辰巳の会は、2月23日付で県公共事業評価監視委員会にたいして、辰巳ダムに反対する県民からの意見聴取を行うよう、文書(郵送)で申し入れました。
以下に、申し入れ文を掲載します。
1999年2月23日
石川県公共事業評価監視委員会
委員長 川島良治殿
兼六園と辰巳用水を守り、ダム建設を阻止する会
会長代行 中井安治
公共事業の効率性・透明性確保のための御尽力に敬意を表します。
昨年12月18日に開かれた県公共事業評価監視委員会土木部会では、辰巳ダム建設計画について「事業継続が妥当」との県側の方針は承認されず、結論は監視委員会全体会に持ち越されることになりました。当会は、以下のように、全体会で結論を出すに先立って、当会をはじめ辰巳ダムに反対する県民から監視委員会が意見聴取する場をおつくりいただけるよう、ここに申し入れるものです。
(1)報道によると、石田啓土木部会長は、辰巳ダム建設計画にたいして反対運動が存在することを、土木部会で結論を出さない理由のひとつに挙げられました。全体会で辰巳ダム再評価にかんする結論を出す前に、「結論先送り」という異例の取り扱いの理由となった反対運動について、監視委員会が事情を十分に把握されることが必要です。
(2)監視委員会は、県が自ら行った公共事業再評価を監視する第三者機関とされています。第三者が公正な判断をするには、すべての当事者からの情報はもちろん、できるだけ多くの情報を得ることが必要です。ところが、これまでのところ、監視される立場にある県からの情報は監視委員会に提供されていますが、もう一方の当事者である私たち辰巳の会から監視委員会への情報は、いくつかの申し入れの文書以外、まとまった形で提供する機会がないままです。このまま監視される側の説明だけにもとづいて監視委員会が結論を出すようなことがあれば、第三者機関という建前にまったく反することになってしまいます。
(3)◇監視委員会に提出された資料では辰巳ダムは昭和58年着工とされているが、正式の認可は平成3年であり、この間、違法状態であった可能性がある、◇県のつくった辰巳ダムの治水計画には「データの捏造」ともいうべき重大な誤りが含まれている、◇新しい基準で百年確率の洪水量を算出したとき犀川の流量は大幅に増やされたが浅野川のほうは変わっていない(=恣意的操作の疑いがある)、◇計画決定後に得られた雨量データをふくめてより精度の高い計算をすれば洪水量はかなり小さくなるなど、当会をふくめ辰巳ダム計画には多くの批判・疑問が提起されています。辰巳ダム再評価が議題となった昨年12月18日の監視委員会土木部会は非公開であったため、これらの批判・疑問に県がどのように答えたのか私たちには分かりませんが、批判されている側の一方的な説明だけにもとづいて監視委員会が辰巳ダム再評価に結論を出すようなことがあれば、第三者機関としての役割を果たしていないとの批判は免れません。当会をはじめ辰巳ダムに批判・疑問を提起している県民からあらためて意見を聴取し、県の反論・回答、県民側からの再批判・再質問という一連の流れをふまえて、再評価の監視を行う必要があります。
(4)今回の公共事業再評価は今年度内に完了させるという県の方針が報道されています。年度内に完了するというスケジュールにこだわれば、当会などからの意見聴取の時間がないということになりかねません。しかし、監視委員の任期は2年とされており、「年度内に完了」は監視される側の県の希望に過ぎません。第三者機関が公共事業再評価を公正に監視するにあたって、監視される側の希望を絶対視しなければならない理由はありません。再評価監視を意義あるものにするためには、当会などからの意見聴取など、十分な時間をかける必要があります。もし意見聴取を行わずにどうしても年度内に再評価監視を終了させるのであれば、“もう一方の当事者である反対派県民からの意見聴取が終わっていないので結論は出せない”というのが常識的な「結論」であるはずです。
以上のような理由から、公共事業の効率性・透明性を確保するための新たな試みである今回の再評価を充実したものにするため、当会をはじめ辰巳ダム建設計画に批判・疑問をもつ団体・個人からの意見聴取の場を県公共事業評価監視委員会として開催していただけるよう、よろしくお願い申し上げます。