2008年7月、原油の高騰が際限なく続き、洞爺湖サミットも温暖化対策について実効力のある合意に達することなく終わったので、未来について妄想してみた。

※これは2008/7/10,11,12の「みんカラ」ブログへの投稿内容を一部修正し転載したものです。

<<近未来妄想>>

原油は高騰を続け、ガソリンは2010年に1リッター1000円を突破。タクシー初乗り3000円という時代になり、2〜3キロ以内の乗り物として人力車が復活。同時に乗り捨て可能なレンタル自転車も都市部を中心に普及する。

バイオ燃料増産に伴い食料価格も高騰を続ける。対抗手段として家庭菜園が普及することになりマンションのバルコニーを畑に改造する動きが活発化する。2015年頃の新築マンションの広告には「2LDK、居住部70平米、バルコニー畑15平米、自動給水設備完備」などと記される。設定しておけば朝夕の水やり、肥料や農薬の散布が自動的に行われ収穫まで手間いらず。人がいるのに散水されるのを防ぐため動体感知機能のついた高級品も出まわるが、カラスがいても止まってしまう問題も起きて、更に画像識別機能やかかし機能まで搭載されたりする。

やがて温暖化対策とエネルギー対策の切り札として、2020年にベンチャー企業であるナチュラルエタノール社が遺伝子組み替えにより超高効率の光合成を行い果実内にエタノールを直接溜め込む植物を発明し脚光を浴びる。これは空気中の二酸化炭素を貪欲に吸収しスイカのような果実に純度の高いエタノールを溜め込むもの。熟さないうちは普通の甘い果実で食用にもなるが、内部の酵素の働きで次第に果汁がエタノールに変って行くという優れもの。
これが一般家庭にも普及し、エタノール樹の果実を専用ジューサーで絞ったエタノールをエタノール車の燃料タンクに注入して出かけるのが毎朝の日課となる。とはいえ純度100%ではないので、この頃のクルマはエタノール濃度90%対応とか85%対応とかで性能を競うようになる。

2030年までにエタノール樹は全世界に広まり、当然のようにナチュラルエタノール社の創業者はビル・ゲイツなんか遙かに凌ぐ史上最大の富豪になる。しかし、調子に乗ってビールがなりる樹とか、ワインがなりる樹とか、ウイスキーがなりる樹を次々に開発して発売し酒造業者の反発を招く。そして遂に酒造業者連合に雇われた殺し屋により暗殺されてしまう。
時を同じくしてエタノール樹に起因する大規模火災が頻発するようになり、遺伝子組み替えに反対する狂信的なグループによるテロ活動も激化したりして、2040年にはエタノール樹は世の中から姿を消してしまう。

こうして温暖化やエネルギーの問題は振り出しに戻り世の中は混迷を極めて行く。

<<中未来妄想>>

2050年、世界人口は2000年から1.5倍に増加し、二酸化炭素排出量は半減するどころか3倍に増えていた。海面は既に1m以上上昇し沿岸の都市で水没するところも出ている。ここに至って避けられない真理が突きつけられることになる。すなわち「人口を減らさなければ温暖化は解決しない、逆に人口を減らしさえすれば解決する」。

この時点で世界の二酸化炭素排出量の40%ずつをA国とC国で占めていたが、人口はC国の方が5倍多い。当然両者は非難合戦を繰り広げていた。「人口が多すぎるのが悪い!」、「1人当たりのエネルギー消費が多過ぎる!」。
ナショナリズムが高揚し両国の世論は「自国の国益を守り人類の滅亡を防ぐためには、他国を攻撃して世界人口を削減する行為は正当化される」という論調が8割を占めるようになる。偉い学者も進化論やら古代史を引き合いに出して盛んに正当化を主張したりする。
2055年、時を同じくして両国に国粋主義的政権が誕生し一気に開戦へ走り出してしまった。

両国の衛星軌道上のステルスミサイル基地から数百発のミサイルが発射され、数万個のクラスター核弾頭が世界中の都市に降り注ぐ。一斉攻撃にミサイル防衛システムも歯が立たず、90%以上が着弾する。この攻撃は凄惨を極めた。かつては都市のインフラを再利用するため中性子爆弾で生き物だけを殺傷するといった事も考えられていたが、今回は人口削減が目的なので都市自体を数万年に渡って使用不能にすべく積極的に放射能で汚染させたのだ。
実は事前に攻撃を察知して住民の8割程度は避難していたのだが、帰る場所がなくなり食料の供給も止まってしまい、結局大半が餓死してしまう。

その後も局地的な戦闘が続き伝染病も蔓延したりして、2100年には世界人口は5千万人まで激減してしまう。そのうち4千万人はアフリカやアマゾンの密林で1万年以前から変わらずに暮らしている原住民で、文明国の生き残りは1千万人に過ぎない。集落間の連絡も途絶えてしまい、文化レベルとしてはちょうど1万年前に戻ってしまった感じだ。
地球は7割が海で、陸地も砂漠や山岳地帯や密林などが多く生活に適している地域が少なかったのに、その大半が放射能汚染地域になってしまったため、人類は砂漠や密林と汚染地域の狭間のごく狭い地域で細々と暮らしていかざるを得なくなる。

なお、人口が激減しても地球温暖化は一向に解消しなかった。実は温暖化の原因は太陽活動の活発化だったとわかった時には後の祭り。

<<遠未来妄想>>

数千年の時が静かに過ぎていった。人間の集落は滅亡するものもあったが発展して小王国と言える形まで盛り返すものもある。
一方、かつて人類の都市があった放射能汚染地域では瞬く間に植物が繁茂し密林になっていた。もともと平野で川も流れているので動植物の生存に適した場所なのだ。その中では一部の昆虫など生き残った生物が放射能による突然変異で急速に進化しつつあった。
やがて西暦6千年頃になると、汚染地域で発生した体長3mのスーパーゴキブリや10mのスーパームカデ、1mのスーパーアリの集団などが出てきて人間の集落を襲うようになる。まるで「風の谷のナウシカ」の世界そのものだ。
この時代には勇者による怪物退治の伝説が多く生まれ後世に語り継がれる事になる。

やがて、こんな大きな昆虫が暮らせるなら食料が豊かに違いないと、敢えて汚染地域に踏み込んでいく集団も出てくる。実は雨に流されて放射能汚染はかなり弱まってきていたのだ。
ほとんどは帰らぬ人となったが、ごく一部の人々は密林の中で生き延び根付くことができていた。これらの人々も放射能により進化を加速していく。

西暦1万年頃、汚染地域の中で怪人類へと進化した一団が体長5mのスーパーゴキブリにまたがり旧人類の国々を襲うようになる。彼らは大きな体となり戦闘能力を高めるとともに、巨大昆虫の家畜化に成功していたのだ。
力の差は歴然でほぼ100年の後には旧人類は完全に駆逐されてしまう。そして怪人類は旧人類の文化の土台の上に国家を建設していく。何故か旧人類の間だけに伝わっていた怪物退治伝説も怪人類に受け継がれていく。

地球上で怪人類は繁栄を極めた。その文明は実に3万年の長きに渡って続いた。彼らの生活は家畜化された巨大昆虫に依存しており、電気や機械といった概念は無かった。既に石油や石炭は採掘し易いところは掘り尽くされていたこともあっただろう。また、旧人類の巨大都市遺跡の発掘調査から、旧人類滅亡の原因は彼らの膨大なエネルギー消費にあったらしいことを突き止めたからかも知れない。

彼らの通常の乗り物はスーパーゴキブリである。レースも行われていて、サーキットを人間が乗った体長7mのスーパーゴキブリが時速300Kmで疾走する。但しゴキブリの類は瞬発力はあるが持久力が無いので何回もピットインして乗り換えなければならない。
また体長50mのスーパームカデに座席がたくさん据え付けられたバスのようなものも走っている。

しかし怪人暦3万年頃、太陽活動が衰え地球は氷河期へと向かった。巨大昆虫は寒さに弱いため真っ先に絶滅してしまい、これを主な食料としていた怪人類もあっけなく滅びてしまった。 このとき、旧人類の都市遺跡の地下に隠れて奇跡的に命脈を保っていたネズミ型哺乳類が、天敵である巨大昆虫の絶滅に呼応するかのように地上へ進出してくる。これはちょうど、恐竜が絶滅した後の5千万年前の状況に似ている。

地球上に再び文明が興るまでまた5千万年かかるかも知れない。でも5千万年なんて地球の年齢に比べればたったの1%だ。地球はまだまだ何回でもやり直しができる。

終わり

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