県公共事業評価監視委員会、第2回会合でも辰巳ダムに結論出せず

(1999年4月2日掲載)


 第2回石川県公共事業評価監視委員会は、3月16日(火)午前、金沢東急ホテルで開かれました。土木部会、農林部会での審議経過・結果がそれぞれ報告され、了承されました。

 土木部会の報告では、辰巳ダム計画について「さらに慎重な審議が必要と認められるので、全委員の意見をきくことができる委員会で審議を継続していただきたい」とされました。

 この報告を受け、辰巳ダム計画に関する集中審議が行われましたが、結論を出すにいたらず、辰巳ダムの再評価は新年度に先送りされることになりました。

 辰巳ダムの再評価について県は、当初は「年内に結論を出す」としていましたが、土木部会(12月18日)で結論にいたらず「年度内に結論」に後退。それさえ実現できず、結論は新年度に先送りされることになりました。
 年度内に結論を出せなかったことは、辰巳ダム反対の世論の高まりの反映であると同時に、辰巳ダム計画があまりに不合理なために監視委員会としても県の「継続」方針を簡単に認められないものと思われます。

 第2回監視委員会での委員の発言の概要を紹介します。


川島委員長(石川県農業短期大学学長)

 (部会報告を受けての監視委員会の意見のとりまとめについて…)

 監視委員会で意見を出しても、事業主体も自己評価・見直しを必要とするし、その気持ちを持ってほしい。監視委員会とも緊張関係を続けて、評価を続けるのがよい。

 事業主体が絶えず自己評価することを前提に、監視委員会として意見を出す。よろしいか?

 では、辰巳ダムを除いたものについては、委員会で結論をだす。どんな形でまとめるかは委員長にまかせてほしい。案を全委員にまわして意見を聞く。


矢島委員(金沢大学理学部教授)

 辰巳ダムに関して部会での意見分布はどうだったか。賛成・反対等の中身がみえないので、全体会にかけてもわからない。


石田副委員長(土木部会長、金沢大学工学部教授)

 私の意見を先に言う。以下の3点がある。

 1)金沢市の住民・土地・生活基盤を災害から守ることは大切。洪水から川を守ることも必要。
 2)もし辰巳ダムをつくった場合兼六園の水質が悪化することが考えられるが、検討が不十分。
 3)辰巳用水を水没させ犠牲にしてもよいかという議論も不十分。

 工学的・水文学的見地からいうと、雨量強度・継続時間・水管理をきちっと現状把握して、ダムをつくったらピーク流量はどうなるかも把握しなければならない。

 雨の把握は難しい。色々なケースでシュミレーションし、水位の変化を検討しなければならないが、そのデータを私は入手できていない。

 水災害を外水災害と内水災害の2つに分けることが必要。
 高畠の冠水等は内水災害である。冠水が上流からの水がたくさんあるからか、ダムよりも下流に降ったのが流れ込むのか、その検討も不十分。データ的に判断できない。

 住民の安全を守るにはダムは安くてオーソドックスだが、辰巳ダムを建設してどれだけ安全になるかどうかのデータが与えられておらず、十分な検討ができない。まだ実行すべきかどうかの議論の段階ではない。

 審議時間も短すぎた。

 浅野川導水路(※)の議論もしていない。
 浅野川が危ないなら、堤防を高くしなければならない。犀川もそうしたり、ポンプをつけるなど、内水災害を防ぐための対策も必要である。
 浅野川対策と犀川対策の整合性、金沢全体の安全確保、それらと辰巳ダムとの関連、連動が重要だ。金沢を総合的に水害から守ることのシュミレーションをしなければならない。雨の強度については、いくらでも危険を想定できる。シュミレーションしないと。そしてこの場でもっと議論しないと。

 ※浅野川導水路=犀川にほぼ平行して流れる浅野川にはダム建設適地がないため、浅野川の洪水対策として犀川へ導水路を引き、大雨のときには浅野川の水を犀川に流すようにした。犀川の負荷が大きくなった分を、内川ダムを建設して調整。


守屋副委員長(農林部会長、金沢大学文学部教授)

 30年前から山村が崩壊している。山村崩壊に何の手も打たれていない。これをこれからどうするか。その中で簡単に「ダムをつくる」と短絡させることに疑問がある。土木部会の意見はもっとも。ではどうするかが問題だが、ダムが良いか悪いかではなくて、金沢市全体の治水計画を検討する場を立ち上げるべき、という意見。


矢島委員

 自然環境についてききたい。ニホンカモシカ、アカザなどは他地域でも確認されているようだが、具体的にはどこか。ダム予定地周辺か、それとも県内の他の地域か。

米田河川開発課長

 周辺地域と県内の他の地域ということ。資料に書いてあるとおり。

矢島委員

 アカザ、シロマダラなどは石川県全体でも個体数がきわめて少ない。「ダムをつくっても大丈夫」という考え方でないほうが良い。石川県全体で個体数が多いものと分けて議論するのが、環境に配慮するということ。




高山委員(金沢大学工学部教授)

 経済効果の積算内容について、被害を受けたときの最大水深はどのくらいか。

米田課長

 2メートル。水没被害率は1メートル以下と2メートル以下に分けて算出している。

高山委員

 公共土木農業用施設の被害について1.4倍を掛けるのはなぜか? 一般的には何割かだと思う。

米田課長

 これも技術要綱にある項目である。マニュアルに準じた全国的なものである。


村島委員(金沢工業大学教授)

 3点ある。
 1点は、石田副委員長の発言は総合的な治水の必要性とダム湖の水質問題。これらを県はクリアーしているというが、どうなのか。

 2点目は、、監視委員会の答申がどのぐらい尊重されるのか聞きたい。

 3点目は、技術的なこと。1時間に92ミリと2日間で280ミリというのは、同時に起こることを想定しているのか。計画降雨としてこれが常識的か。

米田課長

 事業主体としては技術的な問題をクリアーしながらやっている。

 委員会の意見を尊重しながら進めていきたい。

奥村課長補佐

 降雨パターンを引き伸ばすことは全国的にやっている。チェック機能として92ミリをだした。

村島委員

 280ミリと92ミリについて石田副委員長の意見はどうか。

石田副委員長

 水関係はカバーする範囲が広い。大きく分けて、@水文学、A河川工学(河川・ダム水利)、B私がやっている海岸・海洋、C流体力学、D衛生工学(環境保全など)の5つの領域がある。ひとりの人間がすべてのエキスパートにはなれない。これは水文とダム水利の問題なので、本当のエキスパートを委員に加えないと、素人と準玄人の議論になる。

 辰巳ダムの場合は特殊なので、1〜2時間の議論で結論を出せない。
 日雨量・時間雨量をどうするかでも議論がある。積算の仕方でも違う。本当の専門家を入れないと。

 また、高畠では去年日雨量44ミリの時、あと1メートルで越堤していた。とても危険。日本の河川の約半分はそんな危険がある。良心的な人ほどそう思っている。犀川もなんとかしないと。
 予算や悪影響も考慮しながらだが、ダムも1つの方法である。

 しかし、ダムをつくってもどれぐらい安全になるか十分に検討しなければならない。
 ダムは上流に降った雨を調節する。上流に降った雨を我慢しながら溜める。下流に降った雨はすぐ海へ流し、上のダムで少しずつ流すようにしてピークを押さえる。
 ダムより下流の問題は内水災害。コンクリートが多くなり、道路も屋根も水を吸わないで、犀川に落とす。樋門、樋管、パイプで落とす、ゲート、堤防の嵩上げなどをする。引き堤は検討するまでもなく、計算はいくらやってもだめ。堤防の嵩上げが必要。

 浅野川導水路と犀川を連動させないと。犀川だけの単独の議論はだめ。両方を強くしないと。

 河川工学の専門家も必要。私は専門家としてここにいるが、水文学と河川工学の人に入ってほしい。


川村委員(金沢工業大学教授)

 村島委員の発言に関して。研究と実務は違う。実務の話はマニュアルに準じてやっている。特に土木構造物は。降雨分布をどうするかもマニュアルがある。事業者はさほど特別なことはやっていないと思う。基準に基づいてやっている。


織田委員(石川県経営者協会会長、北陸鉄道株式会社会長)

 昭和9年の手取川水害のときに家が流れたのを見て恐ろしかった。100人以上なくなった。明治にもそんなことがあった。被害を受けた人が北海道へ行った。昭和9年からは大水害はないが、砂防工事や手取川ダムの効果だと思う。金沢はもっと人口が多いので、公共投資の誘導については人命を大切にしてほしい。

 税金を使うことで大切なのは、どこに重点をおくかということ。文化・歴史的価値より、危険を避けるということでまとめてほしい。


川島委員長

 時間がきたので、今回の議論はここまで。

 反対派の意見を聞くことについて、県と反対派の意見交換をもう少しやってほしい。委員も出席して勉強してほしい。意見交換で努力し、それを委員会で報告という形で。委員には意見交換に出席してほしい。


アーカイヴ目次にもどる  ホームにもどる