2002年7・8月の読んだ本。



2002年7月の読んだ本。
(小説2冊、合計2冊)
  • 司馬遼太郎 『新選組血風録』 ★★★★☆
 現在もっとも有名なチャンバラといったら、映画『スターウォーズ』のジェダイの騎士が持つライトセーバーによるそれかもしれない。彼らが遥か銀河の彼方で繰り広げるチャンバラも勿論魅力的なのだけど、『スターウォーズ』とはまた一味違った切実な刀剣の姿を見せてくれるのが本書『新選組血風録』だ。

 同じ著者の大作『燃えよ剣』では新選組のなかでも土方歳三にスポットが当てられているが、この作品では沖田総司や近藤勇はもちろん、あまり一般には知られていない無名の隊士のエピソードまでが短篇連作の形で語られる。幕末という時代、そして自らがふるう剣そのものに翻弄されていく男達の姿は、「冷血な人斬り集団」新撰組という既成概念をみごとに打ち砕いてくれるだろう。いや、彼らが人斬り集団であることは間違いない。だけど、彼らの振り下ろす剣の源は決して同一のものではないし、そこにある彼らの想いも、またそれぞれである。




  • カート・ヴォネガット 『モンキーハウスへようこそ 2』 ★★★☆☆
 アーヴィングの学生時代の恩師、ヴォネガットの初期短篇集の2冊目。ヴォネガットのデビュー作「バーンハウス効果に関する報告書」をはじめ、著者独特のSFっぽくて風刺の利いた短篇を楽しむことができる。ヴォネガット作品の多くはハヤカワ文庫のSFで読めるのだけど、本書は何故か2巻目だけ絶版になっている模様。新品を見かけたら迷わず購入しておくことをおすすめします。あと、図書館でならすぐ読めるでしょう。いまどきの作家ではないので、誰にも借りられずに書庫の奥深くで休憩中のはず。





2002年8月の読んだ本。
(小説3冊、その他1冊、合計4冊)

  • ジョン・アーヴィング 『第四の手』  ★★★★☆
 感想は、後日作家別にUPします。



  • カズオ・イシグロ 『遠い山なみの光』  ★★★★☆
 このサイトをやっていたおかげで出会えたイシグロ作品、ようやくの2作品目。この人の作品は独特。日本生まれのイギリス育ち、日本人の顔を持つイギリス人という著者独特のパーソナリティが生み出す小説世界を真似できる人は皆無に違いない。世の中に小説家としての特性を持ち合わせている人間がある一定数存在するとして、この類いまれな生い立ちの男にその才能が与えられるとは……。神様もなかなかオチャメである。

P.S.『サーカスの息子』のダルワラ医師にも、彼くらい小説家のセンスがあったならあるいは…(笑)。




  • 村上春樹 『'THE SCRAP’―懐かしの1980年代』(再読) ★★★★☆
 村上春樹さんが1980年代のアメリカの雑誌や新聞をスクラップし生まれた80本以上の原稿が一冊の本になっている。内容は、「J・アーヴィングと夫婦不和」「チューバッカ・イン・スターウォーズ」「コーラ戦争」「ピカピカの乳房についての考察」などなど、タイトルからして面白そうなものばかりだ。僕はふだん雑誌を読む習慣が殆どないのだけれど、そんな僕でも充分に楽しめるこの本は、日常的な雑誌好きならよりいっそう楽しめる本なのか? それとも雑誌好きには退屈な本なのだろうか?

 また、本書のサブタイトルは「懐かしの一九八〇年代」だが、本書の初版は1987年。もちろん誤植などではなく、作家である村上春樹さんのねらいがそこにあるわけなのだが、本当に「懐かしの」になってしまった21世紀の今、この本はどのようなポジションにあるのかは不明である。




  • 竹内真 『じーさん武勇伝』  ★★★★☆
 天下無敵の最強じーさん大活躍のエスカレーションコメディは、タケウチさんこと竹内真さんの最新長篇。「あー、おもろかった」と、さっぱりとした気分で本を閉じることができる作品であり、そして、きっとそれは良いことなのだ。

 せっかくなので(って何が「せっかく」なのだ?)僕の希望を書いておこう。それは数々あるであろうじーさんの逸話を短篇集みたいなもので読んでみたいということだ。じーさんの畳職人にまつわる話や、若かりし頃の伝説(作中に出てきたやくざの親分との話とか)、などなど『じーさん武勇伝』には数々の愉快なショートストーリー(外伝)がまだまだ埋もれている気がする。そんな逸話を落語の小噺を楽しむかのように、短篇小説で読むことができたら楽しそうだ。神楽坂ファミリーの他のメンバーもいろいろありそうなやつらばかりですしね(笑)。


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