2000年04月の一品
2000年4月に読んだ本となります。まとめ読みじゃないんですけどね。(苦笑)
ネタばれに注意!
Index
- 樹川 ひとみ著「楽園の魔女たち 〜薔薇の柩に眠れ〜」
- ロバート・J・ソウヤー著「フレームシフト」
- 榊 一郎著「スクラップド・プリンセス 捨て犬少女の夜想曲」
楽園の魔女たち 〜薔薇の柩に眠れ〜
妙に気に入ったシリーズ。第11弾。よく続くもんです。
今回は吸血鬼のお話。とはいえ、ゴシックホラーなんてのを期待してはいけません。
このシリーズはひたすらコメディです。
巻数が進むに連れて各キャラクターのいろいろな秘密や性格が暴かれてゆくのはシリーズゆえの宿命なのでしょうが、
今の所大きな、一見してわかる矛盾も見えてません。
第一巻ではひとり一つかろうじて使えた -- ってゆーか、使わなくてもぜんぜんOKってキャラもいましたが --
魔女たちも瞬間移動までこなすようになってしまいました。
瞬間移動の魔法ってのはどんなRPGでも難易度高いのですけどね。
(無論、いつでも例外はある)
作者の中では台詞も含めたラストシーン、だけは決まっているそうで、あとはそこまでの道のりだそうです。なーんもきまってないとか。
「楽園にようこそ!」なのではないかと邪推しているのですが、さてさて、どうでしょう。
書名 | 著者 | ISBN | 値段 | 出版社 | 初版 | 装丁 |
楽園の魔女たち〜薔薇の柩で眠れ〜 | 樹川 ひとみ | 4-08-614704-1 | \510 | コバルト文庫/集英社 | 2000/4/10 | 文庫 |
フレームシフト
専門分野の最新技術はそれを知らない素人から見ればフィクションと同じ。という言葉があるそうです。
厳密にいえば、フィクションとノンフィクションの区別がつかない、ということなのですが、この作品が私にとってはまさにそうでした。
というか、遺伝子の勉強なんて遥か昔に4つの塩基、その塩基の並びによってアミノ酸が作られる、
という程度を生物の授業で受けた記憶がある程度なのですが、
この作品はその遺伝子学の教授が主人公となったものです。
いきおい遺伝子学の小難しい話も出てくるのですが、これがフィクションなのかノンフィクションなのかがわからない。
私にとってはSF以外の何者でもないわけです。
作者のロバート・J・ソウヤーは一番有名な作品はおそらく「ターミナル・エクスペリメント」でしょう。確か映画化されているはずですし。
「ターミナル〜」でもそうでしたが、比較的現実に近い舞台を用意し、ガゼットもあまり大袈裟ではなく、
SFを読まない大衆に受ける作品を書くと聞いた記憶があります。
とはいえ、この「フレームシフト」はガゼットそのものは確かに大袈裟ではないですが、大衆受けしそうな作品か?、
と聞かれると、首を捻ってしまいますげれども。
作品冒頭でいきなり主人公が暴漢に襲われるシーンから始まり、過去に戻って主人公たちの現在に至るまでの足跡を示す。
その中で遺伝性の病気とネオ・ナチスの話が出てきてどう絡むのだろうかと思えば、意外なところで絡んでくる。
私自身ハヤカワ文庫の翻訳SFはじっくりと腰を据えて読むようにしているのですが、
ライトノベルとは異なり、勢いだけで読めるものではないので
この作品ななぜだか一気に読めてしまいました。
特に起承転結の「転」に相当する部分。
え?なんでこんな、ほんの1,2ページの描写しかなかったのに。
などと思いながら、それでもしっかりと伏線があるあたりはさすがだ、と思いながら。
フレームシフトとは、遺伝子の塩基配列がなんらかの事故でずれ、余分な塩基が挿入されてしまう現象のことをいうそうです。
正常な塩基配列) | CAT−CAG−GGT−GTC−CAT |
フレームシフト) | TCA−TCA−GGG−TGT−CCA |
普通であれば遺伝子異常ということで人間が形成されず、胎児の段階で流産するそうですが、
この作品ではこのフレームシフトが少しだけ重要な意味を持っています。
さて、私には判断つきませんが、このフレームシフト。フィクションorノンフィクション?
書名 | 著者 | ISBN | 値段 | 出版社 | 初版 | 装丁 |
フレームシフト | ロバート・J・ソウヤー | 4-15-011304-1 | \880 | ハヤカワ文庫/早川書房 | 2000/3/15 | 文庫 |
スクラップド・プリンセス 捨て犬少女の夜想曲
まぁ、ノクターンの名にふさわしい内容というか、少々物悲しくなるのを求めたというか。
それよりも、何気に作者の「神」に関する記述があってなかなか興味深かったです。
以前の宗教話といい、この作者、宗教だとか神だとかに何やら一家言あるようにも見受けられます。
とはいえ、日本人臭いのがなんとも(苦笑)
話自体はスタンダードで、予想を裏切らない内容となっています。
わかりやすいといえばわかりやすい。
水戸黄門だとか大岡越前と同じです。安心して読んでいられる。
反面、緊張感だとか驚きといったファクターが犠牲になっているのはやむを得ないところなのでしょうか。
問題は、この世界の前に(おそらくは)存在した科学文明。
いかほどの進化を遂げたものなのでしょうか?
強力すぎて使えない「重武装砲兵型」の人型兵器のサイズが人間大というのはちと理解がし難いのですがね。正直。
まぁ、そこがSFっていうか、ファンタジーといわれればそれまでなんですが。
同じサイズでシビリアンタイプというおそらくは人民統制用のものがあって、
それがやっぱり人外的な攻撃能力持っているっていうのが問題といえば問題なんですが。
ちょっと様子見してみましょう。・・・と言って何巻になるんでしょ?(苦笑)
書名 | 著者 | ISBN | 値段 | 出版社 | 初版 | 装丁 |
スクラップド・プリンセス 捨て犬少女の夜想曲 | 榊 一郎 | 4-8291-2961-1 | \520 | 富士見ファンタジア文庫/富士見書房 | 2000/4/25 | 文庫 |
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