置が決まってしまうので、策定過程への積極的なコミットメントが重要であることが強調されました。


 Gの共有地トラスト・土地収用訴訟については、徳山ダム中止を求める会・近藤ゆり子さんから補足発言があり、共有者として関係人になると事業認定に関わって裁判を起こすことができ、「原告不適格」にはできないことなどが紹介されました。この問題に関連して、議長から指名があり、辰巳ダム反対の共有地運動の現状と特徴について碇山が説明しました。


 事務局からの報告と質疑応答ののち、各地からの報告が行われました。報告・発言があったのは、川辺川ダム、細川内ダム、苫田ダム、長良川河口堰、徳山ダム、辰巳ダム、八ッ場ダム、思川開発、新潟の3つのダム、月山ダム、相模大堰の11件でした。
 辰巳ダムについては、碇山が、公共事業再評価、予備交渉・意見交換会について報告しました。


辰巳ダム再評価、意見交換について報告する碇山


 その後、事務局報告、各地の報告をめぐって総合討論が30分ほど行われ、それを受けて事務局が討論のまとめを行いました。議論が集中した公共事業見直し機関については、今後もひきつづき新規立法による公共事業見直し機関の法制化を追求し続けるとともに、当面は公害紛争処理法など既存制度の活用をできるところから大いにすすめつつ、関係法令の改正をもとめていくことが提案され、承認されました。また、費用負担・財政問題については、データのとり方、分析の仕方についての全国共通のマニュアルを事務局がつくることになりました。


 ダム中止後の生活再建問題については、必要な事業については事業名を変更して継続させることの重要性が強調されました。また、個人補償については、特別措置法の必要性について今後検討することになりました。


 最後に、事務局から、この間の事務局の活動として、国会議員との連絡・調整・共同や自然科学的分野ではかなりの成果をあげることができたが、社会科学的な分野での活動が弱かったことが反省点として出され、その分野での協力が加盟各団体に要請されました。


 時間的には、往路だけで17時間近くかかったにもかかわらず、わずか4時間足らずの総会参加でしたが、非常に充実した内容で、今後の辰巳の会の運動に大いに活かせる情報を得ることができたと思います。


 総会終了後、「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の西田陽子さん、矢次智浩さんが、全国集会・総会などの準備・運営で疲れているにもかかわらず、碇山と草島進一さん(月山ダム事業に反対している鶴岡市議)を川辺川、五木村(村の中心地区がダムで水没することになる)まで案内してくださいました。台風の影響で水量が普段よりかなり多く、水は少し濁っていましたが、それでもラフティングや釣りなど、たくさんの人が遊びに来ているすばらしい川でした。


台風直後で水は少し濁っていたが、9月下旬でも川遊びに来る人が。


川辺川ダム建設予定地。「五木の子守歌」で知られる五木村が沈められる。


 26日夜は、八代市内で熊本一規教授(明治学院大学・法学)、つる詳子さん(環境庁環境カウンセラー)などとお会いし、法的権利をつかったダム阻止の方法などについて意見交換しました。


 小松空港まで行きながらギリギリになって結局欠航になった24日からはじまって、27日夜の帰宅まで、足かけ4日間の行程はかなりたいへんでしたが、多くのことを得た川辺川行でした。


五木の子守歌の碑(森繁久弥さん揮毫)の前で、草島進一さんと。


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