〜きっと、自分らしく〜

「ツー・ツー・ツー・ツー」
「なんだ、まだ電話中か・・・。また後でかけ直すか・・・。」
「きっと美帆ちゃんとだな。ホントに仲いいんだな。あの二人・・。」
ちなみに誰に電話してるかと言うと佐倉楓子ちゃんである。高校を卒業してはや2年。お互い就職して
忙しい日々を送っているがちゃんと連絡は毎日取り合ってる。
「そうだよな。今の僕が居るのは彼女のおかげだもんな」
そう。今の僕と楓子ちゃんがこうなれたのも彼女が居たからだろう。

高校の卒業式の日。楓子ちゃんから告白されて僕たちははれて恋人同士となることができた。
そんな僕たちの今までをずっと見つめていた娘が一人・・・。白雪美帆ちゃんだ。
しばらくして電話が鳴り受話器を取る。
「あ、佐倉ですけど。」
「もしもし。楓子ちゃん?また美帆ちゃんと長電話だった?」
「あぁ〜。やっぱり判っちゃう??実はそうなんだ。それでねそれでね。今度、3人で会わないかって。」
「うん。別に良いよ。ならまたそっちで決めておいてね。」
「うん。
・・・・・。
・・・・・。
・・・もう夜も遅いから切るね。じゃ、おやすみなさい。」
「うん。おやすみ。また明日ね楓子ちゃん。」

今度、美帆ちゃんと3人で会おうね・・・か。
なんとなく今日は高校の頃を少し思い出しながら僕も眠りに付くことにした。

・・・・・・
・・・・・・
・・・・高校の入学したばかりの頃
街を歩いていていつも行きつけのお店(ファンシーショップらしい)に寄ってみたんです。
まだ入学したばかりであまり友達も居ない頃でした。
お店に入ると同じクラスの子が居ました。

美帆「こんにちわ。佐倉さん。こんなトコで奇遇ですね。」
楓子「あぁ、こんにちわ。白雪美帆さん。」
美帆「佐倉さんもこのお店良く来るんですか??」
楓子「うん。だって可愛いものいっぱいあって楽しいでしょ??」
美帆「そうですよね。私もこのお店大好きなんですよ。」

そんな他愛のない会話から私は佐倉さんとすぐに打ち解けてお友達になることができました。
そして学校の部活が終わると二人で一緒に帰ったりもしました。

美帆「へぇ〜。佐倉さんはまだひびきの市に引っ越してきたばかりなんですか?」
楓子「うん。だからお休みの日とかはこうやって街でお買い物してるの。」
美帆「私は・・・ずっとこの街に住んでいて・・・。他の街と言うととなりのきらめき市しか知りませんし・・・。
佐倉さんみたいに他の町も知ってるなんてなんかステキですね。」
楓子「ううん。そんなことないよ。悲しいコトだって・・・あったんだモン。」
美帆「あ、すみません。そんな風に言ったつもりじゃないんですよ。佐倉さん。」
楓子「うん。わかってるよ。だって白雪さん優しいもん・・。」
・・・・・。
・・・・・。
美帆「それでは私はこっちですから。ここで・・・。それではまた明日。さようなら佐倉さん。」
楓子「うん。またね。バイバイ白雪さん。」
しばらく歩いて佐倉さんが振り返って
楓子「白雪さん。また明日もいっしょに帰ろうね。じゃぁね〜。」
手を振って帰っていきました。私もちゃんと手を振りかえしましたよ。

美帆「ただいま〜。」
真帆「あ、おかえり。姉さん。・・・ちょっと遅いんじゃない??」
美帆「えぇ。お友達と途中まで一緒に帰ってきましたから。」
真帆「へぇ〜。姉さん、もう友達できたの?」
美帆「はい。真帆ちゃんはまだ出来ないんですか?お友達??」
真帆「なに言ってるの。そんなわけないでしょっ。ささ、早く着替えてくる。ほらほら。」
美帆「あん。そんなに急かさないで真帆ちゃん。」

真帆ちゃんは私と双子の妹。私が少しおっとりしてるせいかあの娘は私に世話を焼いてきます。
どっちがお姉さんなんでしょうねぇ?・・・・ってちょっと苦笑しちゃいますね。

占いが好きな私はクラスの女子の中では人気の高いほうらしいんです。
休み時間になると女子が私の席を囲んで占いをやってって言ってくるんですよ。
(なぜ疑問系なのかはあとで楓子ちゃんから聞いたコトをそのまま言ってるからである。)
そんな中、私と佐倉さんは同じ男の子と出会いました。でも私も佐倉さんもクラスの男の子とも
部活の男の子ともよくお話をするのでホントに良いお話相手ぐらいにしか思ってなかったんですよね。

そんな学校の帰り道。また佐倉さんといっしょに帰ったとき、
美帆「佐倉さん。部活は・・・楽しいですか??」
楓子「うん。みんな一生懸命に頑張ってて。私、頑張ってる人を応援するの大好きだもん。」
ちなみに佐倉さんや野球部のマネージャーだそうです。私は演劇部なんですけどね。
楓子「・・・でも、白雪さんはどうなの?演劇部ってやっぱりお芝居するんだから
セリフ覚えたりアクションしたりタイヘンなんだよねぇ??」
美帆「いえいえ。私はただ台本を書いてるだけですから・・・。他になにもできなくて・・・。」
楓子「へぇ〜。お芝居の台本かぁ〜。だったら白雪さんナシじゃお芝居もできないんだ。スゴイよ白雪さん。」
美帆「私はただお話を読んで妄想に浸るのが好きなだけで・・・。それをただ文章にしてるだけで
全然たいした事ではありませんよぉ。」
楓子「だったらだったら、今度、白雪さんの台本を見せてくれないかな??」
美帆「きっとつまらないと思いますけど・・・。いいですよ。私のなんかでよければ。」
楓子「うん。ありがとう。なら楽しみにしてるね。白雪さん。」

そうやって次第に仲良くなっていった私達はよくお互いの家に遊びに行ったりとどんどん仲良しになっていきました。
そして2年生になった春のこと。

楓子「あ〜ぁ。残念だね。白雪さん。別々のクラスみたいだね。」
美帆「はい・・。でもこればかりは仕方ありませんね。昨日の占いでも今日はひとつだけ
善くない事が起こるってでてしまってましたから・・・。」
楓子「でもぉ・・・別のクラスになっちゃったけど・・・また前みたいに一緒に帰ろうね?」
美帆「えぇ。もちろん。だってお友達じゃないですか。」
にこっと微笑む。向こうも微笑み、
楓子「そうだよね。だってお友達だもんね。ヘンなこと聞いちゃったね。ゴメンね。」
美帆「いえいえ。なら今日も放課後待ってますから。」
楓子「うん。じゃ、クラスの前までいっしょにいきましょ。」
美帆「はい。」

しばらくして、佐倉さんから「男の子を好きになっちゃったかも知れない」と聞いたときは
「なんか少女マンガの主人公みたいでステキな恋ですねぇ」って少し茶化して言ってみたら
「私も少しそう思っちゃったけど・・でも違うんだもん」と顔を真っ赤にして言ってたりして
とても微笑ましく聞いていたりと、私自身なにも気に止めもしなかったんですよね。
・・・ただ・・・最近はそんなお話ばかり・・・。ちょっと妬けちゃいます・・・。

そして夏休みを来月に控えた6月のこと。

楓子「ねぇねぇ。白雪さん。あのね、わ、私と彼の・・・その・・れ、恋愛運ってどうなのかな・・?
少し・・・占って・・・欲しいんだけどダメかなぁ?」
しゃべっていくうちに照れてるせいか見る見る赤くなっていく佐倉さん。
美帆「えぇ。いいですよ。では私の前に座ってください。」
楓子「・・・うん・・・。よろしくお願いします。」
ぺこっとお辞儀する。
美帆「・・・・。・・・・。・・・・。」
無言のままタロットを開いていく美帆ちゃん。それを真剣な眼差しで見つめる楓子ちゃん。
しばらくして美帆ちゃんの手が止まって楓子ちゃんの方を見つめる。
美帆「今出ました。とっても良い相性のようですよ。きっとずっとずっといっしょに居られると思います。
・・・でも・・・ここ近いうちになにか悪い事が起こりそうなきざしがあります・・・。
それがなにかは判りませんけど・・・。」
楓子「ううん。悪い事はきっと私のドジなことだよ。・・・でも・・・ずっといっしょに・・・居られるか・・・。」

私はこのとき少し気になりました。佐倉さんが好きな方ってどんな人なのか。
それと同時に私が出来ることがあるなら佐倉さんを応援していこうと・・・。
・・・妖精さん。私が見届けられない時は代わりに佐倉さんを見守っていてくださいね。

そして夏休みに入って8月になったとき佐倉さんから電話が掛かってきて、

美帆「はい。白雪です。」
楓子「あ、もしもし。佐倉と言いますけど・・。」
美帆「あぁ、佐倉さん。どうしたんですか?電話なんて。」
楓子「・・うん・・。ちょっと相談があって・・。」
美帆「私なんかでよければご相談にお乗りしますよ。どうかしたんですか??」
そう言うと電話越しの佐倉さんの声が低くなって、
楓子「実は・・・今月末に突然引っ越すコトが決まちゃったの・・・。」
美帆「えぇっ!?それはホントですか?」
つい、私でもびっくりするような大声を出しちゃいました。電話越しには思い切り響いたらしく、
楓子「きゃっ!!・・・突然大声ださいでよぉ。白雪さん、私が驚いちゃったじゃないのよぉ。」
美帆「あ、ごめんなさい。でもホントに驚いてしまったもので・・・。」
楓子「ううん。大丈夫だよ。・・・でも、そのコトで少しお話があるんだ・・・。ねぇ今から会えないかな?」
美帆「今からですか?・・・・はい。良いですよ。何処にしましょう?私のおうちでも良いですか?」
楓子「うん。そうだね。なら今からそっちに行くね。白雪さん。」
美帆「はい。お待ちしてます。それでは。」
電話を切ってまずは真帆ちゃんが居るか確認。だって双子の姉妹だってのは学校のお友達には
ナイショにしてますから。だって驚かすにはちょうど良いじゃありませんか。
でも真帆ちゃんは外出中で家には居ませんでした。・・・少し残念ですね・・・。
(ひょっとすると美帆ちゃんはちょっとイタズラっ娘かも)

しばらくして佐倉さんがおうちにやってきてお部屋に上がってもらいました。
楓子「わぁ・・・。白雪さんのお部屋かわいい♪あっ、これ”けろけろでべそ”ちゃんね。」
美帆「はい。私、可愛いもの大好きですから。ついつい集めてしまうんです。」
楓子「私も大好きだよ。こんな可愛いものならお部屋中に押し込んじゃいたいくらい。」
少し他愛のないお話をして本題に入りました。
楓子「実は・・・引っ越すこと・・彼にまだ言ってないんだ。というかすっごく話しづらくて・・。」
美帆「そうだったんですか・・・。でも言わないといけませんよ?なにも言わずして別れてしまってはいけませんし。」
楓子「うん。だからそれをどうしようか白雪さんに相談しに来たんだ・・。」
美帆「う〜〜ん。困りましたねぇ・・・。こういうお話は真帆ちゃんのほうが・・・。」
楓子「ん??白雪さん。なんか言った??」
白雪「あぁっ!いえいえ。な、何でもありませんよ〜。は、ははは。」
下のほうから”ただいま〜”と声がする。真帆ちゃんが帰ってきたんだろう。
美帆「あ、佐倉さん。私、少しお茶を入れてきますね。ちょっと待っててください。」
いそいそと部屋を出て行く美帆ちゃん。急いで階段を駆け下りて真帆ちゃんのもとに行く。
美帆「真帆ちゃん!真帆ちゃん!」
真帆「あ。姉さん、ただいま。ん?どうしたの?慌てて??」
美帆「じつは・・・。」
・・・・・。
・・・・・。
真帆「ふ〜ん。・・で姉さんの手には負えないと・・・。」
美帆「もうっ。佐倉さんは真剣なんですよ。真帆ちゃん。」
真帆「はいはい。なら私が話をしてくればいいんでしょ?姉さん?」
美帆「えぇ。お願いね。真帆ちゃん。」
真帆「うん。なら着替えたほうがいいね。姉さん、ほら。」
なんと、美帆ちゃんと真帆ちゃんが入れ替わって楓子ちゃんの相談を受けることに。
真帆「お待たせ〜・・・しました・・。」
楓子「ちょっと遅かったね。あれ?なんか雰囲気が変わってない??白雪さん?」
真帆「えぇ?そうですか??いつもと代わりませんよぉ〜。」
(さすがに双子なだけあって美帆ちゃんのマネはうまかった。)
・・・・・。
・・・・・。
真帆「ふんふん。なるほどね〜。佐倉さんってけっこう姉さんに似てるんですね。」
楓子「ん?なんか言った??白雪さん??」
真帆「えぇ!?いえいえ〜。なんでもありませんよぉ〜。」慌てて弁解。
楓子「・・・なんか今日の白雪さん。ちょっとヘンだよぉ。」
それでも弁解を繰り返す真帆ちゃん。ふと目をやった先はカレンダー。
真帆「あ、そうだ。佐倉さん。今度の26日に花火大会があるじゃない?それに彼を誘えばいいんじゃない?」
楓子「花火大会かぁ・・。それなら言えそうな気がする。うん、そのとき彼に言うね。ありがと白雪さん。」
真帆「いいえ。お礼は姉さんの方に言ってね。佐倉さん。」
楓子「お姉さん??白雪さんってお姉さん居たっけ??」
真帆「いえっ。その・・・わ、私のいとこの年上の姉さんがいてけっこうそういう話をするのよ。
・・で、そのお話が参考になったから・・・でも佐倉さんはお礼言えないもんね。私が今度伝えておくね。」
楓子「ねぇ。白雪さん。ホントに今日はヘンだよ?どっか具合悪いの??」
真帆「だ、大丈夫ですよ。あ、もうこんな時間。佐倉さんおうちのほうは大丈夫?」
楓子「あっ、もうこんな時間。いけな〜〜い、早く帰らなきゃ。」
真帆「玄関まで送りますね。下で少し待っててください。」

そういってまた真帆ちゃんと私が入れ替わり、佐倉さんを見送りました。
・・・でも花火大会でちゃんと言うと言ってた佐倉さん。結局、言えずまま引っ越してしまったそうです。

そして新学期を迎えた9月。
佐倉さんから電話を頂きました。
「例え離れ離れになっても私はあの人のことが好き。だから・・・」
そのとき私はこう言いました。
「なら、私が絶対に佐倉さんを忘れないように。私が彼を見張ってます。」って。
その後に二人の運命を占った結果、「近いうちに再会できるかも」と出ました。

ホントに私の占いはよく当たるらしく修学旅行先で佐倉さんと彼はちゃんと再会できたそうです。
よかったですね。佐倉さん。私、絶対に佐倉さんを裏切ったりしませんから・・・。
ずっと応援しますよ。だって、佐倉さんと私は大事な友達なのですから・・・。
妖精さん。二人をずっと見守っていてくださいね。私もずっと見守っていきますから。

(完)