プレスリリース

辰巳の会の申し入れにたいする県の「回答」について

1998年9月28日

兼六園と辰巳用水を守り、ダム建設を阻止する会 事務局

 本会が7月24日に行った「辰巳ダム建設計画に関する申し入れ」にたいして、県から8月31日付で文書が送られてきました。申し入れの際に記者会見を行っているので、この「回答」についてもコメントしておきたいと思います。

1.「回答」の形式上の問題点

(1)期日について
 本会から石川県知事あてに提出した申し入れ文書では、「以上の申し入れに関する貴職の見解を、8月3日必着で文書にてお知らせいただけるようお願いいたします」としていたが、3日をすぎても文書は届かず、電話等、県からは何の連絡もなかった。窓口となっている河川開発課の米田課長に本会事務局(碇山)から電話で問い合わせたところ、知事の外遊などの事情があるので20日まで待ってほしいとのことであった。期日に間に合わないときには事前に連絡をするべきであることを碇山が強調し、米田課長も期日に間に合わなかったこと、連絡をしなかったことを率直にわび、あらためて期日を20日とすることで合意した。
 ところが、20日になっても文書は届かず連絡もなかった。碇山から米田課長に電話をかけると、課長自身が2週間ほど病気で欠勤していたため回答が遅れているとのことであった。碇山は、病気という事情は理解できるとしても、今回も県側から連絡がなかったことに抗議したうえで、31日必着でもう一度だけ期限を延ばすことに合意した。(今回届いた文書は、8月31日付であったが、実際に本会会長代行の手許に郵便で届いたのは9月1日であった。)
 知事の外遊、窓口となった課長の病気など、それなりの事情があったとはいえ、回答期限を延期してもらいたいとの連絡が、事前も事後も県側から一切なかったことは、問題である。県民が大きな関心を寄せ、県自らが計画の再評価を表明している辰巳ダム問題についての市民団体の申し入れにたいする対応として、適切さを欠くものといわざるをえない。

(2)問題の位置づけについて
 7月24日付の当会の申し入れは県知事あてに行ったものであり、申し入れ文書ではこの申し入れに関する知事の見解を求めた。しかし、31日付の「回答」は、「石川県土木部河川開発課長 米田昭夫」の名前で出されている。
 知事の見解を求めているのに、窓口となった河川開発課の課長名で回答がくるようでは、知事の問題の位置づけ方に疑問を感じざるをえない。
 知事の外遊を回答が遅れた理由としながら、課長名での回答となっていることを、どのように説明するのだろうか。
 これまでにも辰巳の会は県知事あてに要望書や質問状などを提出してきたが、すべて県知事名での回答を受けている。今回の県側の取り扱い方を重視した辰巳の会は、9月14日、「『辰巳ダム建設計画に関する申し入れ』に県知事の回答を」(別紙)を県知事あてに郵送した。
 それにたいして、河川開発課長名で「平成10年9月14日付けの『県知事の回答を』について」という文書が9月25日付で郵送されてきた。県知事の回答をもとめたにも関わらず課長名で「回答」が届いたため、あらためて知事の回答をもとめたの
に、また課長名で文書が届いたのである。今回の文書は、公印さえ押されていないものである。なぜ今回に限り知事名でなく課長名での回答になったかの説明もない。
 辰巳ダムの再評価にとりくむというまさにそのときに、市民からの声を従来より低く扱う県の姿勢に、私たちは強い疑問を感じざるをえない。

2.回答の内容について

 申し入れの際の記者会見でも明らかにしたように、今回の本会の申し入れの中心点は、県が辰巳ダム計画の再評価を行うことを議会で明らかにしたことに対応して、再評価にあたって情報を公開し、反対派をふくむ市民・専門家の参加をえて再評価を行うこと、再評価の一環として辰巳ダムに反対している地権者の意見を聴くことを求めたところにある。

(1)回答の第1項について
 回答の第1項は、「辰巳ダムの建設は必要不可欠であり、引き続き事業を進めていきたい」と述べている。
 再評価をはじめる前から、「建設は必要不可欠」として事業推進を明言するのでは、いったい何のための再評価なのかという批判は免れない。本会は、辰巳ダム計画の科学的・民主的な再評価をもとめて、ひきつづき奮闘するものである。

(2)第2項について
 第2項は、「再評価の実施方法及び設置する機関の組織等については、現在検討中」としている。実施方法、機関の組織をどのようなものにするかということ自体が、県民の声をききながら検討するべき問題である。本会は、この検討のプロセス自体の情報公開をはじめ、再評価の方法・機関が民主的なものになるようにもとめていく。上記のように、県が再評価を前に事業推進の必要性を強調しているだけに、再評価の方法・機関を県がどのようなものにしようとするか、市民の監視が必要である。
 なお、第2項の後半で、過去の情報公開について述べられているが、今回の申し入れでもとめているのは「再評価にあたっては、あらゆる情報を県民に公開」することである。ひきつづき再評価に関する情報公開をもとめていきたい。

(3)第3項について
 第3項は、辰巳用水の史跡指定等について、「県文化財保護審議会の意見を踏まえ、検討していきます」としている。この回答は河川開発課長名で出されており、河川開発課長が辰巳用水の文化財指定を検討するべき立場にあるのかどうか甚だ疑問であるが、文化財保護審議会の意見を踏まえるということが公式文書で明らかにされたことは重要である。
 本会としては、ダム建設計画にとらわれない客観的な評価にもとづく文化財指定を、文化財保護審議会にもとめていきたい。
 なお、河川開発課長名での文書で「辰巳用水の史跡指定等については、石川県文化財保護審議会の意見を踏まえ、検討していきます」とされているわけだが、河川開発課は“文化財保護審議会の意見をききながら史跡指定を検討する”べき部署ではないはずである。「辰巳ダム計画の障害とならないよう、県は辰巳用水の文化財指定を避けている」といわれているが、今回の「回答」は、河川開発課長名で出したために、それを裏付けるかたちになってしまっていることを指摘しておきたい。

(以上)