第3章 しずおか未来づくりネットワーク参加団体ヒアリング調査

調査の目的と分析の軸の選定

「しずおか未来づくりネットワーク」事業とは、「自主的、主体的な地域づくりをさらに促進するため、地域づくりの実践活動や人材養成等を行う民間団体(地域づくり団体)、未来づくり学士、市町村等のネットワーク化を図る」ことを目的として、静岡県地域振興室が行っている事業である。このネットワークに参加している団体は、地域づくり団体の自治大臣表彰されるなど全国的にも高い評価を受けている団体が多い。

そこで、未来づくりネットワーク参加団体の中から静岡県西部地区の4団体の発足の状況や活動内容を比較することによって、最適な団体活動を追究することを目的とし、また、各団体に対して役に立つ研究になることを優先することにした。

また、おもしろ人立「めだかの学校」に対して事前に予備調査を行い、以下の各方面から分析の軸となるヒアリング項目を選定した。

団体の事務局や発足の状況の面から以下の項目を分析の軸として選定した。

1 事務局(連絡先)

2 発足の時期

3 発足の経緯

団体の活動目的の面から以下の項目を分析の軸として選定した。

4 活動目的

5 活動のルール

団体の活動実績や今後予定の面から以下の項目を分析の軸として選定した。

6 これまでの主な活動実績

7 今後の活動予定及び課題

団体の会合や入退会及び財源の面から以下の項目を分析の軸として選定した。

8 会合開催頻度

9 登録人数

10 入会の条件

11 退会のルール

12 入会費、年会費

13 主な財源

登録者の属性の面から以下の項目を分析の軸として選定した。

14 登録者の住所(遠方)

15 登録者の年代(性別)

その他に特に注目したい項目として以下の項目を分析の軸として選定した。

16 地元市町村との関係

17 20代30代の会員の割合と必要性

18 問題となっている(いた)こと及び対策の現状

19 ヒアリング担当者の感想、意見

調査の方法

活動の目的や問題点等のより詳しい内容を調べることから、直接面接によるヒアリング調査を実施することにした。また、実際の活動の様子を肌で感じて分析したいということから、できるだけ実際の活動にも参加することにした。

調査結果の比較分析

下の日程でヒアリング調査及び実体験を実施した。

  1. 平成8年9月6日 おもしろ人立「めだかの学校」参加
  2. 平成8年10月1日 おもしろ人立「めだかの学校」ヒアリング
  3. 平成8年10月12日 天竜市熊地区活性化推進協議会施設見学
  4. 平成8年11月17日 湖西夢くらぶ21「ふるさと散歩」参加及びヒアリング
  5. 平成8年11月28日 遠州横須賀倶楽部ヒアリング
  6. 平成8年12月16日 天竜市熊地区活性化推進協議会ヒアリング

調査結果は以下のとおりである。

1事務局(連絡先)

団体名 おもしろ人立「めだかの学校」 湖西夢くらぶ21 遠州横須賀倶楽部 天竜市熊地区活性化推進協議会
事務局
(連絡
先)
〒431-23
引佐郡引佐町奥山
1737-286
いなさ自然休養村
「つみくさ」内
053-543-0321
〒431-04
湖西市大知波857
向雲寺内
053-578-0410
〒437-13
大須賀町西大渕63
大須賀町商工会内
0537-48-2262
〒431-36
天竜市熊1977-2
天竜市役所熊支所

0539-29-0002
  1. 種類は異なるが、人が集まりやすいところに事務局が置かれている。

  2 発足の時期

団体名 おもしろ人立「めだかの学校」 湖西夢くらぶ21 遠州横須賀倶楽部 天竜市熊地区活性化推進協議会
発足の
時期
平成5年9月 平成8年2月 昭和62年9月 昭和61年
  1. 天竜市熊地区活性化推進協議会と遠州横須賀倶楽部は発足から約10年が経過している。長く続いていることは、それだけで活動がうまくいっている証拠であろう。他の団体は、新しい団体であり、湖西夢くらぶ21は発足したばかりである。

3発足の経緯

団体名 おもしろ人立「めだかの学校」 湖西夢くらぶ21 遠州横須賀倶楽部 天竜市熊地区活性化推進協議会
発足の
経緯
 静岡県地域振興
室の「日本一の地
域づくり事業」を
きっかけに、観光
客ではなく、地域
に必要な人材を集
めて交流を図ろう
と4人が人を集め
て、60人でスター
トした。
 文化の薫る活力
あふれる故郷をつ
くりたいと考え、
元青年部の仲間が
立ち上がった。
 隣町への大型店

進出に危機感を持ち

「町の商業をどうするか?」をテーマに研究会を発
足した。2年後、
商業の若手後継者
を主体に、「遠州
横須賀ルネサンス
」に賛同してくれ
る人たちを巻き込
んで40人で旗揚げ
した。

過疎化が進む中
地域の食文化の見
直しを進めてきた
女性達の熱意が行
政を動かし、そば
味噌加工施設(く
んま水車の里)、
販売施設(くんま
かあさんの店)、
製粉施設(水車小
屋)の建設が具体
化された。
しかし、公共か
らの補助分を除く
負担分を地区の共
有財産から出資す
るのは好ましくな
いとの意見から、
施設から得られる
利益を地区に還元
するシステムとし
て結成された。
  1. 4団体とも地域の発展や活性化のために立ち上がったといえるだろう。

4活動目的

団体名 おもしろ人立「めだかの学校」 湖西夢くらぶ21 遠州横須賀倶楽部 天竜市熊地区活性化推進協議会
活動目
●おもしろ人の群
れであること
●好奇心と遊び心
と挑戦心で行動す
ること
●のんきな顔をし
てしなやかに、ま
ろやかに、けれど
もしたたかに振る
舞い、出会うこと
●行動の中から自
分を発掘し、共に
学ぶ喜びを享受し
ながら人生を楽し
くやっていくこと
●社会教育的な目
的だけでなく、究
極的には最も質の
高い最も安上がり
な社会福祉施策を
も目指すこと
(以上「建学のこ
ころ」から抜粋)
●心ある同志が語
り合い、つながり
をつくること
●仲間づくりに生
きがいを見つける
こと
●地域の問題を市
政に反映させる等
豊かな地域づくり
に貢献すること
●遠州横須賀藩の
城下町として栄え
た文化と産業を掘
り起こし再興する
こと
●遠州横須賀の古
き良き伝統を守る
とともに、商いを
通じて新たなる歴
史を創造すること
●ふるさと遠州横
須賀を探究し、心
の豊かさや人間ら
しさを追求するこ

●遠州横須賀人と
しての誇りを高揚
するとともに、地
域住民の連帯を深
めること
●遠州横須賀ルネ
サンスを通じて地
域経済の活性化を
図ること
(以上「遠州横須
賀ルネサンス」か
ら抜粋)
●店子である「く
んま水車の里」、
「くんまかあさん
の店」で地域食文
化の見直しを進め
ながら、魅力ある
まちづくり活動を
行うこと
  1. おもしろ人立「めだかの学校」と遠州横須賀倶楽部は団体の目的が明文化されている。
  2. おもしろ人立「めだかの学校」では、入校式で「建学のこころ」を全員で唱和することで目的を確認し合っていた。

5活動のルール

団体名 おもしろ人立「めだかの学校」 湖西夢くらぶ21 遠州横須賀倶楽部 天竜市熊地区活性化推進協議会
活動の
ルール
●生徒及び先生は
真に価値のあるも
ののみ残る
●生徒や先生にな
るには自らの申告
が必要である
●“共育”期間は
1 年間で終わるの
で、継続希望者は
再度入学届を提出
する
●給食では、ノミ
ュニケーションを
発揮し、論談風発
、侃々諤々の楽し
さを享受できるが
、無礼講は許され
ない
●人や自然の心を
大切にするよき人
間たらんと自覚す
べきである
(以上「建学のこ
ころ」から抜粋)
●特になし ●できる人ができ
る範囲で活動する
●特になし
  1. おもしろ人立「めだかの学校」は、歴史が浅いにもかかわらず「建学のこころ」    において、完成度の高いルールが示されている。
  2. ルールの必要性は入会者の属性の範囲(分析の軸14、15参照)と関係があるのではないか。例えば、狭い地域の団体であればお互いのルールの認識が共通しやすいと考えられる。しかし、必要があってルールが存在するだけでなく、そのルールの魅力に惹かれて入ってくる人もいるそうである(おもしろ人立「めだかの学校」)。

6これまでの主な活動実績

団体名 おもしろ人立「めだかの学校」 湖西夢くらぶ21 遠州横須賀倶楽部 天竜市熊地区活性化推進協議会
これま
での主
な活動
実績
●学校は講義と給
食(情報交換&懇
親会)の2部構成
●遠足(長野、岐
阜、由比等生徒の
いる地域)
●文化祭、コンサ
ート、震災ボラン
ティア
●ふるさとマップ
作成、ふるさと散
歩(マップ歩き)
●勉強会(講師
山内秀彦、植田睦
子)
●他団体との交流
(岐阜県福岡町夢
倶楽部、湖西市フ
ロンティア倶楽部
●遠州横須賀三社
市(毎月第4日曜
早朝に三熊野神社
境内で行うフリー
マーケット)
●遠州横須賀観歩
記(休止中)
●年越三社会(初
詣客に甘酒の無料
サービス等を行う

●遠州横須賀凧上
げ祭り(2月)、
牛と喰わざー会(
11月)、遠州横須
賀三熊野神社大祭
(4月)の支援
●「くんま水車の
里」、「くんまか
あさんの店」の建

●阿多古川の環境
護岸
●朝市、物産展
●納涼盆踊り大会
、蛍を見る会、ふ
るさと祭り
●手打ちそば体験
ツアー
  1. 4団体とも人と人との交流的活動が多く、活動を通じて人間関係の再形成を図っているといえるだろう。
  2. 名前を見ただけで、楽しそうなイベントが多い。

7今後の活動予定及び課題

団体名 おもしろ人立「めだかの学校」 湖西夢くらぶ21 遠州横須賀倶楽部 天竜市熊地区活性化推進協議会
今後の
活動予
定及び
課題
●生徒による講師
名簿の作成
●地域学フォーラ
ムinいなさ(平成
9年1月23、24日
)への参加
●三遠南信地域の
“あんこ”的(内
側の意味)交流へ
の貢献
●マップを完成さ
せ、地元の小学校
と交流を図る
●勉強会
●勉強会で講師が
できるようになっ
たり、問題意識を
もち、それを解決
していく人づくり
が課題
●定期的なものを
続けていく
●休止中の遠州横
須賀観歩記を青年
部、婦人部と協力
して復活させる
●他が真似できな
い独自のまちづく
りが課題
●どうすれば若者
が住みつくか?産
業が芽生えるか?
文化・人情のある
まちづくりができ
るか?等長期的な
展望と広い視野で
活動を組織化する
ことが課題
  1. おもしろ人立「めだかの学校」と湖西夢くらぶ21は、新規事業の発掘に精力的である。これは、両団体の歴史が浅く、これから盛り上がっていく発展途上にあるからであろう。
  2. 他の2団体は、安定した活動を継続するようである。

8会合開催頻度

団体名 おもしろ人立「めだかの学校」 湖西夢くらぶ21 遠州横須賀倶楽部 天竜市熊地区活性化推進協議会
会合開
催頻度
3ヶ月に1回
(他に職員会議随
時)
月1回 月1回の月寄合と
年1回の年寄合
月1回の理事会と
年1回の総会
  1. 月1回程度の開催は、参加に負担にならず継続的活動を続けやすい開催頻度であろう。
  2. おもしろ人立「めだかの学校」の開催頻度が少ないのは、遠方参加者が多いこと(分析の軸14参照)と地域活動をしているグループの一部が交流している(分析の軸19参照)からであろう。

9登録人数

団体名 おもしろ人立「めだかの学校」 湖西夢くらぶ21 遠州横須賀倶楽部 天竜市熊地区活性化推進協議会
登録人
約200人(平均
90人出席)
35人(平均10〜
20人出席)
64人(平均10人
出席)
約300戸(熊地
区全世帯)
  1. 登録人数と平均出席人数の間には差がある。これは自主入会、自主参加であるためで、楽しみながら継続させたいと考えている団体では、当然の結果であろう。ただし、「名前だけ貸していて何もしない」幽霊部員を増やさないためには、1回休んだ場合に次回参加しやすい雰囲気が団体にあること、または会報等を発行

する制度があることが必要であろう。

10入会の条件

団体名 おもしろ人立「めだかの学校」 湖西夢くらぶ21 遠州横須賀倶楽部 天竜市熊地区活性化推進協議会
入会の
条件
●先輩生徒2人以
上の推薦が必要
●20分間の講義が
できること(自己
申告)
●豊かな地域づく
りをしたいと思っ
ている人
なし ●目的に賛同し、
入会を希望する地
区在住者(地域外
の特別会員や事業
所の賛助会員の制
度もあるが活用さ
れていない)
  1. 個人の自主性を尊重している。
  2. おもしろ人立「めだかの学校」の推薦が必要という条件は、後から増やした条件である。(分析の軸18参照)