<卵王子> カイルロッドの苦難 シリーズ

富士見ファンタジア文庫 全9巻

 

おおまかなお話

 卵で生まれたために<卵王子>と呼ばれるルナン国の王子・カイルロッド。
 婚約者に逃げられた夜、城を抜け出し酒場で酔いつぶれた彼が翌朝見たものは石と化したルナンの人々だった。
 カイルロッドと同じく無事だった少女ミランシャと旅の剣士イルダーナフは原因を究明し人々を救うため旅に出ることになるのだが、カイルロッドはフェルハーン大神殿から指名手配されてしまい……

りあるの超個人的感想文

 冴木忍先生ファンに「あなたが初めて読んだ冴木忍作品はなんですか?」という質問をすればまず間違いなくこの作品が一位になるでしょう。
 そして、冴木忍先生ファンに「あなたが好きな冴木忍作品はなんですか?」という質問をすればまず間違いなくこの作品が一位です。
 それくらいの名作だと思います。

 このお話では、いろいろなことを考えさせられました。正しいと間違いの境界線がいかにあやふやなものなのか、強く感じます。
 カイルロッドが、ミランシャが、そしてイルダーナフが。
 フェルハーン大神殿のエル・トパック、そしてアクディス・レヴィが。
 それぞれ精一杯に生きて、いろんなもののために自分が信じた道を歩んで行く姿はすごいとしか言えません。

 この話ではしょっちゅうぼろぼろ泣きました。特に、ラストに向けての辺りはもう……
 わたしが最初に泣いたのは2巻です。ぼろ泣きに泣きました。メイリン……いい女です。
 彼女だけでなく、この話の女性キャラってすっごく魅力的です。
 ちっちゃな子ならパメラちゃん。彼女のセリフ、すっごくいいと思います。(この子の出てくる巻、人気が高いです)
 イルダーナフの娘メディーナに、エル・トパックの部下ティファ。賞金稼ぎのレイブンもかっこいいですね。
 変り種でアクディス・レヴィの母親、キアラ。彼女もそれはそれですごいです。ある意味では確かに魅力的と言えるかもしれません。

 さまざまな人の死。それによる辛さや苦しみ。
 作品中のそういったものの中でも不思議とやさしい気持ちになれるのは、カイルロッドのやさしさによるところが大きいんでしょうね。
 それが甘さであり、弱さであるとしても同時に強さなんだなあ、と。
 ラストのセリフはかなりの名セリフです。
 ぜひぜひ、最後まで読んでください。あったかな気持ちをどこかで感じるはずです。

 

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