夢と知りせば

富士見書房 伝奇新世紀 (ハードカバー)

 

おおまかなお話

 浪人の星之助はある晩、覆面の浪人に襲われていた一人の男を助ける。しかし、浪人と打ち合っている間にその男は川へ飛び込んで逃げてしまう。長屋へ帰った星之助が見つけたのは、男に託されたらしい奇妙な線の描かれた紙切れだった。
 次の日、口入れ屋の徳蔵からの依頼で甲州屋の若隠居・梅太郎の隠居所へ向かった星之助は、そこで少し不思議な能力を持つおあきと出会う。泊まりこみで用心棒を任された星之助だったが、紙切れを託した男が何者かに殺されたことを知り、紙切れをめぐる争いに巻き込まれてしまう……

りあるの超個人的感想文

 この話にはいわゆる異形の魑魅魍魎は出てきません。
 出てくるのは様々な業を抱えた人間です。……取りようによっては、それも魑魅魍魎かもしれませんが。

 主人公の星之助は腕のたつ浪人です。それでいて人が好いところなんて誰かさんにそっくり(笑)
 だけど彼をそうさせているのは暗い過去なんです。父への反発、母への、弟への想い。それらが星之助をつくっている。過去をあまり感じさせない星之助にはどこか安心させられましたけれど、それが逆にあまりに深い過去であるようにも感じました。
 そして敵方であった竹内伊織。許婚である千草の兄を殺してしまったことに苦しみ、それでも千草を想う気持ちが哀しかったです。

 後半は紙切れを巡った戦いが二転、三転として激しくなっていきます。
 その中にも多くの人の業、それゆえの悲しみ、憎しみが渦を巻いています。

 わたし的には神秘的でありながら仕草の子どもっぽいおあきちゃんがとっても好き(はぁと)
 梅太郎さんもいいですね。ほんとに20代なのか!? って感じが(笑)
 ラストが爽やかでとっても気に入っています♪
 時代物ですがわりとすんなり読めると思いますよ。江戸の雰囲気を味わってみましょうです〜。

 

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