形のないプレゼント<舞台裏>

 

「そういえば……今日はトラップの誕生日でしたねえ。クレイ、プレゼントは買いました?」
 キットンに訊かれて、おれは剣を磨く手を止めた。
「いや……まだだけど……」
 あいつにプレゼントをやる、なんてなんだか照れくさい気もする。できればあんまりそうとは気付かれないようなものがいいよな。それか、パーティ全員でプレゼントするとか。

 ちょっとだけ考えて。いい案が思い浮かんだ。

 

「なあ、クレイ」
 トラップがおれに声をかけた。
「どうした、トラップ?」
「いや、パステルどこに行ったのかって思ってさ」 

 

 

 パステルを探しに出て行ったトラップを見送ると、キットンがおれに笑いかけた。
「やっぱりパステルは迷いましたねえ」
「まあ、そうじゃなくちゃこのプレゼントは成り立たなかったんだけどな」

 おれたちの考えたプレゼント。それは「パステルをひとりで探しに行く権利」だった。
 パステルは朝からおかみさんと出かけていたのだけれど、きっとはぐれて道に迷ってしまうだろうと思ったおれたちは、そのときトラップにひとりで探しに行かせようと考えたのだ。
 そして……今、そのプレゼントは贈られた。

「でもまあ、パステルが迷うたびに探しに行くのはトラップですからねえ。どこまでプレゼントになるのかは疑問ですが」
 キットンはそう言ったけれど、おれはこれがあいつにとって一番のプレゼントになる確信のようなものがあった。

 付き合いが長いから、トラップが誰を見てるのかなんて簡単に分かってしまった。
 きっとあいつは自分でも分かっちゃいないだろう。知らないうちにパステルに抱いている気持ちを。
 だからきっかけをプレゼントした。そうとは気付かれない形で。

 ……初夏の風も、味方してくれるに違いない。

 

「おや、思った以上にうまくいったみたいですねえ」
 窓から下を気付かれないようにのぞきこんで、キットンはそう言った。おれもそっと窓から見下ろす。
 重なる二つの影をちらりと見て、おれはそっと呟いた。

「ハッピーバースディ、トラップ」 

 〜END〜

 

 無理ありすぎ。
 というわけで、こじつけとも言えるような舞台裏でございます;;(爆)
 もちろん、この舞台裏も公式ページに投稿させていただいたものです。実は本編より、こっちの方のウケのが良かったり……。

 お話としてはかなりショートなストーリーになってしまってますが、わたしの好きなイメージのクレイを埋め込むことができて結構満足。これ、ひょっとしたらキットン視点で書いても面白かったかもしれませんね。うちのトラップとパステルは、こんな感じでかなり皆に支えられてます(笑)

 

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