富士見ファンタジア文庫刊行の新人、瀧川 武司著「どかどかどかん」
すっげーわかりやすい話。
作者もあとがきで言っているが、目指しているのはジャッキーアクション。
それも昔の酔拳だとか木人拳だとか、あのあたり。
親(もしくは師)が殺され、主人公は生き延びる
↓
成長する
↓
親(もしくは師)のかたきと出会い、戦いを挑んで負ける
↓
修行する(この時点で師につくこともあり)
↓
リターンマッチをして勝つ。
なぜか知らないけれども、古いカンフー映画って、このパターンばかり。
日本でいう水戸黄門だとか大岡越前だとか。通じるものがあるかもしれない。
で、このパターンを踏襲したこの作品だけれども。
正直、まだ、速度が足りない気がする。
映像と文章とで比較しているつもりはないのだけれども、そうしてるのかもしれんが。
カンフー映画を見慣れている人には食傷かもしれないけれども、その一派ということで。
ああ、ライトファンタジーなので、出てくる拳法は無茶なモンばっかです。ハイ。
THE BESTでやったのだから構わないだろう、という判断でこちらへ。
雑誌掲載作品である。連載でないぶんましか。
「SF Japan」という徳間書店刊行の雑誌がある。私の知ってるだけで
今年の4月に0号、11月に1号が出版されている。
日本SF大賞の20周年を記念しての出版らしいが。
徳間は最近、リバイバル中心の新文庫刊行してるし、何かあったのかね?
ともかく、そのSF Japanの0号に出ていた作品。第一回SF新人賞受賞作
三雲 岳斗著「M.G.H HEAVEN IN THE MIRROR 楽園の鏡像」
SFのギミックを使っているけれども、この話は犯行の手段を究明する一種の推理小説。
自分で自分の事を「推理小説はよめない」と断言していて、現にそうなのだけれども、これは読めた。
なぜか。推理小説として読まなかったからだ。
サスペンスとも違う。SFとして読んだためだろう、という見当はつく。
莫大な金を必要とするものの、民間人が宇宙ステーションに宿泊出来るようになった時代。
その宇宙ステーションで無重力区画でその遺体は発見された。
その遺体はまるで墜落でもしたかのような状態にあった。
地球上ではありえない話ではないが、この無重力状態のステーション内で起きる現象ではない。
では、どうして無重力空間の中で墜落死したかのような死体が発生したのだろうか。
この事件のなぞ解きとするのが主人公である。
青春小説のエッセンスもあり、自分的にも読むことが出来た。
犯行方法はSF的というより、かなりの科学的な方法ではあったのだけれども、宇宙空間(無重力空間)という特性、
そこが宇宙ステーションという特異性を生かした方法だとは思ったし、故に単なる推理小説にはなっていない、とも思った。
これが推理小説界で受け入れられるか否か、首をひねる所ではあるが。
単に自分が推理小説世界をお堅い所だ、と思っているだけだろうか。
まぁ、最後、「名探偵、皆を集めてさて、と言い」の状態になっていたのには笑ったけど。
電撃文庫刊行、川上 稔著「都市シリーズ機甲都市 伯林 2 1939」
めずらしく続きものである。いやまぁ、一応は一冊で終ってはいるのだけれども。
架空世界での第二次世界大戦の再現。ただし、そこには航空戦艦あり、巨大ロボットありで
しかも竜はいるし、ライカンスロープまでいる。
というアニメちっくな世界ではあるのだけれども。
話そのものは大きな流れの一部でしかなく、謎もまだ多い。
一方、大きな謎の一部はあかされたりして、徐々に進んでいる気配はある。
なにより、自分的にはパリの事件がどこまで影響しているのか、
そっちのほうが気にかかるのだけれども。
独特の世界観で作品を構築してあるのだが、最近冗長を感じてきた。
多分、飽きてきたのだろうと想像できる。
後、シリーズと銘打っており、また、作中に別の作品を示唆する都市の名前なども出てくるわりには都市間の関係が不透明な所がある。
特に前回・今回とドイツが舞台であり、フランスやイギリスと戦争を起こす、第二次世界大戦時期を舞台にしているだけになおさら。
いや、おそらくはパリの事件が全ての関係想像をくるわせたのだろうとはおもうのだけれどもね。
回答らしきものはでてないようだし。
さてさて。続き、どうすっかねぇ。
電撃文庫刊行、三雲 岳斗著「コールドゲヘナ」
竜が頂点となる生態系をもつ惑星で、人はそれでも立派にいきていた。
よりあつまり、国をおこし、巨大ロボットを作って狂暴な野生動物たちに対抗する術をみつけていた。
主人公はそんなロボットのりのひとり、それもずご腕を持つといわれる竜狩りの一人である。
そんな彼が竜狩りのさなかに見つけた陸上空母の中にいた者は・・・
てな感じで始まるこの話。時期のせいか、永野 護のFive Star Stories(FSS)のにおいを感じた。
別にロボットが2人乗りだとかそういうわけではないのだが。
ロボットのりか常人の数倍の反射神経を持っている、だのそのロボットの修理工は数が少ないだの。
そんなたあいのない、ありがちな設定に、である。
最近FSSの新刊出たばかりだしねぇ。多分、そのせいだろうとは思うのだけれども。
話は比較的ありがち。設定もそう。わりと先が読める。まぁ、読めない
部分ってのも確かにあるけど。
ありがちな分安心して読める、てのはある。目新しさとか驚愕、てのがないかわりに。
あ、でも気に入った設定のひとつに、ロボットと竜の能力比較があった。
大きさ、防御力、破壊力、ともに竜のほうが上。
まともにやったら勝てないのだが、唯一ロボットが竜に勝てる能力がそのスピード。
機動力ではない。ロボットは音速を超えることが可能なんである。
亜音速で突っ込んできて振るわれる剣をさすがの竜も受けきれない、としている部分。
ここで竜の優位性が出ているし、単純な力押しにできないようになっている。
これはよかったな。うん。
電撃文庫刊行、時雨沢 恵一著「キノの旅U - the Beautiful World -」
なかなかの良作。次もよければTHE BESTに格上げかな。
前作と同じく、短編集のようなもの。キノと名乗る少女とエルメスという名のしゃべる二輪車
が色々な国を回って見聞きした見聞禄となっている。
時間の繋がりはなく、読んでいるだけでは地図は書けないようになっている。
前作もそうだったのだけれども、全体的に悲哀なイメージを強くだした作品でもある。
笑い、よりも哀しみのほうが強く感じられ、それ以上にブラックなユーモアを感じた。
A・ビアーズの「悪魔の辞典」に通じるものがあるのかもしれない。
意外と気に入ってしまったけれども、THE BESTに入れるには役不足かな、と感じてる
作品。
まぁ、実の所そんなに考えてTHE BESTを選んでるわけじゃないけど
富士見ファンタジア文庫刊行、星野 亮著「ザ・サードX 惑いの空の凶天使(ハーフウィング)」
今回のメインとなるイメージは「空を飛ぶ」と、作者自ら後書きで述べているのだけれども、
それ以上に感じられたのが「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」・・・ぢゃない、「機械知性体に魂はあるか?」という部分だった。
作名では機械も人間も、何かを求めて生きることには変わりなく、そういった面で魂は「ある」と断言はしているのだけれども。
ライトノベルならではの、ある意味論理の飛躍だな、ってゆーか、
どうして機械知性体が「生きる」という概念を持ちうるのか、というそもそもの部分がすっぽりと抜け落ちている。
暗黙の了解というか、そこまで考えるなということなのだろうけど。
あいも変わらず主人公は化け物じみた強さをもっていて、今回は「折れるはずのないカタナの刃を折る」という偉業をなしとげた。
カタナより硬いものを切るわ、レーザーを切るわ・・・むぅ。
謎の人物の動きも活発になってきて、別の世界からの技術をもってきたりして、話のスケールはどんどんでかくなっている。
「謎の人物」の正体は単なる「宇宙人」という気がしないでもないけど。
頼むから某小説みたいに主人公は何もしらず、ただひたすら目の前の「敵」をぶちのめす、てな展開にはしてくれるなよ(苦笑)
アレも終わってるよな・・・・・・
9日分とまとめての更新になる上に、本そのものは少し前に読んだもの。
ハルキ文庫刊行、笹本 裕一著「天使の非常手段 RIO@」
何年前になるのだろう?富士見書房の月刊誌、ドラゴンマガジン誌上でアイドルをコスプレさせ、
写真をイラスト代わりに笹本裕一が書いた小説の加筆・訂正版の復刻である。
コスプレっていたって、アーミースタイルで建物の影に身を潜めるだの、銃器を構える
だのとんでもなく怪しい代物だったのだが。
文庫にもなったのだけれども、それは読んではいない。さすがに食指が動かなかった。
で、懐古趣味ではないが、懐かしさで買った今回である。
らしい作品である、読んだ瞬間、あ、笹本裕一だ、と実感した。
うまく言葉に出来ないのだけれども、これが所謂「笹本節」と呼ばれているものなのだろう。
ン年前の作品であることを考えると、変わっていない、というべきか。
とはいえ、かなり手をいれたらしいので、そこはなんとも言えないけれども。
当時の写真をイラスト代わりにするか、と思いきや、漫画家の書き下ろしイラストが表紙になっていただけであった。
ハルキ文庫だからだろうか?ライトノベルにしてはイラストに力を入れていないのは
珍しいな、と。
朝日ソノラマ社刊行。加門 七海著「晴 明。[完全版]」
昔、ソノラマ文庫から3冊で出た話を一冊にまとめて&加筆での出版。今回初読である。
安部晴明といえば、陰陽師の代表格という認識があるのだけれども、近場の書店でフェアをやっていた。何かあるんだろうか?
話は青春物語、というべきか。一応オカルトの類の属するのだろうが、自己の正体に悩む青年の話といってよい。
どこまで史実をなぞっているのか、日本史はよく知らないのでわからないのだが、雰囲気はなかなかよかった。
平安京を舞台に魑魅魍魎が跋扈する状態の話なのだが・・・なんとなく、その頃って、本気でそゆのがいそうで(苦笑)
文庫3冊分が一冊の新書にまとめてあるので分厚くて、持ち運びが大変だったという認識だけが強かったりして。
イラストが末弥画伯のせいか、文章にはちゃんと、獣のような、とかやせほそった、とか書いてあるにも関わらず、
イメージされる安部晴明像ってのが、長身の美男子ってのは我ながら首をひねった。
表紙のイラストは凄惨美ともいうべき晴明の図、なんですけどね。
まぁ、ガリガリにやせて、その魂を闇に落して鬼と化し、貴族を襲っている時なんかは
あ、