昨年刊行された、待望の村上春樹長篇小説『海辺のカフカ』。それにともなって開設された春樹さんのホームページ。そこには読者から数多くのメールが寄せられました。それらのやりとりを一冊にまとめたのがこの本。本のつくりは少年マンガ誌のようなしくみになっていますが、すべて読了しようと思えば、マンガ誌の10倍以上の時間は軽くかかるでしょう。とにかくすごい分量です(汗)。 なかでも特に印象的だった春樹さんの返答をひとつ。「小説が暴力的に過ぎると言われるけれど、現実のほうがもっと暴力的だと思う」。『海辺のカフカ』の暴力描写に耐えられないという読者に向けて春樹さんが出された答えです。僕もまったくその通りと思うのですが、これは我らがジョン・アーヴィングの世界にも共通することで、実際今回の春樹さんと殆ど同じ意味合いのコメントを、アーヴィングも度々口にしています。やっぱり、一人の人間が惹かれる作家どうし、なんらかの共通性があるのかもしれないですね。 そして僕がしみじみ思うのは、カフカ少年が『海辺のカフカ』の世界を、T・S・ガープが『ガープの世界』の世界を、彼らの視点で彼ら自身を生きるように、僕は「僕の世界」を、あなた(そう、これを読んで下さっているあなた)は「あなたの世界」を生きるのだと、生きるべきなのだということ。当たり前のことかもしれないけれど、それってとても大切なことなんだと思う。少なくとも、僕は。
一見多いようでいて、実はそれほど数はない。そんな「誕生日にまつわる」短篇作品を村上春樹さんがピックアップ、自作の一篇を加えて一冊の誕生日短篇集にまとめあげたこの本。誕生日なんてものはそもそも心楽しいものでもないよな、という哀しい事実を再確認されられるところがあって、「ハッピーなバースディが近い人にはいかがなものか?」という気がしないでもないです(汗)。 ちなみに僕が気に入ったのは、ダニエル・ライオンズ作「バースディ・ケーキ」とアントレア・リー作「バースディ・プレゼント」の2作品。皆さんは、どの作品に惹かれるでしょうか。よかったら教えて下さいね。
前巻にて、主人公の一人正岡子規が死んでしまうと、この物語はいよいよ戦争一色の世界に突入し始めました。具体的には物語の中心が日露戦争へと移っていくわけなのだけれど、そうゆう話って、やっぱり読者を明るく楽しい気分にはさせない。いや、世の中には、戦争話が楽しくってしょうがない人もいるのでしょうけど……。いるんですよねぇ。きっと……。 実をいいますと、僕は圧倒的な偏見をもって強固に戦争反対な人間なのです。ですが、僕がこの物語を読んであらためて感じたのは、そうゆう人間こそ、戦争についてより深く知るべき(知る努力をすべき)なのだ、っていうこと。『ガープの世界』のT・S・ガープも、『オウエンのために祈りを』のオウエン・ミーニーも決して、数々の悲劇的な暴力に対し、目をそむけはしなかった。あのボーガス・トランパー(『ウォーターメソッドマン』)でさえ、最終的には(ひどく頼りなくはあっても)しっかりと現実を向いていたものな。 追伸:そうゆうふうに私も生きたい。 |