〜オトナになりたい〜
仙台へ向かう特急ヴェガの車内。ちょっと人探し中で車内を走ってるの。
「お兄ちゃーーーん!」
「お、なんだ、つばさか。息切らせてどうしたんだ?」
「えっとね、わ、私とデートしてほしいの!!今からすぐに」
「で、デート??う、う〜ん・・どうしようかなぁ・・・」
私、七尾つばさ14歳。中学3年生。お兄ちゃんとは幼なじみなの。今日はどうしてもお兄ちゃんと
デートしたいから・・・いや、絶対にしたいの。それだからヴェガの車内をうろつくお兄ちゃんを探してたの。
「でもなぁ・・・」
「えぇ〜?ちょっとぐらいいいでしょぉ〜。ねぇねぇねぇ。」
「う〜ん・・・どうしても??」
「どうしてもっ!!ねぇ、ダメぇ??」
「うん・・。そんな気分じゃないんだ・・・。」
「!!。ふーんだ。お兄ちゃんなんか大嫌い!!べーだ!!」
突然走り出してしまった つばさ。
「あ、つばさっ!」
なによなによ。お兄ちゃんてばいつもいつも子供扱いして・・・。わ、私だって私だって・・・。・・・ドシン!
「きゃっ!」
「あ、ごめんなさい車掌さん。ちょっと失礼します。」
慌てて頭を下げてまた走り出してしまう つばさ。
「あ、つばささん!」
追いかけようにも彼女はもう端の方まで行ってしまっていた。
でもふとぶつかったトコを見てみるとうっすらと涙のようなシミができていた。
「・・・あとでお部屋に行って見ましょうかね・・・」
美弥澪車掌がふとこぼす。
〜つばさの個室〜
「ばかばかばかばか!お兄ちゃんのばか!もうお兄ちゃんなんか知らないんだからっ」
手持ちのぬいぐるみに八つ当たり中のつばさ。
「ふーんだ。もうお話もしたげないから。・・・寂しくなんか・・・ないもん・・・」
コンコンとドアのノックする音。
「はい?どちらさん?」
「つばささん、いらっしゃいますか?車掌の美弥ですけども・・・」
「あ、車掌さん。今、開けますね。さ、どうぞどうぞ。」
「失礼します」
「つばささん、さっき私とぶつかったときに乗車証を落とされませんでしたか?」
「えっ?乗車証??・・あーっ!!」
スカートに付けてたハズの乗車証が無くあわてふためくつばさ。その姿を見て微笑する美弥さん。
「はい。じゃ、これお返ししますね。」
「あ、ありがとうございます。車掌さん。」
「・・・でも、つばささん・・・。どうして泣いてたんですか?」
「え・・・。うん・・・。お兄ちゃんにデート断わられて・・・ちょっと・・・」
「そうでしたか。ではあとで私からちょっと注意しておきますね。」
「うん。ガツンと言ってやって。車掌さん。」
「・・・仲が良いんですね。まるで本当の兄妹みたいですね。」
「えぇ??そ、そんなコトないよぉ。車掌さん。たたた・・・・。そう。只の幼なじみなんだもん。」
「そうですか。では私は見つけたら一言言っておきますね。それでは失礼します。」
部屋を出ようとする美弥さんを引き止めるようにつばさが、
「あ、み、美弥さん!・・・どうやったら美弥さんみたいに・・その・・オトナとしてみてくれるかなぁ・・・」
ぼそっと聞いてみる つばさ。すると、
「大丈夫ですよ。つばささんにもちゃんとオトナとしての魅力がありますから。
それにそういうコトを考えるようになるってコトは立派な大人。レディの証拠ですよ。」
つばさに向かってウインクする美弥さん。
「な、なら今、大人に見せたいって時はどうすればいいの??」
「そうですねぇ。よく言いますよね。髪型や服装が換わるだけで女の子は違って見えるって。
それを実行してみてはどうですか?って、同じ女である私が言うのもヘンですね」
ちょっと苦笑する美弥さん。それを見て つばさは首を横に振る。
「ううん。ありがとう車掌さん。慰めに来てくれて・・・。」
「いいえ。乗客のことを第一に考えるのが私たち乗務員の務めですから。それでは良い旅を続けてくださいね。」
出て行く車掌さんを手を振って見送ったの。少しは気が晴れたけど・・・
・・・・あぁ〜〜、やっぱりお兄ちゃんが直に来てくれるまで許さないんだから!!ふーんだっ!
・・・・でもこういうのをコドモっぽいって言うのかなぁ・・・どうなのかなぁ・・・
でも怒ったりすることがコドモっぽいって言うのなら美弥さんやさとみさんや真美さん達は
怒ったりしないのかなぁ・・・。・・・はぁ、わかんないなぁ・・・オトナって・・・。
お兄ちゃんは私のコト、どう見てるんだろう・・・。でも・・・星奈さんって私と変わらない気がするのは気のせい??
それに小麦さんだって私の水着着れたり私と体格ちっとも変わんないし。ちひろさんだって、ああ見えて・・
>何気にかなり毒を吐いてることにはちっとも気付かない つばさであった。
しばらくしてドアをノックする音。
「つ、つばさ・・・。まだ怒ってる・・・よな?さっき美弥さんにも言われたんだ。」
「・・・・・。」
「ホントにゴメンな。今度はちゃんと付き合うからさ、デートに。」
「・・・本当に?」
もの凄く重圧のある声でつばさが返事する。
「あぁ・・・本当だ。だから今度はこっちからお願いする。つばささん、デートしてくださいって。」
しばらくして、しかめっ面のつばさがドアから顔を覗く。
「もう一回言って。」
「はぁ?」
「もう一回言って。さっき言ったコト。」
「うん?・・あぁ、判った。(すぅー。はぁー。)つばささん、私とデートしてください。お願いします。」
つばさに向かって手を差し出す。つばさはそれをしっかり握って
「うん。喜んで♪わーい、じゃ、すぐ用意するから待ってて。」
「えぇ?準備なんか要るのか?」
「み・だ・し・な・み・よ。レディにはオシャレが必要なんですから。さぁさぁ外で待っててね。お兄ちゃん。」
「へいへい。先に行ってるぞ。つばさ」
「うん」
さて、ならどの格好していこうかな?
あっ。そうだ、勝お兄ちゃんの結婚式で着るつもりのドレス着ていこう。これで少しはオトナに見えるかな??
よーし、これに決定!!・・・お兄ちゃん、ちょっとは驚くかな?・・・すこし私もドキドキしそう・・・。
(完)