パチン、と枝が火の中ではじけた。静かな夜の森にその音がむなしく広がる。 側に積まれた枝を焚き火にくべると、火の向こうで起きあがる気配がした。 「なんだ? 見張りの交代にはまだ早いぞ」 ダンシング・シミターは起きあがった男……ギアに声をかけた。 「ああ……ちょっと、な」 今日で一体何度目になるだろう。繰り返し見る、あの夢。目覚めた瞬間には遠くへ還って行くというのに、どこか自分の深い場所で重くわだかまっている。 「どうにかできるもんでもないだろうが、寝不足になって剣が鈍ることがないようにだけはしてくれよ」 ギアは目を閉じる。頭から離れないあの夢の方が、剣を鈍らせる原因になるのではないか……。 そんなことを考えながらもうとうととしかけたとき、ふと何かの気配を感じ、ギアは身を起こした。すぐに手に取れる位置に剣を引き寄せる。ダンシング・シミターも鋭い視線を一方にそそいでいた。 「よかった……やっぱり冒険者の方でしたね。……って、違いますか?」 「冒険者の方、ですよね? 一晩だけ、ご一緒させて頂けませんか? 一人で野営するのがどうも心細くて」 「助かりました。街道に沿って歩いていたはずなのに気がついたら森に迷い込んでしまっていたんです。一人でキャンプする気にはなれなくてうろうろしてたら真夜中になってしまうし。どうしようもなくなって途方にくれてたら、やっと遠くに火を見つけたんですよ。それで冒険者の方だろうと思いまして。 「家を追い出されましてね。とりあえず剣とアーマーを持って出てきたはいいけど剣の使い方なんて知らない。ついでに言えば、僕は体力はあっても腕力はないんですよ。とりあえずできるのは歩き回ることと逃げ回ることくらいですか。そんなだから冒険者になろうにも自分に向いている職業が見つからなくて、あちらこちらふらふらしてる、ってわけです。おまけに、ちょっとばかし方向音痴なんですよね」 ダンシング・シミターも同じことを考えたらしい。二人の呆れ半分……いや十分の視線を勘違いしたのか、青年は首を傾げてにっこり笑った。 |
お気に入りのキャラをどんどん出しちゃおう、というのがこの作品のねらいでもありまして(爆) んなわけでギアの登場です。ポジション的にはおいしい位置にいるはずなのに、これから先、かなり不幸な展開に翻弄されることになります(爆) ごめんね、ギア。 そしてオリキャラ、二人目の登場でございます。 一筋縄ではいかないキャラを書こうと思ったら、相当動かしにくくて(苦笑) 苦労したキャラだったり。 サブタイトルはT.M.Rの曲からです。 |