宮本正清は、ロマン・ロランの翻訳・研究のみならず、詩人としての創作活動も盛んであったが、まさか小学校の校歌の作詞を手掛けていたとは、当研究所関係者にも初耳だった。 一昨年の秋、宮本の卒業した高知県の奈路小学校に通うお子さんを持つ知人から、同校の校歌の作詞者の氏名が「宮本正清」であることを聞かされた。早速同校の北村初江校長に問い合わせたところ、一本のビデオテープと共に、次のようなお手紙を頂いた。 「……奈路の大先輩、世界に誇れる宮本正清先生の作詞によります本校の校歌、大事にうたわせていただいてぉります。本校養護教諭が素人ながら、休日に奈路の山々の景色を撮ったり、写真を入れたりしながらビデオに収めました。……」 そのビデオには、豊かな自然に包まれた奈路の風景と共に、竹を細工して作った楽器を演奏しながら校歌を合唱する小学生たちの活き活きした姿が映っていた。ロランを敬愛した宮本らしい温かい言葉が、純真な子供たちの声と見事に調和して、私たちの心に響いた。 新しい「出会い」であり、また別の意味では「再会」ともいえる、このような素敵な機会を与えて下さったすべての方々に、この場をかりて御礼申し上げます。 奈路小学校は、高知県南国市北部の山間にある、全校生徒数三十余名の小さな学校。周囲は豊かな山林におおわれ、水田が帯状に広がり、特産物のタケノコは有名。教育方針に「地域あっての学校」「学校あっての地域」を掲げる同校は、小規模学校の特性を活かし、地域住民と一致協力したきめ細かな指導を展開、平成十三年度には県から坂本教育賞を受賞した。また、その熱意は市の住宅政策をも動かし、地域初の市営住宅の建設にこぎつけ、過疎化に伴い減少を続けていた児童数も、近年回復しっつある。宮本正清は明治四十四年に同校を卒業。 (編集部 M・K)
一 われらがきよき 奈路川の 流れにうかぶ ささ舟や ゆくてはひろき 人生の わだつみさして こぎゆかん 二 わが山里に 吹きいでし 色香も清き 山ざくら 花散りゆかば みどりのに われらも豊かに みのりなん
三 幼き友よ いざさらば 学びの庭に いそしまん 野にさく花と 清くして うたう小鳥と 楽しまん 四 わがよき友よ 来れいざ この山里に つちかいし われらの徳と 力もて まことの日本 うちたてん