「本当にこっちで合ってるのかよ?」 その台詞は、クエスト中に何度出るのか知れないお決まりの文句。だが、非常に珍しいことに今回はそれをぶつける相手が違う。 「いや、間違ってはいないはずなんですがねえ……。植生も、この本に書いてある特徴通りになってきてますし」 今回ばかりは地図を取り上げておれが答え合わせしてやることも出来ねぇ。なんといっても、地図を頼りにここまでやってきたわけじゃねぇってのが痛い。それじゃあ何を頼りにしているかというと。 「でも、なんだか周りも薄暗くなってきちゃってるし……ねえキットン、一体何が見れるの?」 ちょっと心配そうにそう言ったのがパステルで、そいつの手をぎゅっと握ったのが何もよくわかっていないだろうルーミィ。ほえほえっとした眉を少ししかめ、「見れりゅのー?」とパステルの真似をする。 「まあ、何か危険がありそうなわけではないけど……でも、このまま暗くなったら、見れるものも見れなくなるんじゃないか?」 辺りを見回しながら控えめにそんなことを言ったのはクレイだ。ノルもそれに頷く。 そんな、一通り全員の反応を受け止めてからキットンは「まあまあ」と空気を抑えるように手を動かした。 「大丈夫ですよ。条件はバッチリです」 「おめぇがバッチリって言ってバッチリだったためしがあるか?」 交ぜっ返すとキットンがむっとした顔でこっちを見た。 「なんですかトラップ、その失礼な言い草は」 「事実を言ったまでだろうがよ」 「事実!? トラップそれはどういう……」 「はいはい、ストップ!!!!!」 深刻に火がつく前にクレイが間に入ったのが良かった。軽くにらみ合う程度で矛先は見事に逸らされ、どこに向かうでもなく消えていったわけだから。 クレイは小さく肩をすくめ、キットンに言った。 「何なのかくらい、そろそろ教えてくれないか?」 それを受けてキットンはコホンと一つ息を吐き、もったいぶった顔で皆を見渡した。 本当に。 つくづく、こういうことが好きなやつだよな。 書物を調べていてたまたま気がついたのですが今日しかもうというか今日こそが一番いい日なんですですから今から行けば多分間に合うというか絶対にぴったりの時間につくのでもう絶好の機会だとしか思えませんですからとにかく皆さん一緒に見に行きましょう! 1.何か見るべきものがある ……まとめてみてもよくわからねぇ。 もったいぶった顔のキットンは、口元に一本人差し指を立てて、「しーっ」という仕草をした。 キットンも気付いたのか、そもそもそれが目的だったのか。 「わ……あ……」 そこは、湖だった。夕暮れの光を弾いて、紅く輝いている。
夕陽と湖から光を浴びて、それを帯びた蝶は淡く発光しているかのように見えた。 「繁殖期でしてね」 蝶が、舞う。 「恋を、しているんだねえ……」 「一匹一匹の羽根の模様が違うの、わかりますか?」 じゃあ、この蝶たちは、二つとない相手をその羽根で見つけて。 「綺麗でしょう? 『森の宝石』って……そう言われているんですよ」 触れれば壊れてしまいそうな、風に吹かれればひらひらとどこかに消えてしまいそうな、そんな『森の宝石』、か。 そのとき、ああ、と、思った。 「綺麗だったねー」 なんだか、不意に蝶が重なって見えた。 二つとない、たった一つの。 「ちょっ、何するの」 風に吹かれてふらふら消えてしまうことを、恐れたわけじゃなくて。 とりあえず、今、たった一つのこの手のひらがここにあるから。 〜END〜 |
横に置いとくな! いや、置いとけ!! と、結構よくわからない葛藤が自分の中にもあるのですが。今回、わりと赤裸々に自分の感情認めてるのかと思いきやって感じですよ。しかし自分の書いたものにそんな突っ込みするなよ。落ち込むから。 ネタと同時にタイトルが浮かんでいました。それが、随分昔のこと(滅) そのまま寝かされ、ここに来てやっと日の目を見た作品です。 大元のネタは、ポルノグラフィティのアゲハ蝶、ではなく(←強調)、作中に出てきた、遺伝子の違いを羽根に表す蝶です。これを知ったときに、「お、使える」って思いまして。 随分と短い上に、ほんのりとしたトラパス風味ですが、まあこんなのもありかなってことで。 |