理事長 西成勝好
この度、私は理事長に選任され就任いたしました。理想に燃えておられた創設者の宮本正清先生、宮本先生の死後、尾埜善司先生は困難な状況を克服して維持発展させられましたが、一身上のご都合で辞任されました。両先生のロマン・ロランの精神を伝える強い意志を、私は法灯を守るというような気持ちで引き継ぎ、微力ながら尽力していきたく存じます。
ロマン・ロランと私のかかわりは50年ほど前のことになりますが、高校での学園祭にロマン・ロランの戯曲「愛と死の戯れ」を友人たちと上演したことがきっかけでした。当時、ヘルマン・ヘッセと並ぶ人気のロマン・ロランでしたが、残念ながら現在あまり読まれなくなりましたが、これまで常に私の支えになってくれました。人間が人間として尊厳を保ちながら生きていくうえでロランに力づけられた人は数多くいます。
本研究所との関わりは30年近く前にフランスに滞在していた際、パリの街角でロマン・ロラン財団のあることを知り、ロマン・ロラン夫人とお会いして、文献や手紙などの整理のお手伝いをし、日本に帰り、宮本正清先生に手紙を書いたことから始まりました。
当研究所は毎年、講演会・読書会などの活動をしてきましたが、今年も別紙の通り、講演会・読書会、朗読会などを引き続きいたします。
今年は特に、ロマン・ロランが戦争反対を訴え続けた第一次世界大戦終了90年の年に当たり、「平和主義者ロマン・ロラン」と題して国際シンポジウムがフランスの生地と終焉の地で開催されます。それに合わせて「ロマン・ロランの足跡を訪ねる」旅を企画しております。どうか奮ってご参加くださいまして、今後とも本研究所の活動にお力添え賜りますようお願い申し上げます。
ホームページ上での理事長としての挨拶
ロマン・ロラン(1866-1944)は第一次世界大戦のとき戦争に反対し、第二次世界大戦のときには、ナチスのファシズムに反対しました。いつも、傷ついた人たち、困難に直面した人たちを助けるために努力した人であります。彼の作品には一貫した人間愛が感じられます。また、ごまかさないで真理に忠実であろうとする姿勢に打たれます。
日本では戦後ロマン・ロラン全集がみすず書房から出版され、多くの人に読まれました。そして、1949年に「日本ロマン・ロランの友の会」が設立されました。その後、ロマン・ロランの翻訳・紹介に尽力した宮本正清が印税収入を使い京都・銀閣寺の近くに1971年、財団法人ロマン・ロラン研究所を設立いたしました。
ロマン・ロランの日本への受容の歴史とロマン・ロラン研究所のこれまでの活動は、このホームページにも掲載されております。「ユニテ」のこれまでの号にも詳しく紹介されております。読書会、講演会、朗読会などを引き続き開催しております。毎週、フロントページには 読者が選んだロマン・ロランの言葉を掲載しております。どうぞご参加ください。ご意見ご感想をお待ちいたしております。
(前) 理事長 尾埜 善司
ロマン・ロラン(1866-1944)は二度の世界大戦を通じて戦争反対と平和のための社会組織の変革を世界に訴え、ファシズムと戦い、また生き方に悩んでいる万人のこころを慰め励ます文学や手紙を絶えず書きつつ、平和回復の前夜に世を去りました。敗戦後の混乱した日本で、実に多くの若者たちは、たましいの拠りどころとして、むさぼるようにロマン・ロランを読み、語り合い、その熱気は全国各地に拡がりました。
敗戦の翌年『ロマン・ロラン全集』の刊行を始めたみすず書房が事務を執り、片山敏彦・宮本正清氏らが中心となって、1949年6月「日本・ロマン・ロランの友の会」が設立されました。このとき馳せ付けた若者たちの多くは、いまも各分野で活躍しています。「友の会」の集会、読書会が直ちに全国各地で始まりました。とりわけ際立ったのは、宮本氏を中心とする京都の毎月の集い、更に同氏と蛯原徳夫氏による大阪の毎月の集いで、私もそれらの青春の焔をわけもちました。
軍国主義に抵抗しつつ戦中戦後にわたりロマン・ロランの翻訳・紹介に献身し続けた宮本正清氏は、受け取った印税の貯金をはたいて、1971年京都銀閣寺のほとりに財団法人ロマン・ロラン研究所を設立しました。研究所は当時東京では衰退していた「友の会」の活動をも、機関紙「ユニテ」の続刊をふくめ全国的に承継して現在に及び、「友の会」設立50周年を迎えるに至ったのであります。
財団法人ロマン・ロラン研究所設立趣意書
ロマン・ロラン(1866-1944)は、日本人にもっとも強く深い、精神的、道徳的影響を与えたヨーロッ パの芸術家の一人であります。武者小路実篤、志賀直哉等の白樺派の人々をはじめ、高村光太郎、
尾崎喜八、大仏次郎、小島政二郎その他の作家、音楽家、画家、彫刻家、さらに科学者、実業各 方面にいたるまで、その青春時代をロマン・ロランの思想、芸術の光に照らされ、人格的感化陶冶を
受けた者は枚挙にいとまないのであります。
しかし、ロマン・ロランの真の偉大さと、存在価値は、たんに文学的分野にとどまるのではなく、むしろその博大な人間愛にあります。人種、文化、文明等のあらゆる国境を超えて、真に世界的、人類的である彼の愛の精神は、「ジャン・クリストフ」「魅せられたる魂」その他の小説、戯曲、伝記、文学的、音楽的、歴史的研究のみならず、現代社会のあらゆる不正と戦うために、人権と自由を擁護するために、多くの政治的、社会的論争を生涯つづけました。
さらに、ロランは、東洋と西洋、ヨーロッパとアジアとの相互理解、信頼、尊敬と両者の協力が、人類の進歩と平和のために、いかに必要であるかを説き、われわれの文明を堕落と頽廃から救いうる唯一の道は、アジアとヨーロッパが、あたかも車の両輪のように支持し合い、各人種、各国民がユニークな文明、固有の伝統を尊重、保存して、人類全体の偉大な共有財産として、現在のそれに勝る大文明を創造すべきだと言っております。ロランはインドの哲学、宗教を研究した数巻にわたる著述の中で、東洋の精神のもっとも深遠で高邁なものは、西洋のそれと本質的に異なるものでないばかりか、両者がほとんど完全に一致していることを実証しております。
このような思想家、芸術家、偉大な人間が、わが日本において、半世紀以上にわたって、変わることなく、今もなお、青年層に親しまれ、愛読され、尊敬されていることは、日本のために、喜ぶべきことと信ずるのであります。
1970年12月(設立者・初代理事長 宮本正清)
代表理事 西成勝好(大阪市立大学名誉教授)
理事 宮本エイ子(専従・日本ペンクラブ会員)
長谷川治清(シェフィールド大学名誉教授)
シッシュ・ディディエ(甲南大学教授)
清原章夫(グンゼ株式会社)
能田由紀子(大学非常勤講師)
和田義之(弁護士)
立木康介(京都大学人文学研究所 准教授)
四宮こころ(音楽企画 ソノリテ主宰)
評議員 奥村一彦(弁護士)
守田省吾(みすず書房 社長)
森内依理子 (森内織物株式会社 代表取締役)
中田裕子
久保久子
監事 村田まち子(朗読家)
福田由美 (司法書士)
(2020年6月改選)
2012年4月1日に一般財団法人に移行
一般財団法人ロマン・ロラン研究所 定款
第1章 総 則
(名 称)
第1条 この法人は,一般財団法人ロマン・ロラン研究所(Institut Romain Rolland)という。
(事務所)
第2条 この法人は,主たる事務所を京都市におく。
(支 部)
第3条 この法人は,理事会の議決を経て必要の地に支部をおくことができる。
第2章 目的および事業
(目 的)
第4条 この法人は,文学,芸術,思想の研究を通じて,人間相互の理解,信頼,尊敬の念
を,日本国民の間,および日本人と諸外国民との間に普及せしめ,世界平和のために寄与
することを目的とする。
(事 業)
第5条 この法人は,前条の目的を達成するために次の事業を行う。
1.ロマン・ロランおよびロマン・ロランと同様に,芸術,学問を愛し,社会正義を尊重し,世界の
各文明の進歩と,人類の福祉を念願とした芸術家,思想家などに関する研究。
2.上記の研究に必要な資料文献の蒐集と研究者への援助。
3.機関誌の発行および研究成果の公刊。
4.講座,講演会,展覧会等の開催。
5.その他,目的を達成するために必要な事業。
第3章 資産および会計
(資産の構成)
第6条 この法人の目的である事業を行うために不可欠な別表の財産並びに理事会及び
評議員会において基本財産とすることを議決した財産は,この法人の基本財産とする。
2 基本財産は,この法人の目的を達成するために善良な管理者の注意をもって管理しな
ければならず,基本財産の一部を処分しようとするときおよび基本財産から除外しようとする
ときは,あらかじめ理事会及び評議員会の承認を要する。
(事業年度)
第7条 この法人の事業年度は,毎年4月1日に始まり,翌年3月31日に終る。
(事業計画及び収支予算)
第8条 この法人の事業計画案,収支予算書については,毎事業年度開始の日の前日までに,
理事長が作成し,理事会の承認を受けなければならない。これを変更する場合も同様とする。
2 前項の書類については,主たる事務所に,当該事業年度が終了するまでの間備え置く
ものとする。
(事業報告及び決算)
第9条 この法人の事業報告及び決算については,毎事業年度終了後,理事長が次の書類を
作成し,監事の監査を受けた上で,理事会の承認を受けなければならない。
(1) 事業報告
(2) 事業報告の附属明細書
(3) 貸借対照表
(4) 損益計算書
(5) 賃貸借契約書及び損益計算書の附属明細書
2 前項の承認を受けた書類のうち,第1号,第3号,第4号の書類については,定時評議員会
に提出し,第1号の書類についてはその内容を報告し,第3号及び第4号の書類については
承認を受けなければならない。
3 第1項の書類のほか,監査報告を主たる事務所に5年間備え置くとともに,定款を主たる
事務所に備え置くものとする。
第4章 評議員
(評議員)
第10条 この法人に評議員5名以上15名以下を置く。
(評議員の選任及び解任)
第11条 評議員の選任及び解任は,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
第179条から第195条の規定に従い,評議員会において行う。
(任期)
第12条 評議員の任期は,選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する
定時評議員会の終結の時までとする。
2 任期の満了前に退任した評議員の補欠として選任された評議員の任期は,退任した
評議員の任期の満了する時までとする。
3 評議員は,第10条に定める定数に足りなくなるときは,任期の満了または辞任により退任
した後も,新たに選任された者が就任するまで,なお評議員としての権利義務を有する。
(評議員の報酬)
第13条 評議員に対しては,報酬は支払わない。
第5章 評議員会
(構成)
第14条 評議員会は,すべての評議員をもって構成する。
(権限)
第15条 評議員会は,次の事項について決議する。
(1) 理事及び監事の選任又は解任
(2) 理事及び監事の報酬等の額
(3) 評議員に対する報酬等の支給の基準
(4) 貸借対照表及び損益計算表(正味財産増減計算書)の承認
(5) 定款の変更
(6) 残余財産の処分
(7) 基本財産の処分又は除外の承認
(8) その他評議員会で決議するものとして法令又はこの定款で定められた事項
(開催)
第16条 評議員会は,定時評議員会として毎事業年度終了後3ヶ月以内に1回開催する
ほか,必要がある場合に開催する。
(招集)
第17条 評議員会は,法令に別段の定めがある場合を除き,理事会の決議に基づき
理事長が招集する。
2 評議員は,理事長に対し,評議員会の目的である事項及び招集の理由を示して,
評議員会の招集を請求することができる。
(決議)
第18条 評議員会の決議は,決議について特別の利害関係を有する評議員を除く評議員の
過半数が出席し,その過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず,次の決議は,決議について特別の利害関係を有する評議員を
除く評議員の3分の2以上に当たる多数をもって
行わなければならない。
(1) 監事の解任
(2) 評議員に対する報酬等の支給の基準
(3) 定款の変更
(4) 基本財産の処分又は除外の承認
(5) その他の法令で定められた事項
3 理事又は監事を選任する議案を決議するに際しては,各候補者ごとに第1項の決議を
行わなければならない。理事又は監事の候補者の
合計数が第20条に定める
定数を上回る場合には,過半数の賛成を得た候補者の中から得票数の多い順に定数の枠に
達するまでの者を選任することとする。
(議事録)
第19条 評議員会の議事については,法令で定めるところにより,議事録を作成する。
2 評議員会で選任された議事録署名人3名が,前項の議事録に記名押印する。
第6章 役員
(役員の設置)
第20条 この法人に,次の役員を置く。
(1) 理事 8名以上
(2) 監事 2名
2 理事のうち1名を理事長、2名を業務執行理事とする。
3 前項の理事長をもって一般社団法人及び一般財団法人に関する法律上の代表理事と
する。
(役員の選任)
第21条 理事及び監事は,評議員会の決議によって選任する。
2 理事長及び業務執行理事は,理事会の決議によって理事の中から選定する。
(理事の職務及び権限)
第22条 理事は,理事会を構成し,法令及びこの定款で定めるところにより,職務を執行
する。
2 理事長は,法令及びこの定款で定めるところにより,この法人を代表し,その業務を執行し,
業務執行理事は,理事会において別に定めるところ
により,この法人の業務を分担執行する。
3 理事長及び業務執行理事は,毎事業年度に4ヶ月を超える間隔で2回以上,自己の職務の
執行の状況を理事会に報告しなければならない。
(監事の職務及び権限)
第23条 監事は,理事の職務の執行を監査し,法令で定めるところにより,監査報告を
作成する。
2 監事は,いつでも,理事及び使用人に対して事業の報告を求め,この法人の業務及び
財産の状況の調査をすることができる。
(役員の任期)
第24条 理事の任期は,選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する
定時評議員会の終結の時までとする。
2 監事の任期は,選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する
定時評議員会の終結の時までとする。
3 補欠として選任された理事又は監事の任期は,前任者の任期の満了する時までとする。
4 理事又は監事は,第20条に定める定数に足りなくなるときは,任期の満了又は辞任により
退任した後も,新たに選任された者が就任するまで,
なお理事又は監事としての権利義務を有する。
(役員の解任)
第25条 理事又は監事が,次のいずれかに該当するときは,評議員会の決議によって解任
することができる。
(1) 職務上の義務に違反し,又は職務を怠ったとき。
(2) 心身の故障のため,職務の執行に支障があり,又はこれに堪えないとき。
(報酬等)
第26条 理事及び監事は,無報酬とする。ただし,常勤の理事及び監事に対しては,
評議員会において別に定める総額の範囲内で,評議員会において
別に定める報酬等の支給の基準に従って算定した額を報酬等として支給することができる。
第7章 理事会
(構成)
第27条 理事会は,すべての理事をもって構成する。
(権限)
第28条 理事会は,次の職務を行う。
(1) この法人は業務執行の決定
(2) 理事の職務の執行の監督
(3) 理事長及び業務執行理事の選定及び解職
(招集)
第29条 理事会は,理事長が招集する。
2 理事長が欠けたとき又は理事長に事故があるときは,各理事が理事会を招集する。
(決議)
第30条 理事会の決議は,決議について特別の利害関係を有する理事を除く理事の
過半数が出席し,その過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第197条に
おいて準用する同法第96条の要件を満たしたときは,理事会の
決議があったものとみなす。
(議事録)
第31条 理事会の理事録については,法令で定めるところにより,議事録を作成する。
2 出席した理事長及び監事は,前項の議事録に記名押印する。
第8章 定款の変更及び解散
(定款の変更)
第32条 この定款は,評議員会の決議によって変更することができる。
2 前項の規定は,この定款の第4条及び第5条及び第11条についても適用する。
(解散)
第33条 この法人は,基本財産の滅失によるこの法人の目的である事業の成功の不能
その他法令で定められた事由によって解散する。
(残余財産の帰属等)
第34条 この法人が清算をする場合において有する残余財産は,評議員会の決議を経て,
公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第5条第17号に
揚げる法人又は国若しくは地方公共団体に贈与するものとする。
2 この法人は,剰余金の分配を行うことができない。
第9章 公告の方法
(公告の方法)
第35条 この法人の公告は,電子公告による方法により行う。
2 事故その他やむを得ない事由によって前項の電子公告をすることができない場合は,
京都府において発行する京都新聞に掲載する方法による。
附則
1 この定款は,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び
公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
第121条第1項において読み替えて準用する同法第106条第1項に定める
一般法人の設立の登記の日から施行する。
2 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団
法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律121条
第1項において読み替えて準用する同法第106条第1項に定める特例民法法人の
解散の登記と一般法人の設立の登記を行ったときは,
第7条の規定にかかわらず,解散の登記の日の前日を事業年度の末日とし,
設立の登記の日を事業年度の開始日とする。
3 この法人の最初の代表理事は西成勝好とする。
この法人の最初の評議員は次に掲げるものとする。
奥村一彦,シッシュ由紀子,加藤澄子,中西明朗,守田省吾,中田裕子,竹本浩典,
井土真杉,森内依理子。
別表 基本財産(第6条関係)
財産種別 場 所 ・ 物 量 等
土 地 宅地 225、43平方メートル
京都市左京区銀閣寺前町32番地の2
建 物 木造瓦葺平屋建 77、89平方メートル
京都市左京区銀閣寺前町32番地の2
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