2003年3・4月の読んだ本。




2003年3月の読んだ本。
(小説3冊、合計3冊)



  • 金城一紀 『FLY,DADDY,FLY』  ★★★☆☆
 「その痛みが懐かしく思える日が、すぐにやってくるよ」  (本文より)

 最近の僕のイチオシ作家、金城一紀さんの新作を読みました。以前紹介した『レボリューションNo.3』の愉快な面々が再び大活躍で、読後の気分爽快さもそのまま、前作のファンなら必読の1冊だと思います。

――愛する自分のひとり娘が暴行事件にあったとき何もしてあげられなかったへなちょこ親父。そんな彼が犯人の人気高校生ボクサーを打倒するため、ある師匠に喧嘩術を学ぶことに――といったストーリー。個人的な趣味を言わせてもらうと、前作ほどの衝撃(的面白さ)はなかったのですが、それは僕の期待が大きいからこそ、という部分もあるかもしれません。オススメの作家です。笑いどころ泣きどころ満載で、気分爽快!
 



  • 竹内真 『粗忽拳銃』(再読)  ★★★★☆
 前座噺家、自主映画監督、貧乏役者、見習ライター、夢に向かって四人組が駆け抜ける一気呵成の500枚。大型ストーリーテラーの誕生!!  (帯より)

 ご存知、アーヴィングファンの小説家「タケウチさんこと」竹内真さんの小説すばる新人賞受賞作品。タケウチ作品は読者を元気にさせてくれる、って確信している僕ですが、今回この作品を再読して、やはり励まされ、僕は間違ってなかったなと再認識した次第です。

 前座噺家の天馬は言います。「前々から思ってたんだけどな、映画やら芝居やら文学やらをやっている奴らってのは、暗くて深刻ぶったもんを作るのが格好いいと思い込んでんじゃねえか?」

 納得! そして同時に「これは書き手のタケウチさんの小説家としての信条であり、小説家として生きていく上で自らにかした戒めなのではないか」と僕は思いました(違いますか??)。

 そんな作家が紡ぎ出した文章なのだから、読者が勇気づけられる作品に仕上がるのも又必然かと、そしてこうゆう文章に出会えた読者は幸せだと、しみじみ感じた春の夕暮れでありました。
 



  • 真保裕一 『奪取』  ★★★☆☆
 1260万円。友人の雅人がヤクザの街金にはめられて作った借金を返すため、大胆な偽札作りを2人で実行しようとする道郎・22歳。パソコンや機械に詳しい彼ならではのアイデアで、大金入手まであと一歩と迫ったが…。  (解説より)

 個人的に『奇跡の人』という作品に、納得できないものをかんじながらも、言葉に出来ない魅力と可能性を感じている真保裕一さんの作品。……え〜と(汗)、正直申しますと、この作品を読んでから今この感想を書くまでに2ヶ月近くのブランクが生じてまして、読んだときの感覚は、ほぼすべて忘却の彼方へと旅立ってしまわれました(号泣)。偽札作りの技術的な描写が、ちょっと小難しくて「たぶん僕は理解してないな」と思ったことは、しっかりと覚えていたりするのですが……(汗)。(やれやれですね)

 とにかく僕が真保さんに期待するのは「『奇跡の人』のテーマで、いつかもう一度書いて欲しい」ということ。「著者もきっとその気に違いない」などと当然のことのように思っている僕は、自己中なのだろうな、きっと(汗)。




2003年4月の読んだ本。
(小説3冊、合計3冊)



  • 金城一紀 『GO』(再読)  ★★★★★
 そう、
 僕は、日本で、生まれた。   (本文より)


 ほんの数ヶ月前、図書館で借りて読んだばかりだったのだけど、書店で文庫版が出ているのを目にして、再読の欲求が抑えられず買ってしまいました。貧乏人の僕にそうゆう行動をとらせるくらいですから(笑)、間違いなく「面白かった」ということです。

 かなり話題になった作品なので、既に読まれた方や、映画版をご覧になった方も多いと思います。今更僕が紹介するまでもないかもしれません。「在日文学」というキャッチコピーが先行している作品ですが、僕が感じたのは、在日コリアン二世である著者が、在日朝鮮韓国人をテーマにしながらも、「現在の日本の有り様(ありよう)」を描いている作品だということ。日本という土地が単なる舞台としてそこにあるのではなく、むしろそっちを描きたかったのではないかな、という印象が残っています。

 え〜と、正直そんな能書きはどうでもよいのです。とにかく軽快で面白い作品なのです。軽快で面白い小説。いいです。
 


  • 山田ズーニー 『伝わる・揺さぶる!文章を書く』  ★★★★☆
 Lesson1 意見とは何か? 意見とは自分が考えてきた「問い」に対して、自分が出した「答え」である。  (本文より)

 小説やエッセイ以外の本は、そもそも殆ど読まないこともあるし(……。)たまに読んだとしても大概はここに感想を書かないことが殆ど習慣みたいになってきていたのですが、この本は特別に心に残ったので紹介しちゃいますね。

 既にファンの方もおられるかもですが、糸井重里さんの人気サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」内の「おとなの小論文教室」というコーナーに連載されていたものを再編集して(←たぶん)一冊の本にまとめたものです。※ちなみに連載は継続中です。そちらもオススメですよ。

 タイトルからは、いわゆる「文章読本」的なものを思い浮かべるかもしれませんが、この本は文章を通してコミニケーションのあり方を、ちょっと大きく言えば「人間としてのあり方」を書いた本だと僕は思いました。仕事や人間関係などで、ちょっとしたモヤモヤを抱えている方には最適の一冊かもしれません。文章の書き方の本として読むより、「人間ってなんだろな?」の本として読むほうが面白いような気がします。少なくとも僕はそんなふうに読みましたし、そうゆう意味で心に残っています。

 「ほぼ日」での連載もよいですが、こうゆうものはやはり一冊の本としてまとめて読んだ方が良い感じです。既に「ほぼ日」で読まれている方も一読の価値有り!
 


  • 永六輔 『職人』  ★★★★☆
 「おまえは非常識なんていうもんじゃない。
 おまえは無常識! おまえは何もないの!」   (本文より)


 またまた文芸書ではない本について書きたいと思います。たまには良いですよね? こうゆうのも? 僕が伝統工芸の職人を目指している(そして何もする前から壁にぶつかっているというテイタラクぶり)ことは、すでに伝言板の常連さんはご存知かと思います。その節は、いろいろとお見苦しいところを見せてしまって恐縮です。現在も前途多難さを身にしみて感じておりますが、皆様のあたたかい言葉の数々を胸に刻みつつ、なんとか道を切り開いていきたいと思います。がんばります。……と、僕のことはどうでもよくて(汗)、この本についてです。

 え〜と、この本はですね、伝統工芸に限らず「ものづくり」に携わる、色々な職人さん達の名言・迷言や、永六輔さんと職人さんの対談が収録されています。著者の切り口が絶妙なこともあって、職人になんて興味がない人でも十分に楽しめる本になっていると思います。というか、「この本を読めば職人に興味が湧くこと請け合い」です、たぶん。

 ところで、広い意味でいえば小説家も「文章の職人」ってふうにも言えるのだと思います。そこで、そこでのお話なのですが、インタビュー等で垣間見せるジョン・アーヴィングの人物像に、ある種の「職人気質」みたいなものを見るのは僕だけでしょうか? 口が悪い頑固者、だけど、なんだか、暖かい。――「アーヴィングにはべらんめえ口調が良く似合う」と言ったら言い過ぎか。(失礼)

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