核融合



核融合について調べたことをまとめてみました。
本文中では各原子、素粒子を以下のように略記します。
p:陽子
n:中性子
H:水素(陽子1)
D:重水素(デューテリウム)(陽子1+中性子1)
T:三重水素(トリチウム)(陽子1+中性子2)
He3:ヘリウム3(陽子2+中性子1)
He4:ヘリウム4(陽子2+中性子2)

D+He3反応は
D + He3 → He4(3.67MeV) + p(14.67MeV)
となり、中性子が放出されないので「クリーンな核融合」といわれているのですが 実際の核融合では原子を一つづつ制御するわけにはいきません。(実験レベルならそれでいいけど)
つまりたくさんのDとたくさんのHe3を反応させることになります。 そうするとD+He3反応をさせたいつもりなのにD+D反応やHe3+He3反応がおこる可能性が出てきます。
まぁHe3+He3反応はD+He3反応よりも高いエネルギーが必要ですから何とかなるかもしれませんが、 (周囲で核融合が起こればその高いエネルギーが生じるので100%おきないとは言えない) D+D反応はD+He3反応より低いエネルギーでもおこるので、 ことによるとD+D反応ばかりおこってD+He3反応はおきないなんてことにもなりかねません。 (これを防ぐためD+He3反応ではDとHe3の比率を1:9くらいにしなければならないとされる)

更に現実的に考えればみれば100%のDと100%のHe3というのも実現性に問題がありますから D、その他水素同位体群、He3、その他ヘリウム同位体群、(場合によっては更にその他の元素)の核融合ということになり、 何がおこるかわかったものではありません。
だから「クリーンな核融合」なんて言ってもそれはあくまで理論上だけの話。
実用上は中性子をばらまかずにはいられないわけで、そうなると障壁が必要になります。 つまるところ今の原子炉と大差ないわけで、小型化は望めません。

ちなみにD+D反応には
D + D → T(1.00MeV) + p(3.03MeV)
D + D → He3(0.82MeV) + n(2.45MeV)
の2パターンがあり、どちらの反応になるかはほぼ半々の確率です。
このうち、Tは自然に崩壊(半減期12.43年)し、He3になってしまいます。 (※β懐変:中性子が陽子と電子に分裂し、電子(β線)が放出される。)

また、TがDと反応する(D+T反応)可能性もあります。
D + T → He4(3.52MeV) + n(14.06MeV)
これもやはり中性子を放出しますからクリーンではありません。
D+T反応は現在最も低いエネルギーで起こるとされている核融合ですが、 中性子の持つエネルギーも大きい(厚さ1mくらいの金属壁も突き抜けてしまう) ので周囲へ影響を与える可能性も高いです。
ちなみに現在の水爆に使われている基本原理がこのD+T反応です。 前述の通り、Tの半減期が12.43年なので放置しておくと次第に核融合が 起こりにくくなって威力が低下します。だから定期的にTを補充(交換)して やらなければいけないというやっかいな代物です。

※D+He3反応で生じる陽子は電気的に+なので−のものと引き合い、短時間でエネルギーを失う。即ち、エネルギーを取り出し易いことになる。  中性子は電気的な影響を受けないため、エネルギーを失いにくく、エネルギーを取り出すのが困難。