また、あの夢……。 醒めた意識がそう認識した。しかし目覚めることはできない。 夢を見るようになったばかりのころは必死で目を開けようともがいたこともあったが、それでどうにかなるものではないとすでに悟っていた。 光が広がっている。見渡す限りの光だ。影をつくるものなどなく、影そのものも存在しない。そんな光の中にギアはひとり立っていた。 シャンッ……シャンッ…… 砕けたガラスの粉が触れ合うような音が一歩一歩踏みしめるたびに静かな空間に広がっていく。これは光の音なのだろうか……? ふと足を止めてギアは息をついた。 振り返らずとも分かっていた。しかし振り返らなければならないこともまた、分かっていた。 もう見慣れてしまった、片翼の天使。 自分がかつて愛しく想った相手にそっくりな顔。翼をもがれ、痛々しい姿を見せながらもその顔は慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。 笑みを保ったまま、翼をもぎ取られた部分から天使も崩れていった。細かな粒になり、砕けた瞬間の一瞬だけ淡く発光すると何事もなかったかのように消えていく。 最後に残った天使の顔。微笑みの残る、それなのに乾いた印象を与えるその顔。 突つかれたシャボン玉がはじけて消えるように、天使の顔も一瞬で粒子となった。 体の深い場所で、鈍く重い痛みが広がりつつあった。 ************************************************************* ため息をついて消えかけた炎を見た。 (それにしても……) 気配は感じたが確信はなかったというのに。幸運だったのか、それとも彼が不運だったのか。いずれにしてもアクシーズにとってのプラス方向へ進んでいる。 「おい」 「だから、その雰囲気に似合わない敬語をやめろって言ってるんだ。 |
はい、お気付きの通り、ギアも天使の夢を見ております。「そうじゃなかったら話に絡めさせられないだろ」という突っ込みはなしで(爆) ちょっとだけダンちゃんの見せ場です。アクシーズとのからみは実は少ないので要チェックかも(笑) 正体をあらわしたアクシーズ、お気に入りですが動かしにくい……;; サブタイトルは宇徳敬子さんの曲からです。 |