空も飛べるはず。<0>〜突然〜

 

「起きなさいトラップ!」
 これで起きれば苦労はないのだが……部屋のドアを開けながら、パステルは内心ため息をついていた。
 案の定、トラップはまだベッドの上で寝ている。パステルはつかつかとベッドに近づき、布団をはがそうと端を持った。と、その瞬間……

「行くな!」
「きゃっ!」
 いきなりトラップに腕をつかまれ、パステルは驚いて声をあげた。
「な、なにするのよ」
 パステルが腕を振り払おうとすると、それより早くトラップが腕をはなした。

「……なんだ、おめぇか」
 トラップは寝ぼけたように髪をかきあげ、ぼんやりとパステルを見る。そのようすにパステルは首を傾げた。
「なあに、寝ぼけてたの? わたしが何に見えたのよ」
「……背中に羽根のある天使」
「はあ!?」
「……なんでもねー」

 憮然とした表情で言い、トラップは起きあがった。起きたのなら、とパステルは
「早く準備してよ」
 言い残して部屋を出た。早くしないとみんなが待っている。しかしパステルの足はすぐに止まってしまった。

「何してるの、クレイ?」
 部屋を出てすぐのところで、クレイが目を丸くし、口をあんぐりと開けて立ち尽くしていたのである。追いついたトラップと顔を見合わせ、パステルは首を傾げた。
「なんだよ、とんでもねーもの見たような顔してさ」
「いや、実際に見たんだよ」
「は? 何を?」
 クレイはごくんとつばを飲み込んで、
「背中に羽根のある、天使」

 パステルとトラップはもう一度、顔を見合わせた。

 

長い長いシリーズものの幕開けです。正直、ここまでの長さのものを書いたことがなく、単なる長編への憧れから始めた(爆)ものなのですが、どんどんどんどん思い入れが強くなり、想像よりも果てしなく長くなりつつあります。。。

「空も飛べるはず」という題名、同名のスピッツの曲があります。(これからとったわけでもないのですけれど)
 そんなわけでサブタイトルも実際の曲からとっています。
 この回のサブタイトルは「FIELD OF VIEW」の曲からです。

 

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