岩本隆雄といえば、「星虫」でやや説教くさいものの、王道のジュブナイルを書いてデビューし、
しかしその後続編の「イーシャの船」を出した後は10年出版せず、引退したかな、
と思った矢先に朝日ソノラマから続編(スピンオフ作品)を出版、作家活動再開したとたん再び休眠に入った変り種の作家さんです。
6年ぶりの出版ということで、ホント久しぶりです。よく出版できたな、という感想もあったりしますが。
そして、「星虫」に連なる話ではなく、完全な新作です。出版と出版の間が開きすぎているのでレーベルもほぼすべての本で変わってしまっています。
しかも、今度は文庫ではなく新書です。ノベルズ、というやつです。
上下巻の構成、計750ページ、(1ページは2段の段組)結構な分量があるので読むには少々覚悟がいるかもしれません。
この作者のカラーなのでしょうが、感覚的にライトノベルではなく、「ジュブナイル」を読んでいる気にさせてくれます。
それこそ昔NHK少年ドラマシリーズになったような「狙われた学園」とか「夕映え作戦」といったものです。
30年以上前に眉村卓や光瀬龍が書いたものを彷彿とさせるわけです。
古めかしいか、というかなんというか。いい例がネーミングにあります。
いまどき異星人や異世界人に「ル人」とか「ア」とか名づけるラノベは見かけません。
まあ、だからこそ良いと思えるのですが。
単純なボーイ・ミーツ・ガールではなく、学校の有名人、あるいはあまり話をしないクラスメートといった
名前くらいは知っているけど、といったあまり縁のなかった同世代の人と話をして友人となり、
協力して難事にあたり、解決するといういわば王道中の王道で話が展開してゆくのが心地よいのです。
ライトノベルにも同じような話はあるのでしょうが、何故か琴線に触れたのがそこでした。
いまどきのラノベとはちょっと風味が違うので、一読のお勧めです。
書名 | 著者 | ISBN | 値段 | 出版社 | 初版 | 装丁 |
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夏休みは、銀河!(上) | 岩本 隆雄 | 978-4-02-273900-1 | \1100 | 朝日ノベルズ/朝日新聞出版 | 2008/10/30 | 新書 |
夏休みは、銀河!(下) | 岩本 隆雄 | 978-4-02-273903-2 | \1100 | 朝日ノベルズ/朝日新聞出版 | 2008/10/30 | 新書 |