(小説4冊、合計4冊)
アーヴィング作品の中でも『ホテル・ニューハンプシャー』は、今までわりと短期間で一気に読んでた傾向があったように思うので、今回の1ヶ月近くかけてののんびりとした読書ペースが意外と新鮮で良かったように思う。 なんというか、「だめだ、続きを読んでからじゃなけりゃ、とてもじゃないが眠れん!」って感じで徹夜しちゃったりする、ある意味情熱的?な読書も、それはもちろん最高なわけですが、毎日ちょびっとずつRPGゲームを解いていくような、そうゆう楽しみ方もまた楽しいなと…。まあ、本好きとしては至極当然なことを、いまさらながら感じたのでした。
どの短篇も、そうですねぇ、「世にも奇妙な物語」ででも使われそうな、一風変わったちょっと恐いような雰囲気を持った作品ばかりです。中でも僕のお気に入りは「さよなら、キリハラさん」。どんな話かというとですね、元老院直属の音波管理委員会の太陽系第3支部から派遣されてきたキリハラさんに音を抜かれちゃうようなタイプのお話ですね。‥‥え〜と、わかりやすい解説に出会えて良かったですね。(なんつって…笑)
放射能に蝕まれた第三次世界大戦後の地球では、生の生物(って言い方もおかしいけれど)がとても貴重で、動物を飼ったりするのはステータスにすらなってます。たとえばアンドロイドハンターの主人公なども、本物の羊を飼うのを夢見つつ、電気じかけの羊で我慢してたりするわけです。まあ、そこいらじゅうアイボだらけって感じでしょうか。 主人公は脱走したアンドロイドを捕まえるというか、狩るのを生業にしているのですが、彼は、アンドロイドたち、そして、それをとりまく人間たちと関わっていく過程で悩み始める。例えば「もしかして、おれっちもアンドロイドか??」なんて思っちゃったりもするわけですね。 アンドロイドであるとはどうゆうことなのか?人間であるとはどうゆうことなのか? 映画での疾走感とは一味違う、哲学的な思いにふけることが出来る一作です。映画版をすでに観ているかたでも、じゅうにぶんに楽しめる一冊ですので、ぜひ一度。
新設の大学にテニス部をつくろうと奮闘したり、まあいわゆる恋愛云々があったりと、なかなか盛りだくさんの内容なのですが、僕にはどうしても「(ある程度年をとった)大人が描いた(既に通過した大人の目を通して書かれた)青春もの」って感じがしてしまい、作品の世界に上手く溶け込むことが出来ませんでした。最後まで主人公の青年にも馴染めず…。せっかくすすめてもらった作品ですが、いまいち楽しめないまま読了。ちょっと残念でした。 う〜ん、この作品に共感できる大学生って、本当に多いのだろうか…? (小説4冊、その他1冊、合計4冊)
特に「こいつは面白い!」というふうにも感じなかったけど、良くも悪くも安心して読めるシーナワールドでした。‥‥って、ちっともほめてないですね…(苦笑)。
え〜と、吉田戦車の代表作『伝染るんです』を思い出していただければわかる通り、かなりあほな感じの本であるところの本書は、もし読まれるのならそれなりの覚悟を持ってのぞまれることを、期待せずにはいられないのが不思議である。間違っても『日本語学習帳』(未読)などの系統のものと混同することは許されまいよ…(謎)。
物語の前半は主人公の長期にわたるリハビリや、母親の献身的な看護などが抑え目のトーンで淡々と(しかし、感動的に)語られる。すべての知識を失った主人公が回復していく過程にには、何となく『アルジャーノンに花束を』ともイメージが重なるものがあり、僕は感動しつつも平穏な読書を楽しんでいました…。しかし!しかーしである!この小説、その平穏な読書のひとときを、いともあっさりと覆してくれちゃいます。 主人公が事故以前の未知の自分を探し始める後半から、(彼は、事故以前の彼の情報が意図的に隠されていると感じて、過去の自分の人間性に疑問を抱いちゃってます。みんなが優しさから情報を隠蔽してる、と思うわけですね。)作品のトーンががらりと変わるのです。ひたすら重い…。僕はこの話は全体としても面白いと思いましたし、ああゆう形での読者の裏切り方は作者の「すぐれた」意図であるとは思うのだけど、なにしろて読んでて辛い…。 (ねたばれは避けなくてはいけないので唐突なコメントになってしまうけど、主に既読の人に向けて…。) 特に最後の「母のエピローグ」はいらないんじゃないだろうか?あのエピローグは作者の意図としては「ある種の救いの場面」なのかもしれないが、僕には、「この上ない残酷な場面」としか思えない。大体彼女の行動には首をかしげざるを得ないし、あの先に明るい光りは微塵も想像することが出来ない。同じことはきっと繰り返される。今度はもっとひどいことにだって成りうる。最後の「克己は奇跡の人なのだから。」という一文は、僕には非常に趣味の悪いブラックジョークとしか読むことが出来ない。はっきり言って悪趣味である。 あまちゃんの僕としては、せめて、彼をひと思いに殺してやってくれよ、と願わずにはいられない…。 (う〜ん、この感想はやばいのかな(笑)。受け取りかたに、読み手の屈折した精神状態が反映されちゃってるのかも…(笑)。この本読んだ人います?)(そして、さんざん文句を言っても四つ星評価…。正直、かなり心揺さぶられるものがあったのだと思います。)
とにかく、ひとり果敢に武装グループに立ち向かっていく主人公のスタミナ・体力・気力が尋常ではない。捕われの仲間の救出やダムを守る(下流域の壊滅に繋がる)という使命感がそうさせたということなのだろう。だけど、最後のほうなんてほとんどスーパーマンである。もちろんスーパーマンではない彼の心の内側の描写も多々あるのだけど(弱音を吐いてみたりね)、彼の英雄的行動は、むしろそっちが嘘っぽく見せてしまうくらい…。それくらいに彼の活躍はすごい。圧巻ですよ。 個人的に残念なのは、作品がかなりアクションに偏っているように思えたこと。犯人グループの捕虜に、かつて主人公のミスで死なせてしまった同僚の婚約者が含まれていたり、犯人グループの中に組織へのある思いを胸に加わっている人物がいたりと、「そっちのほうで話をふくらませて欲しい」というエピソードがたくさんあるのに、あまり活かされることないままアクション中心で物語の終焉を迎えてしまった。 小説の方向性としては『奇跡の人』のほうが好きなのかもしれない。 |