創造主に関する空想

 最近の宇宙論の本を読んでみた。宇宙年齢が138億年とか宇宙膨張が加速しているとか観測事実の精度は高まったものの、わからないものは依然としてわからないままで進展がないとも言える。観測と良く合うと言う新理論の中には何でもありで、パラメータ調整をすれば合って当たり前の理論もあるようだ。
 何でもありならこんな事もありうるかも知れないという創造主に関する空想をしてみた。

(1)創造主その1
 20**年、サハラ砂漠で超古代の都市遺跡らしきものが発掘された。遺跡から見つかったミイラの年代測定によると何と3万年前のものであり、更に驚くべき事に人間のような形をしているミイラのDNAは人類でも哺乳類でもなく鳥類に近いものだった。遺跡内で発見された良く磨かれた多数の小さな石版は最初単なる石版と思われたが、詳細に調べたところ分子レベルで情報が書き込まれている記録媒体であり、最先端のスパコンを駆使した解読で遺跡の住民の素性がおぼろげながら明らかになった。それはとても信じられない物語だったが、DNAの存在はこれが真実であることを物語っている。
 今から6500万年前、恐竜の一種族が高度な文明を築いた。しかし巨大隕石の衝突による滅亡の危機に瀕し宇宙への移民を開始した。彼らは2つのグループに分かれ、銀河系内の太陽系周回軌道に沿って逆方向に出発し、居住可能な惑星を探索した。良い惑星が見つかると数千年かけて惑星の環境改造と移民活動を行った。しかし代替惑星に留まるのではなく、一段落すると一部の集団が再び次の惑星探索に旅立つと言うことを繰り返していった。移動手段さえあれば限りなく生活圏を広げて行くのは生命の本性なのかも知れない。途中では先住文明との遭遇、戦争、文化の吸収といったこともあったようだ。
 そして6500万年後に集団の一つが故郷の地球に遭遇した。彼らは地球上で別な生命(哺乳類)による新た文明が芽生えつつあることを見い出した。一度は植民活動を開始したが、生まれ故郷の文明を滅ぼすのは忍びがたいとの思いから、新文明の成立を加速すべく人類への文化と技術の伝達を一通り行った後に、更なる植民活動を目指して今度は銀河系中心部へと旅立って行った。

(2)創造主その2
 太陽系年齢110億年の頃、木星の衛星カリストでは生命が繁栄し文明が興っていた。
 その時点のカリスト文明の歴史は5千年ほど。大きな太陽は赤く輝き太陽光を反射する木星も明るく、自転周期と公転周期が等しいので、カリストの半分には夜が訪れないという変わった世界だ。太陽系の内側には厚い雲に覆われた金星と地球がありその外側には火星がある。無人探査機の調査によるとカリストの内側の衛星ガニメデにはカリストに近いDNA構造の生命が存在することが確認され、火星には生命は存在しないが過去に繁栄していた文明の痕跡があることが確認されていた。金星と地球は環境が厳しく探査は困難だった。また宇宙が膨張していることや、太陽は進化の最終段階である赤色巨星の段階にあることも認識していた。人々の関心事は間近に迫った、金星が太陽に飲み込まれる天体ショーだった。
 こうした状況下で以下のような大胆な仮説を提唱する者もいた。我々カリストの生命は90億年前に金星で誕生した。しかし太陽が次第に大きく明るく進化する中で金星に住めなくなった人々は主要生命を引き連れて地球へ、そして火星へ、更に木星の衛星へと移住したのだ。太陽は更に肥大化が進行しており我々は数千万年のうちに土星の衛星への移住を余儀なくされるであろう、と。
 信用する人はほとんどいなかった。土星への移住など実現不可能だし、1個の文明の寿命はせいぜい十万年と思われるのに90億年にも渡る計画的かつ継続的な移住などありえない。それに数千万年先の事など考えても仕方ないということで・・・。

(3)創造主その3
 昔々、ある宇宙で文明が栄えていた。しかしその宇宙は閉じた宇宙であり既に膨張後の収縮の段階にあって終焉の危機に見舞われていた。そこで彼らは宇宙創造のやり直しに取り組んだ。宇宙規模の巨大な装置を構築しインフレーション宇宙を再現しようと言うのだ。これは一瞬にして彼らの宇宙が飲み込まれて消滅してしまう大きな賭けだった。代表が「光よ、あれ」と宣言し起動スイッチを押すと閃光が煌めいた。そして宇宙は再生した。これこそ我々が現在生活しているビッグバン宇宙だ。
 初期パラメータでどのような宇宙ができるかが決まる。彼らが目指したのは自分たちに良く似た知的生命が生まれるが、再び収縮に転じることのない宇宙だ。ところが現在の宇宙は収縮には転じないものの膨張が加速しやがて無に帰してしまう。彼らの宇宙再生は失敗だったのだろうか?。しかし収縮に転じる宇宙に比べれば対策を講じる時間は十分にある。我々もここで宇宙と文明を終わらせることなく理想とする宇宙の再創造に取り組まなければならないのだろう。
 実は前宇宙も前々宇宙の担い手により再創造されたもので、それが延々と続いているのかも知れない。

終わり

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