ロマン・ロラン (一八六六〜一九四四) は、日本人にもっとも強く深い、精神的、道徳的影響を与えたヨーロッパの芸術家の一人であります。武者小路実篤、志賀直哉等の白樺派の人々をはじめ、高村光太郎、尾崎喜八、大仏次郎、小島政二郎その他の作家、音楽家、画家、彫刻家、さらに科学者、実業各方面にいたるまで、その青春時代をロマン・ロランの思想、芸術の光に照らされ、人格的感化陶冶を受けた者は枚挙にいとまないのであります。
しかし、ロマン・ロランの真の偉大さと、存在価値は、たんに文学的分野にとどまるのではなく、むしろその博大な人間愛にあります。人種、文化、文明等のあらゆる国境を越えて、真に世界的、人類的である彼の愛の精神は、「ジャン・クリストフ」「魅せられたる魂」その他の小説、戯曲、伝記、文学的、音楽的、歴史的研究のみならず、現代社会のあらゆる不正と戦うために、人権と自由を擁護するために、多くの政治的、社会的論争を生涯つづけました。さらに、ロランは、東洋と西洋、ヨーロッパとアジアとの相互理解、信頼、尊敬と両者の協力が、人類の進歩と平和のために、いかに必要であるかを説き、われわれの文明を堕落と頽廃から救いうる唯一の道は、アジアとヨーロッパが、あたかも車の両輪のように支持し合い、各人種、各国民がユニークな文明、固有の伝統を尊重、保存して、人類全体の偉大な共有財産として、現存のそれに勝る大文明を創造すべきだと言っております。ロランは、インドの哲学、宗教を研究した数巻にわたる著述の中で東洋の精神のもっとも深遠で高邁なものは、西洋のそれと本質的に異なるものでないばかりか、両者がほとんど完全に一致していることを実証しております。
このような思想家、芸術家、偉大な人間が、わが日本において、半世紀以上にわたって、変ることなく、今もなお、青年層に親しまれ、愛読され、尊敬されていることは、日本のために、喜ぶべきことと信ずるのであります。
一九七〇年十二月
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ロマン・ロランセミナー 公開講座 ●講演会
●読書会・研究会
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●彼の周辺の芸術家たちに興味、
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