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Dark Desire

 私は自分の人生を莉々奈さんによって救われた。だからこの身は、ただあの人のためにありたいと思い続けている。

 自身が開発したM3システムの力を使って魔物と対峙した際、恐怖を全く感じなかったと言えば嘘になる。でも、それで莉々奈さんが少しでも楽になれると思えば身体が竦む事は無かった。

 ファルケのイヤらしい責めによって陵辱されるのが辛くなかったと言えば嘘になる。人外の辱めを幾度も無く受けるうちに、白昼の群集が見守る中でも甘い叫びを上げてしまう様な淫らな身体になっていくのが恥ずかしくなかったと言えば嘘になる。でも、百合瀬財団の令嬢である莉々奈さんは私なんかよりも遥かに辛い思いを抱いていたはず。だから何度心身を犯されても戦いに挑む事ができた。

 莉々奈さんがファルケの手に落ちたと聞いた時に感じた絶望は果てしなかったが、それでも私は莉々奈さんの事を信じている。きっと莉々奈さんはファルケの与える辱めに耐え、救出される日を待ち望んでいるのだと。

 その思いに応えるため、私は前線に立ち続けた。次第に戦況は劣勢に陥り、ミネルヴァガードの皆も疲労は隠せなくなってきたけど、誰一人不満や不平を言う事無く、地上を明るい未来に導くために全力を尽くしてきた。

 ……でも、現実は甘くは無かった。

 連日連夜のファルケや魔物達との戦い。既に圧倒的な戦力差をつけられてしまった私は遂に戦いの最中にその意識を失ってしまい、次に気が付いた時には見知らぬ部屋の中にいた。

 寝心地の良い高級なベッドに横たわっていた私の両手と両脚には枷が嵌められており、自身の状況を即座に理解させてくれた。やがてその考えが正しかったと告げるかの様にファルケが現れ、その日から私はシンフォニックシュガーとして戦っていた時以上の恥辱の日々を送っている。でも、決して諦めたりはしない。私は莉々奈さんからも共に戦う事を許された正義の魔法戦士……絶対に悪に屈する日など、訪れさせたりはしないのだから……。

 物音一つしなかった薄暗い部屋に、コツコツという硬質的な足音が近づいてくる。いくらM3システムによって聴覚が強化されているとはいえ、あの男がその気になれば扉越しの物音など簡単に防音できるだろうに。自身の登場を露骨に伝える事で私の心を乱すつもりだろうか、本当に悪趣味な男だ。

 やがて扉の前まで足音が辿り着くと、近代的なデザインの扉が音も無く開け放たれて黒い影が姿を現す。

「やぁ、ご機嫌はいかがかな? シンフォニックシュガー。そろそろ俺としても、君とはもっと仲良くなりたいんだけどな」

 己の欲望の為だけに魔法を使い、莉々奈さんを傷つけ続けた許せない男――ファルケだ。その全身は彼が開発した強化スキンに包まれており、今では反撃はおろか抵抗すら難しい私の前に現れる時でも決して油断を解く様な真似はしない。今もおどけた風な口調で問いかけながらも、その立ち姿には一切の隙が無い。

「…………」

 この男相手に無駄に口を開いても、こちらには一切の益が無い。今までの経験上からそう悟った私は、ただ無言ながらも強い意志を込めた瞳でファルケを見据える。屈服の意思も融和の可能性も一切無い、強い敵意すら孕んだ視線をぶつけるが、ファルケの口元は邪悪な笑みに歪められる。

「フフフ。幾度と無く淫惨な陵辱に身を曝しながらもそれ程の瞳を保っていられるとは、さすがは魔法戦士といったところか。……でも、その姿じゃあ少し迫力に欠けるね」

「っ……」

 好色さを隠さない舐める様な視線に炙られ、思わず身体を震わせる。

 ……自分で言うのも恥ずかしいが、今の私はかなり扇情的な姿となっている。

 豪奢なベッドに横たえられたまま、抵抗を封じるために自由を奪われている両手両脚。この内下半身を拘束している枷は両膝に嵌められており、私の脚ははしたなくMの字に開かされ下着とストッキングに包まれた股間をファルケに見せ付けるような体勢を取らされていた。

 自らの意思に反する大開脚。それだけでも女の子としては唇を噛み締めたくなるほどの屈辱だが、ファルケが私に施した媚態はこれだけではない。

 今の私はM3システムの力を借りてはいるが、纏っている衣装はシンフォニックシュガーとして完全な物ではなかった。スカート、そして胸を隠してくれていたスーツの一部が存在していないのだ。

 ジャミング。

 私達がシンフォニックナイツとしての力を発揮するためのリンクシステムを妨害するためにファルケが使用していた魔法だが、その効果は私達の戦闘能力を弱体化させるだけでは無かった。リンクを遮断された私達は戦闘服を維持する事すらできなくなり、結果、私と莉々奈さんは何度も戦闘中にコスチュームを剥がされ、衆人の目に乳首や下着といった男に見られてはいけない秘密を曝しながらの戦闘を強いられてきた。

 魔法戦士としての戦闘能力を奪いつつ、同時に乙女の羞恥心を責め立てる。正にファルケにとっては一挙両得である魔法の効果に、今の私は完全に嵌まってしまっていた。かつてはM3システムに精通していた私ならば、戦闘が終わればジャミングのイヤらしい効果からは逃れられていた。しかしここがファルケのアジトだからか、それともファルケの持つ魔法技術が進歩したのか、その理由は分からないが私のスーツは隠したい部分だけを曝すかの様に半端に解除され続けている。そのため本来なら単に動きに支障が出るだけである頭の上で固定されている両腕も、戦闘服から飛び出している胸の先端の蕾を隠す事が許されず、私の恥じらいを弄ぶのに一役買っていた。

 正義のヒロインとしての意匠は残しつつも、女の子として大切な部分は全てファルケに見られてしまっている今のコスチュームは、ある意味全裸よりも恥ずかしく惨めだった。皆を守るためのシンフォニックナイツのコスチュームを淫らな装いに改造された怒りと悲しみの念を抱きながらも、しかし私の身体はほぼ無意識の内にファルケの視線から逃れるために捩る様な動きを見せてしまう。この様な真似がファルケを喜ばせるだけだと分かっていても、内より湧き上がる羞恥心に私の身体は揺れ動く。

「どうした、シンフォニックシュガー。そんなに腰をくねらせるなんて、早く気持ち良くして欲しくて我慢できないのか?」

「っ、ふぅ……」

 思わず口から出そうになった否定の言葉を噛み殺し、ファルケから視線を外し呼吸を整える。

 ……正直に告白するならば、今の私はファルケの言っている事を完全には否定できなかった。

 あの男の与える辱めは到底年頃の女の子なら受け入れられるものではなく、常に私に嫌悪感を与えてきた。……だが同時に、私の肉体がその調教に馴染みつつあるのもまた事実だった。

 初めてペニスを受け入れた時には全身を引き裂かれる様な痛みを感じたヴァギナも、今ではそれより遥かに太い触手を挿入されても、圧迫感こそあれ苦痛は感じなくなっていた。時にはファルケの手で、時には魔物の力を使った苛烈な淫辱から与えられる禁忌の快楽に必死に抵抗しながらも、最後には悦楽の絶頂へと押し上げられ高い嬌声を上げてしまう。それがここ最近の私の日常だった。

 今も精神を落ち着かせなければ、衣装からはみ出た乳首はジンジンとした疼きと共にファルケに見られたまま尖ってしまい、下着の奥の割れ目も物欲しげにひくつかせてしまっていたかもしれない。

 最早戻る事などできない程に敏感になってしまった私の身体。でも、だからといってファルケに屈するつもりなど微塵も無かった。いくら身体を汚され、快楽の渦に落とされようとも正義の心があれば立ち上がる事はできる。

 そうだ、私はシンフォニックシュガー。莉々奈さんのパートナーなんだから……。



「ふむ。こうして君の艶姿を見ているのも楽しいが、俺も暇じゃないんでね。本題に移らせてもらおうか」

 半裸となっている私を視姦していたファルケが一つ頷くと、再び足音を響かせながら私の寝ているベッドに近づいてくる。いったい今日はどのような辱めを受けるのか……脳裏に過ぎっては身体を熱く火照らせる過去の魔辱の記憶を歯を噛み締めてかき消しながら、油断なくファルケを見据える。

「さて、と。実は今新しい魔法を開発していてね。今日は君にその実験台になってもらう」

(魔法の実験台……)

 ファルケの言葉に思わず眉を顰める。今私の衣装を肌蹴させているジャミングを始め、様々な趣向を凝らした淫らな魔法を受けてきた身としては当然の反応だろう。しかしファルケはそんな私の反応すら面白いのか、マスクから覗く口が愉快気に吊りあがる。

「それじゃあまずは、君の大事な部分に触らせてもらうね」

「え……くぅっ、ン……」

 わざわざ宣言してから、ファルケの人差し指が私のアソコに添えられる。快楽を与えるための愛撫ではなく、本当に軽く指先を当てただけだというのに、私の口からはそれだけの刺激でも熱い息が零れ出る。

 もちろんその事に至近距離にいるこの男が気付かないはずが無いが、ファルケはニヤついただけで魔法の発動を開始する。ファルケの口から紡がれる呪文に魔力が呼応し、超常の現象を引き起こす。ジャミングによって機能の低下している私にはファルケの使おうとしている魔法の効果を予測する事ができず、ただどのような事態になったとしても平静だけは保とうと気を引き締める。

「ふむ……」

 魔法を完了させたファルケは私のアソコから指を離すと数歩後ずさり、腕を組んで私の方を眺め始める。

 こちらに視線を注いでいるという事は、やはり私の身体にイヤらしい変化をもたらす魔法という事だろうか。今のところ身体に異変は感じないが、相手はあのファルケだ。決して油断はできない。

「――菜々芭ちゃん」

「……え?」

 その時、私の右側から穏やかな声が聞こえた。

 それは私にとっては一番耳に馴染んだ声。私に勇気を与え、生きる希望を与え、そして生まれてきた意味を与えてくれた人の声。

 今自分が置かされている状況も忘れ、ほとんど反射的に声の方向へと視線を向ける。

「菜々芭ちゃん」

「あ……ぁ……」

 そこにいたのは、予想通りの人影。麗しきシンフォニックリリーの衣装を身に纏った莉々奈さんが、何時しか私の寝かされているベッドの傍らに佇んでいたのだ。

(え……これ、は……)

 久しぶりに見た笑顔の莉々奈さん。本来なら私も莉々奈さんと同じく笑みを浮かべるべきだと本能が告げる。でも理性は決して警戒を緩める事無く、事態を冷静に把握していく。

 私と同じく莉々奈さんもファルケに囚われているのだから、この場にいる可能性がゼロという事は無い。だが、いくら強化服の性能が落ちていてもこんな至近距離に近づかれるまでその存在に気付かないというのはおかしい。それにあの笑顔。今の私の姿を見て、莉々奈さんがあんな笑みを浮かべるだろうか。

 そんな私の疑問を感じ取ったのか莉々奈さんは、その可憐な唇に指を添えるとその女性らしい肢体を妖艶にくねらせ始めた。

「ねぇ……菜々芭ちゃんもファルケ様に、気持ち良い事してもらっていたんだよね……?」

「え? 莉、莉々奈さん……何を……」

 今までに聞いた事も無い熱っぽい口調で、莉々奈さんが俄かには受け入れがたい言葉を口にする。その表情は笑みと呼ばれる形のままだが、そこに勇敢な魔法戦士としての凛々しさは一切なく、まるで男性に媚びるかの様なふしだらな空気を纏わせていた。

「ファルケ様の大きなペニス、アソコやお尻の穴に入れられて感じちゃって……お口でご奉仕させてもらったら、それだけでアソコ濡れちゃうんだよね……」

 私の敬愛してきた莉々奈さんの全てを否定するかの様な甘ったるく艶やかな言動。そして私ににじり寄ってくるその姿から感じられる不自然な魔力。それらから一つの推測に思い至った私は驚愕の表情でファルケに視線を移す。

「ファルケ……まさか、これは……」

「あぁ、そうさ。本物のシンフォニックリリーではなく、俺が先程の魔法で作り出した幻像さ」

 まるで何を今更とでも言う様な口調で、肩をすくめながらあっさりと目の前にいる莉々奈さんの正体を明かすファルケ。だが私はその言葉を聞いた直後、あらん限りの声を上げながらファルケを睨み付けた。

「ふざけないでくださいっ! ファルケ、こんな莉々奈さんを侮辱する様な幻、一刻も早く消してください!!」

 このアジトに囚われて以来、これほどの大声を上げてファルケに詰め寄った事は一度も無い。

 自分が辱められるのならばまだ耐えられる。だが今もファルケに与えられる淫獄に懸命に耐えている莉々奈さんの幻を、こんな性奴隷の様な姿で発現される事には我慢ができなかった。

 恥ずかしい姿を見られる事で僅かに宿り始めていた淫らな熱を振り払いながら、強く真っ直ぐな視線でファルケを射抜く。だというのにファルケは、心底愉快だとでも言う様に肩を震わせて笑い始めた。

「フフ、そう言うがな。確かにそのリリーの幻は俺の魔法で生み出したものだが、それを願ったのは君自身だぞ、シンフォニックシュガー」

「え……? な、何を言ってるんですかっ、私が、こんなイヤらしい莉々奈さんを願ったなんて……」

「先程俺が使った魔法は、ダーク・デザイアと言ってだな」

 突如表れた淫らな欲望に堕ちきった莉々奈さんが、私の想いから生まれた。そんな言葉など信じられない私は首を横に振るが、ファルケは楽しそうに先程私の股間に触れさせていた人差し指をタクトの様に振るう。

「この魔法は対象者、この場合は君の普段は心の奥底に隠されている、邪な欲望を幻像として具現化するというものなんだよ。だから現れる幻像が性的にイヤらしい物であるのは俺の魔法の為だが、その姿がシンフォニックリリーの像を結んでいるのは――シンフォニックシュガー。君の心が望んだものなんだよ」

「そんな……う、嘘です……! こんな……こんなイヤらしい莉々奈さんを、私は望んだりしません!」

 ファルケの言葉を否定する声に必要以上に力を入れる。今の私にファルケの使った魔法の効果が解明できない以上、互いの主張は水掛け論になり、明確な真実を示す事はできない。

 ならば私にできる事は虚言を弄しているのはファルケであると信じ、自分は性欲に溺れた莉々奈さんなど求めてはいないと心に強く誓う事だ。

「そう……菜々芭ちゃんは、エッチになっちゃった私は嫌いなんだね……」

「え……」

 そんな私の決意を揺らがせる様に、今度は一転して哀しみの声が傍らから聞こえてきた。その顔を見ずとも容易く悲壮な表情を浮かべていると教える声色に、思わず莉々奈さんの幻影を視界に収めてしまう。

 自身の身体を両手で抱きしめ、辛そうに眉を下げるその姿はシンフォニックリリーそのもの。まるで先程の痴態だけが幻で、今ここにいるのは本物の莉々奈さんなのではないかとの錯覚を誘うほどに、私のよく知った姿だった。

「確かに菜々芭ちゃんが私の事を尊敬してくれていたのはよく分かってる……でもね、私だって女の子なんだよ? アソコや乳首をイヤらしく触られたらエッチな声が出ちゃって、大きく勃起したペニスを見たら心音が高まって……それってそんなにいけない事なの?」

「それ、は……」

 紡ぎだされる言葉に何も返す事ができない。

 私は莉々奈さんに一番近い場所で、彼女が魔物やファルケに弄ばれる恥辱に耐えながらも、その度に己の身体が肉悦に慣れ親しんでいく哀しみに沈む姿を目にしてきた。そしてそれは私も同じだ。同い年の少女に比べて身体の発育が遅れているにも関わらず、イヤらしい快楽だけはより敏感に甘受してしまう。

 今もきっと莉々奈さんは正義の心を胸に秘めながら、ファルケの与える禁断の快悦に抗っているのだとは断言できる。

 でも……でも、もしも莉々奈さんが本当に快楽に溺れてファルケの性奴になってしまったら、私は……?

 そんな今まで一度も考えた事が無かった、そして考えてはいけなかった質問が脳裏に浮かんでしまう。

「ねぇ……菜々芭ちゃんも本当はファルケ様の姿を見た時、ちょっとだけでも期待しちゃったんでしょう……? あぁ、今日もまた胸やアソコを触って気持ち良くしてもらえる……お尻の穴やオシッコをお漏らししちゃう姿とか、恥ずかしい所を見てもらえるって……」

「イヤ、イヤァ……私、そんなイヤらしい事、考えたりしません……」

「ずるいよ、菜々芭ちゃん。私だって本当は恥ずかしいのに、菜々芭ちゃんだからこそ告白できてるんだよ……? 菜々芭ちゃんは私に、本当は菜々芭ちゃんがどんなにエッチな女の子か教えてくれないの……」

「止めて……それ以上言わないでください、莉々奈さん……あ、はぁ……」

 自らを抱きしめる左手はそのままに、右手はスカート越しに股間を押さえながら両脚をモジモジとくねらせる。同性の私ですら心をかき乱される媚態を見せる幻像を思わず莉々奈さんと呼んだ直後、激しい自己嫌悪と同時に危険な妄想が胸の内を占める。

 もしもこれが本物の莉々奈さんからの問いかけだったら、私はどう答えたんだろう……?

(っ、そんな事、考えてはダメ……! これは本物の莉々奈さんじゃない……本物の莉々奈さんは、こんな事言ったりしない……!)

 妖しくも禁断の愉悦すら伴いかねない自問から逃れる様に、きつく瞳を閉ざし幻像から目を背ける。だが狡猾なファルケが、そんな逃避を許してくれる訳がなかった。

「いけないな、シンフォニックシュガー。正義の味方を名乗るのなら、自分の心とはちゃんと向き合わないとね。そんな態度を取っていたら、本物のシンフォニックリリーがどうなるか分からないよ?」

「っ、く、ぅ……」

 閉ざしていた私の目を開かせるにはその言葉だけで十分だった。私のせいで莉々奈さんに迷惑がかかる。それだけは耐えられなかった。

 ファルケの命令に易々と従わなければならない屈辱を噛み締めながら、私は再び淫らな莉々奈さんの姿を瞳に映すべく首を横に向けて瞼を開いた。

「え……なんですか、これ……」

 しかし目を開いた当初、私はそこに見えているものが何なのか理解できなかった。距離が近すぎた事もあるだろう。さっきまで莉々奈さんの幻はベッドの脇にいたはずなのに、私の焦点はすぐ目の前で結ばれていた。

(あ、これ……)

 だが数秒もしないうちに、私はすぐ目の前にあるものが何なのか理解できた。何せ私はすぐ近くから、それを見てきたのだから。

 ピンクのニーソックスに包まれた、細いながら柔らかさを兼ね備えた理想的な太股と綺麗な膝。そう、シンフォニックリリーのコスチュームを纏った莉々奈さんの脚だ。

「菜々芭ちゃん」

「え……きゃあっ!」

 頭上からの呼びかけの声に応じ、素直に視線を真上に動かす。途端、目に入った光景に思わず驚きの声が漏れる。

 私の視界を埋めていたのは付け根の向かう白い太股、ヒラヒラと揺らめくフリルスカート、そして乙女の一番大切な部分に張り付く薄桃の下着。

 間違いない。私が今見ているのはシンフォニックリリーの、莉々奈さんのスカートの中……。

 予想もしていなかった事態に驚き、色々と視線を巡らす。そしてようやく私は自分と莉々奈さんとの位置関係を理解した。

 ベッドに上がりこんだ莉々奈さんの幻像は両膝を私の頭の左右に置き、私の顔を跨ぐ位置で跪いていたのだ。無論そんな体勢で私が視線を上に向ければ、そのスカートの中身は全てが至近距離から丸見えになる。羨望の念を抱くほどに美しい太股も、莉々奈さんの香りが染み付いた桃色のショーツも……。

「ねぇ、菜々芭ちゃん。私のパンティ、どうなってるかな……?」

「っ……莉々奈さんの、パンティ……ですか……?」

 思わず魅惑の光景に見入ってしまっていたため、まるで咎められたかの様な思いに囚われてしまった私は素直に幻の言葉に従う。先程は陶然と見上げていたため詳細は分からなかったが、言われた通りにシンフォニックリリーの下着をよく見ると、それがどれほど麗しの乙女にとってふさわしくない代物なのかが分かってしまう。

 莉々奈さんの細い腰に纏われているピンクの下着は、普通のショーツに比べて明らかに小さく布地も薄い。戦いを主目的にしているために大胆な仕立てになってしまうという理屈は確かに分かるが、それでもやはり年頃の女の子が身に着けるには勇気のいるデザインだ。こうして着用しているだけでもお尻やアソコにピッタリと張り付き、少女にとっての羞恥の割れ目を布地に描き出している。

 莉々奈さんが憧憬の念を抱いているスイートナイツをモデルとしたシンフォニックナイツのショーツがイヤらしいデザインなのは、開発者である私が一番良く分かっている。わざわざ下着を真下から見せ付けて確認する事ではない。

 ……でもそれは、シンフォニックリリーだけではない。シンフォニックシュガーの衣装を纏い、更にはジャミングでスカートを消されている私もまた、ファルケに毎日恥ずかしい下着を見せつけてしまっているのだ。しかも今の莉々奈さんよりも、遥かにはしたない開脚ポーズを取りながら……。

(ン……ダメ……そんな事を考えちゃったら……アソコ、疼いてくる……ン、ぁ……あ?)

 今もファルケから好色な視線を向けられているのかとの想像に、思わず股間のクレヴァスが火照ってしまう。普段ならば死にたくなるほど屈辱を覚える秘悦を下着の奥に宿しながら、しかしだからこそ私は莉々奈さんの言いたい事が理解できた。

 今度は意識を集中し、幻ながらも莉々奈さんの下着を凝視するという初めての行為に頬を赤く染めながら、その薄布の恥丘部分をしっかりと見つめる。

(莉々奈さんの下着……濡れちゃってる……)

 見るからに柔らかそうな莉々奈さんのアソコに張り付いている下着には、一筋の染みができていた。ショーツの桃色をより濃く染め上げている、女の子の割れ目に沿った汚れ。それが秘裂より滲み出した愛液によるものだと理解した瞬間、心音がトクンと高く跳ね上がる。

 目の前にあるのが実体のない魔法による幻像だとは理解している。それでも香りすら漂ってきそうな近距離に、淫らな悦楽をその身に秘めている証拠を露わにしている莉々奈さんの下半身があるという現実が、次第に私の理性に甘く淀んだ靄を満たしていく……。

「ねぇ、菜々芭ちゃん……私のパンティ、エッチな汁で濡れちゃっているよね……?」

「は、はい……莉々奈さんのアソコの形の……染みができています……」

「うん、そうだね。じゃあ、何で私のパンティは濡れていると思う……?」

「え? それは、その……私が、すぐ近くから……莉々奈さんのパンティ、見てしまっているから、ですか……? あ、それって……ンゥ」

 自身が何をしているのか、何を話しているのか満足に理解できないまま進められる莉々奈さんの虚像との対話。その中で問いかけられた莉々奈さんが下着を汚すまでに興奮した理由に答えた瞬間、胸の中に妖しさを伴ったときめきが生まれる。

 本当に莉々奈さんが、他の誰でもない私の視線で興奮して、愛液を漏らすほど悦んでくれたなら私は……。

「残念。確かに菜々芭ちゃんにパンティ見てもらうのもドキドキするけど、愛液を漏らしちゃった理由は別なの……」

 だが幻影の莉々奈さんは、私の内心で抱いてしまった背徳的な想いを否定する様に首を横に振ると、スッとスカートの中に両手を差し入れる。その仕草だけで次に取る行動が簡単に予測できてしまった私は、食い入る様にスカートの中を覗き込んでしまうのを止められない。そんな私に微笑を投げかけた後、少しの間だけ立ち上がった莉々奈さんは滑らかな動作で濡れた下着を脱ぎ捨てると、再び私の顔を跨いで跪く。



「見て、菜々芭ちゃん……莉々奈のエッチなトコ、全部……ン」

「莉々奈さん……ふぁ……あ……」

 再び眼前に広がるフリルスカートの内部。だが今度は莉々奈さんの秘密を遮る布地は何も無い。私の鼻息すら当たるのではないかと思える距離に、剥き出しとなった莉々奈さんの下半身が曝け出されていた。

 性的興奮のためにうっすらと開きながら愛蜜を滲ませる秘唇。排泄のためにありながらも美しい桃色の肛穴。何度も淫惨な陵辱を与えられながらも莉々奈さんの二穴はその清楚な形を一切歪める事無く、しかし淫らな欲求を伝えるようにヒクヒクと魅惑的な蠢きを見せていた。

 芸術性を秘めながらも、生身の女性ならではの神秘的な美しさに目を奪われる。昂ぶりを抑えられない私の視線に答える様に莉々奈さんの陰唇もピクンと反応し、柔らかな太股に愛液が滴り落ちていく。

「ン、菜々芭ちゃん……私がこんなエッチな気持ちになっちゃうのは、全部ファルケ様のおかげなのよ……」

「え……ファル、ケ……」

 官能的な吐息を漏らしながら莉々奈さんが口にした名前に、私の記憶が揺り動かされる。それは憎しみを持って接しなければならない男の名。己の欲望のために他の全てを犠牲にできる魔法戦士の敵。

 ……だというのに、余りにも妖艶な莉々奈さんに魅せられた私が思い出してしまうのは全く違う記憶。指を尻穴に埋め込まれ腸壁を爪で擦られた時、日常では決して味わえない感覚に酔いしれてしまった。胸の先端を舌で丹念に舐め回された時、もう片方の乳首も刺激を求める様に硬く尖ってしまった。ペニスをヴァギナに差し込まれて激しく身体を揺さぶられた時、膣壁は精液を求める様に激しくペニスを締め付けてしまった。

 それらは平常時ならファルケに対する怒りと屈辱を思い出させる記憶。だが理性と本能が蕩け合いだした今では、私の身体に刻み込まれて消える事の無い悦楽の疼きを呼び覚ましてしまう……。

「ねぇ、菜々芭ちゃんは私が一番エッチになっちゃう所、知っているよね……?」

「え、それは……」

 未知の事柄を質問するのではなく、当然の事を確認するかの様な声色での問いかけ。曝け出された下半身の上に見える微笑に導かれる様に私は視線をそこに向ける。

「ン……莉々奈さんが、一番感じるのは……」

 私は知っている。莉々奈さんが何度となくペニスや触手で蹂躙され、本来の目的以上に快楽器官として目覚めさせられた秘唇以上に穿たれて感じてしまう肉門がある事を。

 それが私だけが知っている秘密でない事に少し哀しみと嫉妬を覚えながら、私は恥皺の集まる楚々としながらも物欲しそうに顫動する窄まりを瞳に映す。

 お尻の穴。本来なら排泄のための孔であり、女の子にとってはある意味ヴァギナ以上に弄ばれるのが辛い場所だ。だが私も莉々奈さんも魔が生み出す媚薬をも使用した調教により、たやすく淫らな疼きを生じてしまう快楽スポットへと開発されてしまっている。

 特に莉々奈さんは私よりも敏感になってしまったらしく、ファルケや魔物にお尻を執拗に責められて喘いでしまっている姿を、心ならずも何度も目にした事があった。

「うん、そう。私ね……お尻の穴が一番気持ち良くなれるの……ン、ぁ」

 正義の魔法戦士として以前に年頃の乙女としても恥ずかしすぎる告白をしながら、その細い指が私の見ている前で美尻の割れ目の更に奥、早く刺激を求める様に収縮を繰り返す菊門へと突き入れられる。私の視線を受けただけで悦ぶ様にひくついたお尻の穴は、まるでそれが本来の役割であるかの様に莉々奈さんの指をたやすく呑み尽くす。

「ン……ンァアアァアァァアアァア!」

 ロンググローブに包まれた中指が根元まで腸内に埋め込まれた瞬間、莉々奈さんは甲高い声を上げながら背を仰け反らせると、その股間から先程までとは比べ物にならないほど大量の愛液を噴出す。彼女がお尻の穴に指を入れただけで絶頂に達してしまったのは疑い様がなかった。

「あふぅ……莉々奈さん……んぅ? 愛液の……匂い……?」

 肛悦の極みに達した莉々奈さんを陶然と見上げていた私の鼻腔が、甘い愛蜜の香りを感じ取った事に首を傾げる。確かに眼前の莉々奈さんは絶頂に達し、そのクレヴァスからは愛液を垂れ零して私の顔にかけている。だが、これはあくまで幻影だ。実際に顔に滴り落ちる愛液からは熱さも匂いも感じない。だったら、何処から……?

「ハハハ。気付いていないのか、シンフォニックシュガー。だったら、少し分かりやすくしてやろう」

「え……ファルケ……」

 それまで余計な口を開く事無く観賞者として佇んでいたファルケが声を上げて笑うと、指をパチンと鳴らす。するとそれを合図に魔法が発動したのか、私の下半身を包むストッキングが不可視の力に破り裂かれる。

「きゃっ! ……え、ぁ……」

 私の素肌や下着は一切傷つかずにストッキングのみが切り裂かれた下半身へ、反射的に視線を向ける。そしてその状態を確認した私はファルケの言っている意味を理解すると同時に、激しい羞恥に心を揺れ動かされる。

 ストッキングを失い直接姿を現した私の下着は、淫らな粘液で熱く濡れてしまっていた。そう、さっき私が感じた愛液の匂いは、アナル絶頂を迎える莉々奈さんの姿に酔いしれた私が自分でも気付かないうちに漏らしていたものだったのだ。

 白く小さな下着に浮き出た汚れは先程の莉々奈さんの下着の染みよりも遥かに激しく、まるで下着を穿いたまま執拗に秘裂やお尻の穴を弄られた時の様だった。身体には一切触れられる事の無いまま、ただ愛しい人の幻影が見せる嬌態に興奮して愛液を垂れ流して下着を濡らした事。そしてその事実をファルケに気付かれ教えられた恥辱に頬を染める私に、しかし頭上の莉々奈さんは嬉しそうな顔を見せる。

「アハ……やっぱり菜々芭ちゃんもエッチな女の子なんだね……ン、アン……私が、お尻の穴でイッちゃう姿見て、そんなにパンティ濡らしちゃうなんて……くぅん!」

 濡れて股間に張り付き、莉々奈さんよりも小さな割れ目の形をくっきりと浮き彫りにしてしまっている私の下着を見ながら、再び肛門内に埋め込まれた指が直腸をかき回していく。指が抜かれる度に綺麗な菊穴がめくれてピンクの腸壁を見え隠れさせながら、先程よりも深い絶頂を迎えようと莉々奈さんは指を激しく突き動かす。

「ねぇ……菜々芭ちゃんも、お尻の穴熱くなってる……? 私みたいに、お尻の穴でオナニーしたい……?」

「イヤ……イヤァ……莉々奈さん、そんなイヤらしい事、言わないでください……そんな事言われたら、私も……ンゥ、あぁ……」

 口の端から零れる涎さえも美貌を彩る淫猥な化粧とする莉々奈さんからの問いかけ。その甘美な熱の篭った声が私の耳に届くたび、まるで莉々奈さんの言葉を真実にするかの様に私のお尻の穴は快楽を求めてジンジンとした疼きを放ち始める。痒みにも似た切なさを誤魔化そうとファルケに見られていると分かりながらも腰を振るが、もどかしい淫情はより激しくなり、下着では吸い切れなくなった愛液が私の脚を伝いベッドへと零れていく。

「あん、はぁ……それよりも、やっぱり菜々芭ちゃんは私にお尻の穴を弄ってもらいたい……?」

「え……?」

 唐突に投げかけられた言葉に反応し、反射的に瞳を合わせる。視界に映った微笑みからは、確かに淫靡な色を含みながらもどこか優しさも感じられた。

「あぁ、くぅ……私が、菜々芭ちゃんの可愛いお尻の穴を指でツンツンしてあげて……そして菜々芭ちゃんは、私のお尻の穴を小さな舌でペロペロ舐めちゃうの……んぅ! どう……想像しただけで、感じちゃわない……?」

「あ、そんな……私が、莉々奈さんと……お尻の穴をいじめ合うなんて……アゥ、ンァアアッ!?」

 余りにも背徳的で、それ故に一度捕らわれたら逃れられない禁断の妄想に、遂に私の口からも鮮烈な快楽の叫びが上がってしまう。

 今取っている体勢で、お互いのお尻の穴を責めて快楽を引き出しあう。そんな淫らな妄想を止める事ができず、私と莉々奈さんは脳内で大胆に絡み合っていく。

 私は莉々奈さんの肛門に口付けし、少しでも気持ち良くなってもらうために舌を差し入れて一番恥ずかしくて汚れた場所を丁寧に舐め解す……。そして莉々奈さんはそんな私を褒めてくれる様に濡れた下着の中に手を差し入れ、最初はマッサージする様にお尻の皺をくすぐり、少しずつ綺麗な指を私の腸内に埋めていってくれる……。

 私も莉々奈さんも、お尻の穴で気持ち良くなるのは恥ずかしい事だと分かりつつも、その羞恥心すら媚悦に変えて二人ではしたなくも同時に絶頂に達する……。

 そんな性奴隷同然の私達の姿を鮮明に想像すると共に、私の全身に錯覚の快悦が迸る。

 舌には未だ味わった事が無いにも関わらず、甘さと苦さの混じった莉々奈さんのお尻の味がこびりつく。私にとってはどんな美酒よりも舌に馴染むその味に、私の口端からも涎が滴り落ちていくのを止められない。そしてお尻の穴には、触手よりも遥かに細いにも関わらず、比べ物にならない位の悦びを与えてくれる莉々奈さんの指の感覚……。私の望みを叶える為に、優しくも激しい動きでお尻の穴を嬲られる私は舌での奉仕も忘れて甘い啼き声を上げてしまう……。

「ンゥッ! ヤ……ダメ、です……こんなの、恥ずかしいのに……このままじゃ、私……もう……あぁん!」

 眼前で繰り広げられる莉々奈さんのアナルオナニー。自らの脳裏を犯す卑猥な妄想。全身を犯されはしたなく絶頂に至った変える事のできない過去の記憶。愛液を垂らしながら腰を跳ね上げさせる痴態をファルケに見られているという羞恥心。

 それらが複雑に絡み合い、私の身体を単純にして原始的な開放感――絶頂へと押し上げていく。

「あ、ふぁああぁあ……こんな、莉々奈さんとイヤらしい事している姿なんて……考えちゃいけないのに……お尻の穴……どんどん熱くなって……莉々奈さん、に……あ、あぁああああぁあっ!」

「うん……うん、私も、お尻の穴、とっても気持ちいいよ……菜々芭ちゃん……ン、く、はあぁぁあああん!」

 一度指を完全に抜き去り、そして一気に根元まで腸内に差し込んだ莉々奈さんが再び絶頂の叫びを上げる。その艶めかしい姿に私の興奮も最高まで高まり、そして理性や意思が官能の渦に呑み込まれていく。

「ぁん……わ、私もイキます……莉々奈さんの、イヤらしい姿を見て……莉々奈さんと、お尻の穴を弄りあう姿を想像して……イキます……! ン、はぁ……あっ……くぅうぅうううううぅ!!」

 拘束されている背中を弓なりに反らし、失禁したかの様な勢いで下着から愛液の飛沫を撒き散らしながら絶頂に達する。視界は白く明滅し、脳には桃色の霞がかかり思考回路はまともに働いてくれない。ただハァハァと荒い呼吸をするだけの無防備な姿を曝しながらも、私の心身は今まで感じた事の無い深い絶頂間に満足しきっていた。

「フフ、どうだい。自分の本音と向き合った感想は?」

「ン、ぁ……ファルケ……ふぁ……」

 乱れていた吐息が落ち着いてきた頃、ファルケが私に近づき絶頂直後の痴態を見下ろしている。普段であれば即座に自分を取り戻し、不屈の意思を込めてその瞳を見返していた。

 しかし、今まで以上の強烈な絶頂に至った身体の媚熱は未だ治まらず、私は濡れて意味を成さなくなった下着とその下で淫猥に蠢く恥唇を見せ付ける様に、拘束されている以上に自分の意思で脚を開いて快楽の余韻に火照る股間を見せ付ける姿を取ってしまう……。

「随分と可愛らしくなったものだな、シンフォニックシュガー。ずっとその調子でいたならば、そのうち本当にリリーとアナルを弄りあえる日が来るかもね」

「あ、はぁ……本当に……莉々奈さんと、お尻の穴、を……ンゥッ、はぁぁあああぁ……」

 ファルケの言葉に再び妄想を刺激され、軽い絶頂に達してしまう。その様子を見て笑みを深めたファルケが去った後も、私は一人ベッドの上で身悶え続ける……。

「莉々奈、さん……私は、何があっても……莉々奈さんの隣にいます……だから、あぁ……」

 知らず口から漏れ出た言葉はずっと自分は変わる事は無いという決意なのか、それとも淫らな莉々奈さんを認めてしまった事への謝罪なのか。それすら理解できない程の心地良い気だるさに身を任せながら、私の意識は深い闇の底に堕ちていった……。



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