「まちづくりの『参加』と『還元』」11年8月

まちづくりにおいて、ワークショップなどの手法を用いた市民参加方式を取り入れるケースが多くなってきた。そして、いくつかのケースで主体的にまちづくりに参加するようになった市民が誕生した。しかし、大部分のその他の市民は、まちづくりに無関心であり、特に若い世代においては、自治会や消防団といった地域コミュニティからも離れていく傾向がある。また、阪神・淡路大震災時に活躍したボランティアにしても、現在も何らかの活動を継続している人は少ないであろう。これらのことから、「まちづくりへの参加」において、「社会のためになる」とか「自己満足になる」といった気持ちだけでは、限界があると考える。一方、高齢者介護等において、元気な時に他人を介護すれば自分が要介護状態になった時に介護を受けられる時間貯蓄制度や有償ボランティアのようにある程度の利益の還元が社会的に認められるようになってきた。実際、地域振興券が発行された時のように損得が加わった場合の人々の反応、行動はかなり鋭い。

以上のことから、まちづくりへの参加において、まち自体からの還元を制度化することを提案する。

 市民参加と還元がすすめば、まちにとっても効果が大きい。そこで、各種のキャンペーンを利用した市民参加と還元の制度を提案する。例えば、交通安全週間の度にキャラバン隊やのぼりのために予算を使うのは効果があるといえるのだろうか。結果的に交通事故が減れば、道路施設等の修繕工事代が減るのであるから、これを還元することを考える。また現在、自己満足以外にはあまり使われていないゴールドカードの免許証を利用する。交通安全週間にゴールドカードを提示すれば、そのまちの美術館、博物館、体育施設等の公共施設を無料で入場できるようにするのである。他にも、「臓器意思提供カード」の普及のために臓器移植法が成立した10月16日の週をカード提示で無料としたり、献血週間には献血カードで無料とし、駐車場にて献血を実施するのである。さらに、敬老の日の週は高齢者同伴で2人まで無料、赤ちゃんの日をつくって幼児連れ無料とし、託児所を設ければ効率的でもある。これらは市民の社会貢献に対する、まちからの応援であるとも言える。

 キャンペーンを活用したまちづくりの参加と還元には次の3つの効果がある。

 

  1. 社会貢献だけでなく自分にも還元されることで、また参加してみたくなり、結果として、市民参加と社会貢献と自己還元の3者が、らせん状に成長していくと考える。
  2. 今まで、なかなか効果があがらなかった交通安全対策等のキャラバン隊やのぼり、啓発ポスターや呼びかけ等にかかっていた費用を減らすことができると考える。
  3. 公共施設が貢献した市民に入場料を還元するという新しい役割を他のまちや施設に提案し、このまちの社会意識の高さをPRすることになると考える。

 さらに、この提案を最初に実現した市町村に限れば、第1号で宣伝効果が倍増すると考える。世間もマスコミも第1号には弱いからである。その上、キャンペーン報道自体が、まちの宣伝になると考える。経費ゼロでマスコミが宣伝してくれるようなものであるからである。

この「キャンペーンを活用したまちづくりの参加と還元」の問題は、還元ばかりを期待した社会貢献になってしまうのではないかという点である。しかし性悪説では、制限が増え、積極的な貢献者が不便になってしまいやすい。性善説の立場から積極的参加者が増えていけば、自然と良好なまちづくりに修正されていくはずと考えるのである。