宇宙世紀の戦車論


U.C.戦車論……0079式戦車
※2000〜2004年にかけて執筆したものですので、MS IGLOOなんかで出てきた設定は反映されていませんのでご了承願います。

注)現用の戦車との混同を避けるため、宇宙世紀における61式戦車は0061式戦車、79式戦車は0079式戦車と記述します。 以後、単に61式、79式と記述してあった場合は現用の61式、79式戦車であると認識してください。

なぜ、地球連邦において0061式の後継たる新型戦車の開発が行われなかったのか? 本当に行われなかったのか?作品や設定に登場していないだけではないか?行っていたとしても不思議はありません。 というよりは行っていたと考えるのが自然でしょう。

0079の時点で0061年採用の0061式を使っていること自体時代遅れではないか? そう考える人もいるかと思いますが、現代の状況を見れば各国は1960年代前半に戦後第2世代戦車を採用/配備、 1980年代に第3世代戦車を採用/配備しています。(※1)
従って、0079時点で0061式が主力というのは時代遅れとは言えません。 どの国でも制式採用されてから数年のうちには後継車の開発を開始していますが、 それでも実際に採用/配備されるのは上記の通りです。今現在だって、各国は次世代の戦車の研究を行っています。(※2)

現代は国家間の対立があるので、新兵器の開発/配備に対して神経を使っているほうです。 しかし、地球連邦の場合、0060〜0079くらいの時期に地上戦を行う可能性のある敵勢力があるでしょうか? せいぜい内乱鎮圧程度しか頭になかったのではないでしょうか? であれば、当面0061式で事が足りると判断しても不思議はないでしょう。
実際に地上戦は従来兵器だけでも何とかなったと思います。序盤においてジオンが優勢を勝ち得たのは
・MSという新兵器を投入したのに対し、連邦は早急な対応ができなかった
・連邦所有の従来兵器がミノフスキー粒子撒布下での戦闘に対応していなかった
というのが大きなところでしょう。それが途中で(MS投入前に)膠着状態に陥ったのですから、
・従来兵器による対MS戦術
・従来兵器のミノフスキー粒子対策
が確立したのだと考えていいでしょう。
現代の戦車ですら各車の情報を互いにリンクさせるようなシステムがありますから、 UCではそれらの技術は更に進歩しているでしょう。 そういうシステムに依存すればするほどミノフスキー粒子の悪影響は増大します。 開戦初期の連邦がドツボにはまったのも当然といえます。

空中や宇宙での戦闘というのはその移動速度(数百〜数千km/h)のため、 レーダーのようなものを主体としないとまともな戦闘システムが成立しないのに対して、 (ミノフスキー粒子+MSはレーダーを無効化し、レーダーを主体としない戦闘システムを確立した) 地上戦の移動速度というのは数十km/hであり、これは肉眼でもなんとかできる速度です。つまり、
・宇宙、空中:索敵・戦闘は基本的にレーダーに依存、接近戦でのみ目視が有効。
・地上:索敵はレーダー&目視&その他(音響探知など)の併用。戦闘はレーダー&目視。
というシステムになります。また地上の場合、地形を利用した索敵(高台からの観測)や空中からの索敵なども有効なので 宇宙ほどMSの効果は大きくありません。

戦線維持には従来戦力で十分だとすれば、あとはどうやってその状況を打破するかです。 そこでMSの投入が効果的と判断されたわけです。この判断はごく自然であるといえるでしょう。

MSの登場によって戦争のやり方に変化が生じたにもかかわらず旧態然とした兵器の運用をいつまでも貫こうというのは、 「第1次世界大戦/第2次世界大戦で戦車や飛行機を(使おうと思えば使えるのに)使わない」といったことと同類です。 (使いたくても使えないのは除外) 但し、実際に戦火を交わすまではそういった立場が主流であるということも歴史上には多々例があり、 連邦のMSに対する立場もその一例でしょう。


閑話休題
一方、対MS戦車や対MS戦闘機は十分に実現可能だったと思われます。 Gブルは対MS戦車ですし、ガンタンクだって見方によっては対MS戦車です。 Gファイターやコアブースターは対MS戦闘機です。でもそれよりも対MS用MSを作るほうが確実です。 物量で勝る連邦ならば、ザクのデッドコピー品を量産しても戦争に勝利できたかもしれません。

GMというのはザク+対MS戦能力+連邦の独自技術というコンセプトに基づいて作られたと見るのがいいでしょう。 従って、「ザク相手でパイロットの技量が同等の時、1対1で互角以上の勝負ができる」 というくらいの性能は狙って開発してきているはずですし、ガンダムの性能からして技術的に不可能なレベルでもありません。 ネックになるのはコストや生産性、稼動率、メンテナンス性といった要素のほうでしょう。

連邦は後発ですからパイロットの育成(パイロットの技量)の面では全体の平均を見た場合、 ジオンより劣っていたと思われます。(個々を見れば優秀なパイロットがいたことは間違いない) その劣った部分を補うのが教育型コンピュータやビーム兵器の採用という点であったり、 物量で押しまくるという戦術ということになるのでしょう。


MSの地上戦に関する私の考察は以下の通り
(注:対抗=攻撃&撃破という意味ではない。これができるかどうかというのは別の話)

・連邦軍の戦車(0061式)
仮想敵:不明……0061式と同等の戦車としておきましょう。
対空能力:不明(皆無ということはないでしょう)
対MS:考慮されていない。(全く対抗できないわけではない)
ミノフスキー粒子対策:なし(開戦後に対応した可能性大)

・ジオン軍MS(ザク:陸戦用)
仮想敵:連邦の陸戦兵器全般
対空能力:あり(但し十分とはいえない)
対MS:あり(但し十分とはいえない)
ミノフスキー粒子対策:あり

・ジオン軍戦車(マゼラアタック)
仮想敵:連邦の陸戦兵器全般
対空能力:低空の航空戦力(攻撃ヘリや地上攻撃機)に対抗可能
対MS:不明(一応考慮はされているものと思われる)
ミノフスキー粒子対策:(おそらく)あり

というわけで、0061式戦車が対MS戦を考慮されていないのに対してMSは対戦車戦が考慮されている。 (されていなければそもそも地上戦への本格的投入自体がありえない)この1点だけでもMSの優勢は確実です。 マゼラアタックは0061式よりは後のものでしょうから、対0061式は想定済。 これに対して0061式の対マゼラアタックはおそらく未想定。 後から出現した兵器が従来の兵器への対抗策を講じるのは当然のことです。
逆に既存の兵器はそれ以降に登場する兵器への対抗策がなくても仕方がない。 (一応将来を見こんで開発するわけだけれども、後発のものはそれを知った上で開発するんだから)

また、ミノフスキー粒子への対策の有無も大きなポイントです。 しかし0061式対マゼラアタックは同数ならマゼラアタック有利でしょうが、数で勝負するなら0061式でもなんとかなるでしょう。 後発のマゼラアタックのほうが様々な点で有利なのは確かでしょうが、だからといって0061式より優れていると決まったわけではないし、 ましてや無敵というわけでもありません。

ザクとマゼラアタックに関しては
・ザクと互角又はマゼラアタックのほうが戦力として有効
→地上戦にザクは不要。
・ザクのほうが戦力として有効
→マゼラアタックは不要。
となるはずなので、両方が混在している理由として考えられるのは
(1)MSの数が足りないので、マゼラアタックで数的劣勢を補っている
。 なぜ数が足りないかの理由はコスト高、パイロット不足など理由は色々考えられる。
(2)MSは地上でも色々と役立つので便利だから使っている。
(いわゆる巨人ですから工兵、人足代わりに使用するというだけでも貢献度大)
だが戦車に対してはあまり分がよくないので、マゼラアタックで支援している。
(3)実はマゼラアタックは連邦製兵器でそれを鹵獲して使用している。
連邦にマゼラアタックが配備されているという話は聞かないので(3)の可能性は低いでしょう。 (1)(2)の方が妥当です。

私的には(1)と(2)の両方の理由によるものだと思います。 巨大人型ロボットは戦闘用兵器としてではなく、作業用機械として非常に便利だと思うし、 それが戦闘「にも」十分に耐え得るものであるならば言うことなしでしょう。 でもやはり戦車に比べたら高価でしょうし、整備や修理にも手がかかるでしょう。 また、MSのみでは戦線は構築できないというのも事実でしょう。 現在の地上戦が戦車のみで成立しないのと同様、宇宙世紀の時代においてもコンバインド・アームズの考え方は通用すると思われます。 その中でMSが主力(中軸)となるか、支援・補助戦力の一つとなるかは別の問題です。


まとめ
・0079年の時点において0061式戦車を使用しているのは決して時代遅れではない。
・ミノフスキー粒子撒布というのはレーダーに頼りきりの宇宙戦では絶大な効果を発揮するものの、 地上戦ではそれほどの効果を発揮しない。
・0061式戦車がマゼラアタックやMSに対して劣勢なのは、それらが後出故に対0061式を考慮した兵器であるのに対し、 0061式は(少なくとも戦争序盤には)それらへの対抗策が考慮されていない(当然)からである。 故にこれをもって「MSは戦車より強い」という結論は導出できない。


地球連邦軍0079式戦車(案)
対MS戦闘能力を有する戦闘車両。0079時点での連邦の技術で実現可能なものを考慮する。

基本コンセプト
・MS及びマゼラアタックを仮想敵とし、これに対抗できる武装、装甲、機動力を有する。
・ミノフスキー粒子対策を考慮する。
※砲弾の貫通力に関しては良く言われる「HEATの貫通力は弾径の5倍」説を基本的なリファレンスとして計算します。 運動エネルギー弾の場合は弾着時の速度がエネルギーとなりますが、これをここでの計算に持ちこむのは問題があるので、 HEATと同等として考えることにします。

(1)武装
a.主砲
現用戦車は120mm砲(40〜50口径)(砲身長約6m)。0061式は150mm砲2門。

まずは0061式の150mm砲でMSに対抗できるかどうかですが、MSが800mm相当以上に相当する装甲厚を持っていたらほぼ不可能でしょう。 これが本当に単純な装甲だとしたら800mmは1/100で8mm、1/144で約5.5mmです。どうでしょう?(プラモデルでも見て想像してください) このことから単に分厚い装甲を装備しているという可能性は却下です。従って、薄くて頑丈な装甲材が存在するということになります。 (ルナ・チタニウムがそれだということになってはいますね)そこで別口のアプローチを。

(a)ザクバズーカは240mmか280mm砲弾です。ガンダムのシールドはこれで破れるのですから、装甲厚は1200mm〜1400mm相当以下ということになります。 ちなみにジャイアントバス(360mm)ならば貫通+破壊です。なお、シールドは本体装甲よりも厚く作ってあるものと思われます。

(b)ガンダムの装甲は0061式戦車の150mm砲が1000mの距離で直撃しても大丈夫という設定があります。距離が書かれていることからしてこれは運動エネルギー弾に対する話でしょう。 これは1000mでは化学エネルギー弾より運動エネルギー弾のほうが貫通力が高いと見ることができ、故に化学エネルギー弾が直撃しても大丈夫と言うことです。 すると単純な装甲厚換算で750mm相当以上ということになります。

(c)もうひとつ、マゼラアタックの主砲なら同じところに2発当たるまで大丈夫という設定もあるようです。(これは私自身は未見) すると875mm相当以上1750mm相当以下ということになります。

以上よりガンダムの装甲厚は1000mm相当程度と推測されます。従って200mm以上の砲であればHEAT弾で破ることができます。 しかもこれは装甲の厚いことで有名なガンダムの場合です。 ザクの装甲は比較にはならず、ドムやゲルググで同等といったところでしょう。
故に主砲は240mm砲(40口径くらい)(砲身長10m)とする。
当然、自動装填装置を装備。かつ次弾装填のために砲身位置を戻す必要がない。 (これは自動装填に限らないのだが、砲身を水平に戻さないと次弾を装填できない砲というものが第二次世界大戦の頃までは多数存在した。当然、連射性は落ちるし、角度の補正も毎回やりなおすことになるので効率の悪いこと極まりない) この時代の技術であれば手動に劣らない信頼性・速射性を有することが可能と思われます。 #ガンキャノン・ガンタンクは勿論のこと、0061式も連装砲であることからして自動装填(装填手二人は乗れないでしょう)。 マゼラアタックも飛行時には一人で操縦・射撃を行っていることからして自動装填。 従って性能的には十分実用レベルに達していると判断できます。

戦車なら使用は地上戦のみとなるので宇宙での使用は考慮する必要がなくなる。 従って、反動の大きな通常火砲(=弾速が速い=運動エネルギー大=破壊力増大)を搭載可能。 MSを攻撃することを想定すると、仰角を大きく取れるようにしておくのがいいでしょう。
地上戦のみということから光学兵器(ビーム、レーザー)はとりあえず除外。 MS携行のビーム兵器が実現できるのだから実現自体は不可能ではないはずですが雨や霧で威力が低減してしまうだろうから、ダメージの確実性に劣る。 乾燥した気候帯(砂漠とか)であれば効果的に使えるかもしれませんが、温帯や熱帯では主兵装にはなりえないと思われます。

b.対空(というより対上方)攻撃用
60mm機関砲1門。ガンダムの頭部に搭載されている60mmバルカンでも至近距離ならザクを撃破可能なようですし、 マゼラトップやドップの破壊も十分可能なようです。従ってこれで十分かと。

c.その他
擲弾筒は必要と思われる(近接防御用&煙幕用)。

(2)装甲
対MSということで上面装甲を強固にする必要あり。勿論、対AFVを考慮すれば正面、側面は従来と同等の装甲が必要。
※ちなみに戦車は自分自身の主砲に耐え得る装甲を有するというのが現代の通説です。 この通説が宇宙世紀にも通用するものかどうかはわかりませんが、これが破れたときに戦車が地上戦の主力の座を降りると私は思っています。 (海戦における戦艦が廃れたのもこれと似たような理由によるものと思われる) 湾岸戦争では米軍のM1戦車の同士討ちがあったそうですが、これによって損傷した車両はあったものの、撃破された車両はなかったとのことです。

MS出現後はともかくとして、0061式開発当時では上記の通説はまだ健在でしょう。 従って、0061式の正面ならびに側面装甲は150mm砲の直撃に耐え得るものであると推測します。 マゼラアタックの175mm砲搭載も0061式の装甲を破ることができるようにしたと考えれば自然です。

装甲素材に関してはMSがあの大きさであの質量なわけですから、
a.軽くて堅固な装甲素材が存在するか
b.MSは装甲による防御力は戦車に及ばない
のいずれかということになるでしょう。

ザクの装甲に関しては超硬スチール合金とか超高張力鋼という記述があります。 これがどの程度の強度の装甲であるかは知る由もありませんが、至近距離であればガンダムの60mmバルカンでも何とかなるような装甲です。 一方、ガンダムはザクの120mmマシンガンでは太刀打ちできない装甲を有しています。 ガンダムは0061式戦車の150mm砲が1000mの距離で直撃しても大丈夫という設定が(真偽は別として)あります。 これを真とすれば結構な装甲です。戦車並もしくはそれ以上の装甲と考えていいでしょう。 このことからザクの装甲はb.ガンダムの装甲はa.であると推察できます。

ザクの主兵装:120mmマシンガン、280mm(240mm?)バズーカ
マゼラトップの主砲:175mm無反動砲

バズーカ(ロケットランチャー)にせよ無反動砲にせよ、運動エネルギー弾を撃つのには適していない火砲です。 ザクの120mmマシンガンは宇宙空間で使用していることから察するに無反動砲のようにも思えますが、なかなか見るものを悩ませてくれる兵器であります。 いずれにせよ、宇宙で使用する以上、反動は最小限に抑えられているはずで、運動エネルギー弾を使用するには適していません。 すると、化学エネルギー弾が使用されている可能性があります。弾をばら撒くようなマシンガンにHEAT弾を使用するというのはかなり無理(無駄)があるのでマシンガンに使用しているのは単なる炸裂弾(榴弾)の可能性が高いでしょう。 とすれば装甲に対しては殆ど効果なし。ガンダムにザクのマシンガンが通用しないのも納得。宇宙空間では外装にちょっとした傷がついても空気漏れなどの効果があるので、榴弾でも十分なのでしょう。 地上では榴弾だけでは装甲車両に対抗できないので、徹甲弾を使用できるような通常火砲が必要。 同じザクマシンガンでも地上用と宇宙用では別物と考えたほうがいいのかもしれません。 あるいは「装甲の薄い上面に対する攻撃なので榴弾でも何とかなった」とか「ザクマシンガンは対装甲車両用の兵器としては用いられなかった」という可能性もあります。 足装備のミサイルポッドなんかは対戦車兵器としては効果的だったんじゃないかと思います。(誘導ができないのでミサイルじゃなくてロケットが正解ですが)

なお、前述の通りHEAT弾の装甲貫徹力は弾径の5倍というのが現時点でのおよその目安です。(100mm砲弾なら500mmの装甲を破れるということ)
#各種技術的改善で将来的には最高(好条件)で10倍くらいにはできるのではないかと予想されているようです。 但し、これはあくまで均一素材による金属装甲に対する話です。 現代の主力戦車に使用されているような複合装甲(鉄鋼・アルミ合金・チタン・セラミック・ケブラ−・ナイロン・etcを使用)や空間装甲の場合、HEAT弾の効果は大幅に減衰します。

装甲を運動エネルギー弾と化学エネルギー弾という性質の異なる2種類の砲弾に対応するのは結構難しい問題でして、現在でも各国は頭を悩ませています。 (英チャレンジャーや韓国八八式は対HEAT、仏ルクレルクや日90式は対APらしいです。米M1は当初は対HEATだったのですが、途中から劣化ウラン装甲装備で対APに転換してます。なお現状では対AP弾装甲でも十分な対HEAT弾特性を出せるらしいので、今の主流は対APになっているようです。) MSやマゼラアタックの火砲が徹甲弾向きでない(徹甲弾の性能を十分に発揮できない)ということであれば、徹甲弾への耐性を無視もしくは軽視し、装甲を対HEAT主体にすれば装甲防御力を大きく向上させることが可能でしょう。

(3)射撃統制装置
距離測定は現代と同じレーザー測距儀で問題無いでしょう。 自衛隊の90式戦車がAPFSDS弾を使用した場合、距離2000mぐらいで20cm四方のターゲットに90%の確率で命中するそうです。 これを実現するために、現代の戦車は相当量の電子設備を搭載しています。 電子機器はミノフスキー粒子の影響を受けることになってますが、それを言ったらMSはどうやって動いているのか?という話になります。 (本当に純機械式のものしか動けなくなってしまいます)従って、車載用の電子機器に関してはシールド技術が確立していると考えていいでしょう。 0061式ではシールドが不十分だったのかもしれません。

あとは完全自動追尾式砲塔でしょうか。主砲安定装置は現在でほぼ完成の域に達しているのでこれもあともう一歩というところでしょうか? 現状ではターゲット追尾にレーダーを使用していますが、ミノフスキー粒子下ではレーダーはNG。(0061式はレーダーを利用した射撃管制装置を装備していたと考えられる) どういう方式でやるかは思案のしどころですが、有力なのは画像認識です。ガンタンクの主砲でドップを撃墜できるのですからこれも何とかなると考えていいでしょう。

そしてやっぱりこの時期の連邦の新鋭兵器なのですから「教育型コンピュータの搭載」を考慮するべきでしょう。 ターゲットの移動速度や距離に対する予測・補正に対するデータの流用ができるのではないかと。

(4)駆動装置 動力源として核融合エンジンを搭載します。かなり古い資料によるとコアファイターの出力が12000馬力のようです。(最近の資料と比較するととってもおかしなことになってしまうのですが……) #∵12000馬力=約8826kW。ザクのジェネレータ出力が1000kW弱だものなぁ……MSって1500馬力程度で本当に動くのか? 昔の何万馬力とかいうほうが信憑性ありそう。 コアファイターは双発なので1基あたり6000馬力。現用戦車のエンジン出力が1500馬力、重量約50トン、1トンあたりの馬力は約30馬力。 これで最高速度が60〜70km/hくらい。ですから、コアファイターと同等の核融合エンジンを搭載すれば出力は4倍。 重量が倍になっても現用戦車以上の機動性は維持できるものと思われます。 (実際には接地圧の問題なんかもあるのでそれほど単純ではないでしょうが、コアファイターのエンジンって結構小さいので戦車に搭載するならより大型、高出力のエンジンが搭載できるものと思われます。6000馬力は最低ラインとしてみています)

可能ならばキャタピラ、ホバー併用がいいでしょう。 通常移動時はキャタピラ、起伏の激しい場所や泥湿地帯の移動はホバーとか。キャタピラとホバーのどちらのほうが移動が速いかは不明ですが、整地された平地を進むならキャタピラの方が速いのではないでしょうか? ドムが熱核ホバーによって従来のMSよりも高速移動しているせいもあって、どうもホバー=高速のイメージがありますが、実際問題としては、路面状況に左右されないという程度に考えたほうがいいでしょう。 ホバーに関してはエレカ/サムソン/ビッグ・トレーと大小様々な車両に利用されているので戦車への流用は十分可能と推測します。 でもホバーでは静止できないし、埃煙を巻き上げてしまうというのもよろしくありません。その辺りを考えても、ここはやはり併用です。

(5)索敵装置
ガンダムの世界において一番厄介なのが索敵です。ミノフスキー粒子下ではレーダーがまともに使えない、赤外線も大幅に減衰されるという設定ですので、使用できそうなものは
・画像認識
・音響探知
くらいでしょうか? 画像認識(カメラ)に関しては電子機器は使用できないのでは?という疑問もありますが、ではMSのカメラはどうなのかということになります。まさかカメラからコクピットまで純粋に光学的な機構(鏡やレンズ)だけで処理しているわけではないでしょう。 どこかで電気信号に変換して処理が行われているはずです。従って、これもやはりきちんとシールドされていれば使用できるものと思われます。 音響探知のほうは08小隊でもやってました。混戦でどこまで使えるかが問題ですが、ないよりはましでしょう。最後にして最も重要なのは乗員の目視です。結局はこれに尽きます。
なお、
「MSは背が高いから敵を発見しやすくて有利」
「MSは背が高いから敵に発見されやすくて不利」
の議論に関しては1対1であれば、メリット/デメリット相殺してもいいと思いますが、多対多の場合にはデメリットのほうが大きい(MSが不利)と思われます。 20m前後では高さのメリットはそれほどないでしょう。

(6)その他
a.乗員
1−2名。砲塔は無人にして車体のほうだけに乗るようにしましょう。 (主砲の大型化→砲塔の大型化→車体の大型化となるので、砲塔を無人にすることで砲塔の大型化を抑制、結果として車体の大型化を抑制する) MSが1人で操縦できて戦車が1人で操縦できない道理はない。(どう考えても戦車のほうが単純) それでも2人としてしまうのは、現代の複座戦闘機のように、火器管制やなんかを専任で行えるようにするため。 1人でも十分操縦可能だが、実力をフルに発揮するには2人必要ということにしておきましょう。 2人いれば索敵も前後をカバーできるし、主砲と機銃で同時に別目標を攻撃することもできます。

b.サイズ
3種類を検討してみました。どれも一長一短あります。

●TYPE1(STANDARD)
全長(砲身含まず)は12mくらい。全幅は現用と同じくらいとして3.5〜4m。全高は現用に+αして3〜3.5mくらい。 (上面装甲を厚くするからには高くならざるを得ないでしょう)(現用戦車との容積比1.5〜2倍) 現用戦車が一回り大きくなった感じでしょうか。

これは市街での運用をも考慮した場合。要は道路の幅やなんかも考えなくてはいけないということですね。 (現用戦車の幅は鉄道輸送することから決められている場合が多いようです。日本の場合61式までは通常路線での輸送が可能だったようですが、74式、90式は不可能だそうです。一応新幹線を利用すれば鉄道輸送は可能だとのことですが・・・) 砲身が長くなる分、全長が長くなるのは避けられないものとしても、全幅は道路の幅の問題などがあるので3.5m(現用戦車と同等)がほぼ限界。 全高についてもやはり立体交差などの問題があるでしょうから3m以下でないと厳しい。(現用戦車は2〜2.5m) 0061式が150mm砲搭載というのも、このサイズ制限から考えると納得いくかもしれません。 逆にサイズに固執しなかったマゼラアタックはああなったと。

●TYPE2(LARGE)
全長15〜16m。全幅5〜6m。全高3〜4m。(現用戦車との容積比約2.5〜4.5倍)
これは上記の道路事情を一切考慮しない場合。容積的にはMSと同じくらいになります。 対MSですからこういうのもありでしょう。 ただ市街地での運用が不可能かというと決してそんなことはなくて、MSと同じくらいには運用可能でしょう。 (道路の舗装をボロボロにして、道路わきの建造物を破壊し、立体交差やなんかも破壊して走行するということです) ビッグ・トレーみたいな兵器もあるわけですから、こういうのがあっても不思議ではありません。 マゼラアタックなんかはこの部類に入りますよね。

●TYPE3(COMPACT)
サイズは現用戦車と同サイズ。砲身が長いのでその対策として砲の基部を車体後方に設置。 砲塔を旋回させるとバランスが崩れるのでその点だけ要注意。(後方だと俯角もあまり大きく取れなくなる) これは現用戦車と同サイズにした場合どうなるか?というコンセプトに基いたものです。 旋回砲塔は難しそうなので、あまりメリットはないかもしれません。旋回砲塔だとSP2000のようなスタイルになるでしょう。 それよりはStrv103(俗に言うスウェーデンのSタンクのこと)のような無砲塔スタイルでしょう。 全高も低くできますし。(そんな感じの次世代戦車が各国で研究はされているようです) マゼラアタックだって旋回砲塔じゃない。ホバーにして高い旋回能力が得られるならば有効かもしれません。

※ちなみに普通のMSは「市街戦」は可能だけれども、「市街地での運用」はできないと思ってます。 だからプチモビとかリーア35とかが存在するのでしょう。 MSが運用できる都市設計をするなら話は別ですが、その場合はTYPE2の戦車も十分に運用可能ということです。

コアファイターがあのサイズで核融合エンジン2基(しかもジェット/ロケット両用?)にミサイル、教育型コンピュータ内蔵ですからこのサイズで問題ないでしょう。

c.重量
現用戦車が50トンくらいだから……と考えると、TYPE1が70〜100トンくらい、TYPE2が100〜200トンくらいでしょうか。 MSと比べて重いのはそれだけ装甲に費やしていると考えていいでしょう。ただMSの重量を考慮すると、軽量かつ便利な材料(装甲に限らず)が実用化されているものと思われます。 TYPE2がMSと同等の容積なのですから、単純に考えればこいつがほぼMSと同程度の重量になってもおかしくないでしょう。 しかし、これでは重すぎる。ここが最大のネックです。(前述のとおりエンジン出力が向上しているので重量当たりの馬力は問題ないでしょうが、接地圧の問題なんかもあるので何ともいえない) TYPE3ならかろうじて50トンクラスに抑えられるか?


おまけ:歩兵の対MS戦闘
対戦車ミサイルでもMSの破壊は可能です。問題は何発当てればいいのかでしょう。 対戦車ミサイルというのは一発命中しただけでは戦車すら(大抵の場合)破壊できません。 運がよければ砲弾が爆発して戦車を破壊できるでしょうが、対戦車ミサイルとはそんな運任せの兵器ではありません。 今日の対戦車ミサイルの弾頭はHEAT弾です。命中した後、爆発のエネルギー(圧力)で発生した高速のジェット噴流で装甲に穴をあけ、更にその内部にも噴流を撒き散らすのです。 従って、砲塔に一発命中し、装甲を貫通できれば、砲塔内にいる車長、砲手、装填手あたりはほぼ確実に負傷/死亡します。(運転手は無事かどうか運次第といったところでしょう) その結果、一撃で戦車を「無力化」できるのです。ところが、MSの場合、この「一撃で無力化」が難しいのです。 手や脚に当てたところでパイロットは死にません。一発でコクピットに直撃を与えられれば問題ありませんが、戦車の砲塔に比べたら目標としても小さく、そう簡単に当たるものではないでしょう。 しかし、一撃で戦闘能力を奪えなければMSの反撃を食らうだけです。ただ一つだけ、一撃必殺の狙いどころがあります。 MSのエンジンです。しかし、この場合には攻撃した歩兵も生き残ることは不可能と考えたほうがいいでしょう。 野戦であれば、対戦車地雷などで脚部を破壊し、動きを止めた後にコクピットを狙うというのが定石でしょうが、脚歩行式であるMSにはあまり地雷は有効ではないんですよね。 ホバー走行されたら殆どお手上げ。(別にMSに限らず脚歩行式ならどれも同様。キャタピラや車輪は常に地面に接しているからある程度の密度で地雷を撒布(設置)すればいいが、歩行式の場合、足を下ろした場所に地雷がなければいけないので、撒布(設置)の密度をかなり高くしなければならない) 従って野戦ではMSを倒そうなどど思わないほうが歩兵のためではあります。市街戦なら建造物などを利用してMSのパイロットに気づかれないようコクピットの至近に近づくことができるので、歩兵にもかなり勝ち目が出てくるでしょう。結果だけ見る限りでは今の戦車と歩兵の関係と一緒ですね。


補足

※1 1960〜1980頃の各国戦車開発状況。採用年、開発着手年は資料によって微妙に異なっていたりしますので「だいたいこのくらいの時期」と見ておいてください。

○は1960年代初頭に正式採用された戦車
●は1979年時点で主力と思われる戦車
△は1979年時点で配備はされているが主力にはなり得ていない戦車

日本
61式(1961年採用)1955年開発着手○●
74式(1974年採用)1964年開発着手△
90式(1990年採用)1977年開発着手

ドイツ
レオパルド1(1963年採用)1956年開発着手○●
Kpz70 1963年開発着手→1969年開発中止
レオパルド2(1979年採用)1969年開発着手

アメリカ
M60 1956年開発着手
M60A1(1962年採用)○●
M60A3
MBT70 1963年開発着手→1970年開発中止
M1(1980年採用)1971年開発着手

イギリス
チーフテン(1961-1962採用)1950年代初頭開発着手○●
MBT80(?)
チャレンジャー(1980採用)

フランス
AMX-30(1960年代前半採用)○●
AMX-32(?)
ルクレール(1990年代初頭採用)1964年開発着手

ソビエト/ロシア
T-62(1960年頃採用?)○●
T-64(1960年代後半採用?)●?
T-72(1970年代初頭採用?)●?
T-80(1976年採用)△
T-90(1990年代初頭採用)

ドイツのKpz70とアメリカのMBT70は同一のもの

※2 現在、自衛隊は74式の代替である40トンクラスの戦車を開発中とのこと。 但しこれが第4世代と呼ぶに値するものかどうかは不明。

※仮想敵とは、言葉通り、仮想の敵のことです。明確な敵対勢力がある場合にはそこがまず第一の仮想敵です。 また、現状で国家関係が友好的であったとしても、近隣諸国は仮想敵として見るのが普通です。 隣の国が新兵器を配備した時、同盟国だから安心とみるのではなく、同盟国といえどもその新兵器への対抗策を打っておくということです。 統一国家ができて、どうにも仮想敵を設定しようがないという可能性がありますがその場合は自国の兵器を仮想敵とみなして新兵器の開発を行うことになるのではないでしょうか?

※口径(口径長)について
銃器における口径はそのまま銃口(銃弾)のサイズを意味しますが、火砲においては砲身の長さのことを口径といいます。(紛らわしいので口径長という場合もあります) この口径とは砲身の長さが砲口の何倍であるかを示しており、数字が大きいほど砲身が長いということになります。戦車砲などでもこの表記がされます。例えば同じ75mm砲でも
L24(24口径:砲身長1.8m)
L43(43口径:砲身長3.225m)
L48(48口径:砲身長3.6m)
L70(70口径:砲身長5.25m)
の違いがあります。一般的には砲身が長いほうが砲としての威力は高くなります。 但し、長砲身は加工が難しいですし、砲身の重量も増えます。砲弾の装薬も増やしてやらないといけません。 すると発射時の爆圧も大きくなるので砲身を丈夫にしなければならない。 砲身そのものが消耗品であることを考えると必要以上に長くするのは無駄です。

※現代の代表的な運動エネルギー弾であるAPDS、APFSDS(翼安定離脱装弾筒付徹甲弾)の場合、砲を大きくするというのはあまり重要でなくなってきています。 (弾芯の径は40mm程度でしかなく、砲径に合わせた装弾筒に納められている)重要なのは弾の初速です。 (火薬の爆発力っていうのは気体の膨張を利用しているので上限が既に見えており、如何に効率を高めるかが重要) そして着弾時の弾速(運動エネルギー)が破壊力となるので射程距離が長くなって弾速が遅くなるほど威力が低下します。 一方、化学エネルギー弾の代表的であるHEAT弾(成形炸薬弾)の場合は砲弾の中の火薬が爆発するときに発生するエネルギーを利用します。 従って砲弾の径が大きい(火薬の量が多い)ほど威力が大きくなります。また、HEAT弾の場合、着弾時の弾速は問題になりません。 従って、射程の遠近による攻撃力の差が基本的に発生しません。

※コンバインド・アームズ(Combined-Arms)
1種類の兵器で軍隊を構成するのではなく、各兵器の欠点を互いに補い合えるように様々な種類の兵器で部隊を構成すること。 古くは歩兵(槍兵)+歩兵(弓兵)+騎兵なんかも一種のコンバインド・アームズであるといえる。 現代の地上戦では戦車+装甲車両+歩兵+支援砲+攻撃ヘリ/対地攻撃機といった形になる。

※1hp=0.735499kW、1kW=1.3596hp
T=75ηp/V (T:推力(kg)、η:プロペラ効率、p:馬力(hp)、V:速度(m/s))
プロペラ機とジェット機の推力換算には上記の式が使われますので、今回もこれを使ってみます。
F/A-18はスーパークルーズはできないから通常時=亜音速でしょう。きりのいいところで、900km/h=250m/sで考えます。アフターバーナ使用時は最高速なのでM1.8。 きりのいいところでM1=1200km/hとすればM1.8=2160km/h=600m/s(厳密な計算をするわけではないので結構いい加減ですがご容赦を)

F/A-18(F404-GE-400)の推力・馬力
10,600lb(15,800lb)=4808.16kg(7166.88kg)。双発だから2倍すると9616.32kg(14333.76kg)()内の値はアフターバーナ使用時のもの
250m/s時の推力として馬力換算すると9616.32(kg)*250(m/s)/75=32054.4(hp)。アフターバーナ使用時の推力を馬力換算すると14333.76(kg)*600(m/s)/75=114670.08(hp)。ほぼ10万馬力とみていいでしょう。

コアファイターの推力・馬力
推力:75*12000(hp)/250(m/s)=3600(kg)。ずいぶん少ない……。