この気持ちに気付いたのはいつのことだっただろう。 初めは、そんなわけないってずっと否定してた。だって、自分でも信じられなかったから。 たとえば今日、昼間のこと。いつものように小説を書いていたわたしは、ふと、後ろを振り返った。
その寝顔を見ただけでも、思わずドキッとする。
ドキドキドキドキ……。 うーん、何でこんなやつ、好きだなんて思っちゃったんだろう。どこがいいの? こーんな、トラブルメーカーで、口も悪くって、態度もでかくって、意地悪なやつ。 だけど、知ってる。 それから、マリーナのことを好きってことも。そりゃあ、これはわたしの推測に過ぎないけどさ。だけど、彼の態度を見ていたら、そうとしか思えない。
なんで、こんなやつ好きなんだろう。 椅子を離れて、ベッドに腰掛ける。そして、こわごわと彼の前髪に触れる。 彼の前髪を右手でもてあそぶ。そっとおでこに触れる。すこしつりあがった眉。意地悪な、だけど人を射るようなその目は、閉じられていて、私を見ることはない。 トラップがちょっとうめいたあと、ゆっくりと目を覚ました。 トラップは、寝ぼけ眼でわたしを見ると、不思議そうな顔をしてわたしを見つめた。その、明るい茶色の眼で。
きっと、ほんとに起きてたらトラップのことだから理由聞くだろうな。答えられないのに。だって、好き、だなんて絶対いえない。
彼は寝息を立て、表情は変わらず、わたしだけがここにいるみたいで。 しばらくそうしていた。ドアの向こうからルーミィのかわいい声が聞こえるまで。自分が泣いてるのにも気付かずに。
そして今。眠ってるフリが、ほんとに眠ってしまってたみたいで、気付いたら窓の外は真っ暗だった。背中に毛布がかかっている。
「やっと起きたのかよ。もうクレイたち猪鹿亭、いっちまったぜ」 その声に、また、苦しくなった。心臓が、胸が、心の中が苦しい。
「うん……。ごめんね」 トラップが、わたしの前に立った。こっちを見てるような気がする。それだけで、つい顔が熱くなる。 なんて、好き、だから。 こんなに、好きになってたなんて。気付かない方がよかった。あのままがよかった。だけど、気付いちゃったんだもん。もう、前みたいに出来ないんだよ。
「おいっ」 「だって、す…………もん」 そりゃそうだ。わたしだって自分で何いったのか、わからないんだもの。 「言えないもん。言っちゃいけないから」
「お前な。……何か言うときはちゃんと人の顔見ていえよ」
そうしたら、椅子に座っていたわたしを、トラップが突然引っ張った。そしてすっぽりとトラップの腕に抱かれていた。 「おまえがそんなんだと、こっちが困んだよ」
ううう、見られてたなんて恥ずかしい。なんて思ったのかな。ひょっとして、ばれてる……?
そして、わたしも、トラップも何もいわずに、自然と顔が寄った。吸い込まれていく。 「トラップ、あのね、その……大好き」 そう言われて、その目をじっと見た。いつもの、鋭い眼。そっか、そういう眼だったんだ。この、射貫くような眼は、わたしにだけ、向けられてたんだ。 今日は、記念日だね。わたしの気持ちが通じた日。 トラップの気持ちがわかった日。……こっちがうれしいなぁなんて。 何年たっても、この気持ちが続くように、来年もまた――――。 終わり |
YURI’S トーク
滝JEANさまのHP「滝の間」にて5555HITを踏んだ際にいただいたものです♪ 「リクエストは?」というお言葉に、わたしは「記念日な切ないトラパス創作を♪」などと、わけのわからんリクエスト(爆)をしてしまって随分困らせてしまいました(汗) 本当に、申し訳ありませんでした!! そして、こんな素敵な創作に仕上げていただいてありがとうございました〜〜♪ 自分の気持ちに揺れてしまうパステルがすっごくかわいいです(^^) たきゅさん、本当に本当にありがとうございました♪ 5555HITを踏めてすっごくラッキーだったなって思います! |