建設是非は先送り♪ (1998年12月20日)
18日に開かれた石川県公共事業評価監視委員会土木部会では、辰巳ダム建設計画が議題にされ、事業推進の是非にかんする方向性は打ち出されず、結論は公開で開かれる監視委員会全体会に先送りされました。
土木部会には監視委員会の全委員10名のうち7名が属しており、監視委員会委員長(川島良治県農業短大学長)も一委員として参加しています(18日は5名が出席)。土木部会で「事業継続」の県の方針が承認されなかったことは、非常に大きな意味をもっています。
県は当初、建設省の指示にしたがって、政府予算案編成に間に合うよう年内に結論を出す方針でしたが、年内決着は事実上不可能になりました。世論と運動の大きな成果です。
共有地運動はじめ有形・無形の御支援、御協力をいただいたみなさんに心から感謝するとともに、当面、監視委員会全体会でも「事業継続」が承認されないよういっそう運動を前進させる決意です。
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新聞報道(北國、北陸中日、読売の19日付朝刊)によると...
米田昭夫県土木部河川開発課長は、百年に一度の大雨(2日間で280ミリ)が降ったと想定した場合、流域での一般資産、農作物、公共施設におよぶ被害は3千億円との試算をしめしました。コストについては、当初計画の建設費123億円に物価上昇を考慮して140億円とし、費用対効果は事業費の21倍と強調。
米田課長は、(1)犀川大橋周辺の犀川左岸の護岸拡幅(引き堤)(1200億円)、(2)右岸拡幅(1800億円)、(3)河川敷の用水の撤去、(4)河床の掘削(700億円)の4つの代替案をしめし、費用が700億円から1800億円に上るうえ、市街地の建築物撤去など社会的影響が大きいことから「代替案は至難」との見方をしめしました。
委員から「代替案は工学的に可能だが、現実は土木工事費だけで済まない。無理とのことか」と質問が出され、米田課長は「社会環境に与える影響は難しい」と、現実性がないとしました。
別の委員が、歴史的な遺産の辰巳用水取水口の一部(碇山注:「水トンネルの一部と取水口」のまちがい)が水没することをとりあげ、「ダムの建設位置を上流に移すことは可能では」と質問したのにたいして、米田課長は、1980年に複数案のなかから検討済みで、現在位置が機能面で効果的との考えをしめしました。
また、「(犀川大橋地点で)水があふれたのを見たことがない。県は(雨が降るたびに浸水被害にあうような)もっと問題の場所で説明すべきではないか」などの指摘がありました。
石田啓部会長(金沢大学工学部教授)は、「辰巳ダムは二十数年もめている。部会は技術的なアドバイスしかできない」と指摘し、「反対意見もあり、価値観が違うことの議論になっている。オープンで県民も傍聴できる上部機関の委員会で結論を出さないといけない」と述べ、部会では結論を出さず、全体審議にゆだねる考えをしめしました。
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18日夜おそく、北國新聞の記者から電話取材がありました。
そのときに県の「代替案」の説明について知らされました。そのとき電話で話したことの一部が「北國」に載りました。一部紹介します。
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「偽りの情報」と批判 阻止する会(見出し)
……(碇山は)治水効果は3千億円とする県の試算について「厳密な計算であるか疑問」と述べた。その上で、ダム建設よりコストが低い代替案を故意に示していないとして「県は監視委員会に偽りの情報を流し、誤った結論を得ようとしている」と批判した。
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公開質問状にたいする回答のなかで、県自身が代替案として、犀川大橋地点の高水敷の一部削除をあげています。
この高水敷の中をふたつの用水が通っています。県が土木部会にしめした代替案の(3)がこれにあたるのかもしれませんが、用水を撤去・移設する必要はまったくありません。犀川大橋地点で、高水敷の一部を削除したうえで、テラス状の構造物を川のなかにつくりその中に用水を通せば、新たな用地買収などの必要はまったくありません。
県の代替案(3)のコストについては新聞に明示されていませんでしたが、記事からすると「700億円以上1800億円以下」の範囲ということになります。
辰巳ダムの治水計画の「データのねつ造」を発見した建設コンサルタント・中登史紀さんは、「おおまかに見て」と断ったうえで、高水敷の撤去・テラス化は30億円程度で可能ではないかと指摘しています。
30億円の倍としても60億円。3倍でも120億円で、辰巳ダムより安上がりで同じ効果をあげることができます。辰巳用水や犀川渓谷の自然環境を破壊せずに。
新聞報道では、「データのねつ造」との批判に県が言及した様子はありません。また、環境アセスメントへの批判についてもふれていないようです。
辰巳の会として、監視委員会にたいして、今回の土木部会での県の説明の問題点について情報を提供していこうと思います。