2001年1・2月の読んだ本。



2001年1月の読んだ本。
(小説4冊、エッセイ3冊、その他2冊、合計9冊)
  • ジョン・アーヴィング 『ガープの世界』(再読)  ★★★★★
 別に狙っていた訳ではないのだけれど、20世紀から21世紀への世紀越えに読んでいた本はアーヴィングの『ガープの世界』でした。(21世紀になる瞬間、ということではないですが。)
 この作品はアーヴィング作品の中でも特に好きなもののひとつで、20世紀をちょっとだけですが生きてきた僕に、この時代を生きていて本当に良かったと思わせてくれる一冊。

  • 松本大洋 『メザスヒカリノサキニアルモノ若しくはパラダイス』(再読) ★★★★★
 『鉄コン筋クリート』などで知られるマンガ家、松本大洋の戯曲の再読。以前からこのサイトに来てくださっている方は、アーヴィングに関係のないマンガ家をしつこくすすめやがって!とお思いかも知れませんが、勘弁してくださいね。本当に良い、かつ面白い作品を描くんですよ、この人。ちなみにこの本はフリースタイルという小さな出版社から出ています。

  • 爆笑問題・他 『対談の七人』  ★★★★☆
 伝言板に顔を出してくださっているタケウチさんに教えて頂いた対談集。以前『小説新潮』に掲載された爆笑問題の大田光とアーヴィングの対談が収録されています。お奨めです。タイトルの通り七人と対談しているのですが、アーヴィングのほかで面白かったのは、去年亡くなられた淀川長治さんとの対談。淀川さんの言葉に見栄だとか建て前だとかといったものが感じられず、素直な気持ちで読むことが出来ました。ご冥福をお祈りします。さよなら。さよなら。

  • 西原理恵子 『サイバラ式』  ★★☆☆☆
 マンガ家西原理恵子のエッセイ。だと思って買ったこの本だけれど、ちょっと違ったみたい(笑)。彼女のマンガにも度々出てくる銀玉親分の文章とサイバラのマンガがいっしょくたになったもの。この本は期待外れの感はあったけれど、彼女のマンガで『ぼくんち』というのがあってそれはとても面白いですよ。是非一度。

  • 星新一 『ようこそ地球さん』  ★★★☆☆
 ショートショートで有名な星新一さんですが、まともに本一冊まるごと読んだのはこれがおそらく初めて。子供の頃に学校の教科書に載っていたのを少し読んだ事があったと思うのだけれど、僕が思っていたよりも風刺がきつくて「けっこうと、毒っ気が多いんでないの?」という印象を持った。中にはとても気に入った作品もいくつかあって、「こうゆうのも悪くないなあ」といった感じです。

  • マーク・トウェイン 『トム・ソーヤ−の冒険』(再読)  ★★★★☆
 おそらく小学生の時以来の『トム・ソーヤ−』の再読。再読とはいったものの、持ち前の記憶力のおかげで殆ど内容を覚えておらず、はじめて読んだ作品のような新鮮な雰囲気を味わう事が出来た。ありがとう!僕の素晴らしい記憶力(笑)。この作品は殆どの方が既にご存知だと思うので、いまさら僕が解説する必要もないでしょう。機会があったら『ハックルベリー』も読んでみたいと思う。そちらはまだ一度も読んだ事ないし。

  • ルイス・キャロル 『不思議の国のアリス』 ★★★★☆
 名作児童文学ものを続けて読む、今度は『アリス』。実は今までこの名作をきちんと読んだ事がなかったのですが、BBSでも皆さんが絶賛されていたのも納得の作品でした。子供の頃に読んでおけば良かったなあ、と思う。なんで読んでなかったのだろう?子供の頃は「アリス?そんなの女の子向けじゃん。」とかほざいていた、若しくは思っていた、のかもしれない。全然覚えていないのだけれど…。今度は『青い鳥』でも読もうかなと、ふと思う。

  • 村上春樹 『シドニー!』  ★★★★☆
 村上春樹によるシドニーオリンピック観戦記。ひとえに観戦記とは言っても、そこには確固とした世界観があり、春樹ワールドは相変わらず冴えまくっています。400ページくらいある本なのですが、すらすらとさっくりと読めてしまうから不思議。内容にも満足できる厚みがありました。アーヴィングはしばしば「読みやすさ」について言及しているけれど、春樹さんの文章は実に読みやすい文章だと思う。少なくとも僕にとっては。あとこの本にはしょっちゅう「変なの。」というフレーズが出てくる。まったく「変なの。」のオンパレードであった。変なの。

  • (番外編) 宮崎駿 『風の谷のナウシカ』全七巻  ★★★★★
 私的読書記録は今までマンガについては書いていなかったのですが、この作品は皆さんに是非読んでもらいたいので紹介させて下さいね。とは言っても僕がマンガを活字の本よりも下だと思っているわけではないですよ。小説であれ、マンガであれ、映画であれ、又音楽であれ、表現方法にいくらかの差があるのは確かな事ですが僕はどの表現も好きだし、どの表現も必要だとも思っているのです。今後もオススメのマンガや映画があったら紹介したいな、と思っています。え!いらないって(笑)。 
 さてさてちょっと脱線してしまいましたが本題のナウシカの話。宮崎駿監督といえば『もののけ姫』の大ヒット等で知らない人は殆どいないだろう、と言っても言い過ぎでない位有名な人ですが、映画『風の谷のナウシカ』発表後もマンガ版『風の谷のナウシカ』を1994年まで10年以上にわたって描きつづけていたという事実はあまり知られていないように思います。あるいは僕が知らなかっただけなのかも知れませんが(笑)。
 このマンガ版ナウシカ、はっきり言いましてとっても面白かったのです。全七巻のうち二巻くらいまでは映画版と大体似通った内容なのですが、それから先はマンガ版の全くのオリジナルで全然違う話になっています。『ナウシカ』だけではなく『ラピュタ』や『もののけ姫』など多くの宮崎駿作品の要素をすべて含んでいると言っても言い過ぎではないと思います。具体的には映画では「腐海=王蟲(オーム)」は人間によって汚染された大地や海を浄化する地球の自浄作用そのものであり、ナウシカ達人間はそれに対してどう向き合っていくのか、といった感じだったと思います。あくまで僕の感じですが。しかしマンガ版ではその基本的構造というか図式が、実は全然違ったものだった、という事がのちのちになって明かにされていくのです。あらま(笑)。
 これ以上書くと内容に触れてしまいそうなのでやめておきますが、映画版『風の谷のナウシカ』を観た事がある人もない人も、また宮崎駿作品が好きな人も嫌いな人も、是非一度読んでみて欲しいと思うのです。きっと後悔はしないと思いますよ。読まないと後悔します(笑)。(読んでないのに後悔するかよ!とツッコミ入れないでね。)
 なんだか長くなっちゃいました(笑)、読んで下さった方どうも有り難う。そしてマンガ版『風の谷のナウシカ』、是非一度読んでみて下さいね。普通の図書館でも置いてあるところが結構あるみたいですよ、最近はマンガ喫茶も沢山ありますしね。  しばし時の経つのを忘れるのでは…。




2001年2月の読んだ本。
(小説8冊、その他1冊、合計9冊)
  • ダニエル・キイス 『アルジャーノンに花束を』  ★★★★☆
 ダニエル・キイス作品の初読みは、名作『アルジャーノン』にしました。話の筋は大体知っていたのですが、それでもまんまと感動させられてしまいました。くやしい、でもうれしい(笑)。
 あらすじは、パン屋で働く白痴の青年チャーリィ・ゴードンが、化学の力で(というか人体実験によって)加速度的に知能が発達する。しかし以前は白痴ではあっても平穏にそれなりの幸せを感じながら生活していたチャーリィが、IQがはね上がり自分がおかれている現実を、そして過去を、未来を、理解してしまった時の苦悩。同じ実験の実験体であり運命共同体であるねずみのアルジャーノンを見つめるとき、彼はいったい何を思ったのだろうか?そして彼らの運命は?って感じです。

  • 椎名誠 『さらば国分寺書店のオババ』  ★★☆☆☆
 言わずと知れたシーナさんのデビュー作。う〜ん、想像してたほどは楽しめなかったかもしれないですこの作品。なんだか作品そのものの賞味期限が切れてるって感じがしてしまって、それがどうしても拭いきれませんでした。残念。同じ年代に書かれた(たぶん同じ年代(汗))の作品でも、村上春樹の村上朝日堂などはそういった感じは受けないのですが…。どうしてだろう?

  • 大槻ケンヂ 『グミ・チョコレート・パイン グミ編』  ★★★☆☆
 三ツ星ではありますがアホアホ小説部門に限ったなら文句なしの五つ星でしょう(笑)。作者大槻ケンヂの自伝的小説ということですが、「もう本当〜におかあちゃんは情けないよまったくっ!」的、情けな野郎のオンパレードです。でも面白い。そんな作品。ちなみに続編のチョコ編は既に発売されていて、パイン編も出る予定のそうです。あの情けな野郎どもが今後どんな活躍を見せてくれるのか、楽しみなシリーズです。

  • ジョン・アーヴィング 『ウォーターメソッドマン』(再読)  ★★★★☆
 『水療法の男』の再読。この作品は自分の中でまだ上手く消化できていない。僕がこれから乗り越えていかなくてはいけない作品。長い付き合いになりそうだ…。

  • 江國香織 『こうばしい日々』  ★★★☆☆
 江國香織作品の初読み。「こうばしい日々」と「綿菓子」という二つの中篇作品は、どちらの作品もさらっとしていて、でも何か心に残る、感じるものがあるそんな作品。全然悪くない。個人的には「綿菓子」の中の「メロンは、甘くて、つめたくて、しみるみたいな味がした。」というフレーズがお気に入り。そうゆう言葉の使い方というか選び方というか、そんなのがとても上手な作家だと思う。三ツ星の評価はちょっと辛かったかな。

  • スタインベック 『二十日鼠と人間』  ★★☆☆☆
 「これって名作?」っていうのが率直な読後の感想。僕の頭が悪いからだとは思うけど、はっきりいって楽しめなかった。なんだか人の言い訳話を長々と聞かされた後のような釈然としない気分になった。残念。もう一度読みたいからではなく、今現在の僕の感想がはたしてどんなものなのかを(作品のメッセージを充分に読み取ったうえでの後味の悪さなのか、ということですね)確認するために今度改めてもう一度読んでみようと思います。

  • 原田宗典 『十九、二十』  ★★★☆☆
 いわゆる青春ものなのだけれど、何か物足りない読後感でちょっと残念。評価も二つ星よりのぎりぎり三つ星といったところ。二十歳直前の大学生(男)のお話で、大人とは言えないが子供でもない、そんな不安定な青年の心情がつづられている。物語のキーポイントは「父親の凋落」という事だと思うのだが、自分の父親が崩れていく様を「十九、二十」という時期に体験した主人公の青年の心情描写はなかなかリアルなものがありました。
 ひとえに青春小説といってもいろいろなのがあるけれど、やはり僕としては村上龍の『69』のような作品の方が好きだなあ。

  • 村上龍 『走れ!タカハシ』  ★★★★☆
 「ヨシヒコが走るとき、何かが始まり何かが終わる。」そんなキャッチコピーの村上龍作品。この本はだいぶ前に買って読んでいなかったものを、本棚を整理してたら発見、しかも読んでみたらなかなかの面白さであったという嬉しい一冊♪タイトルの「タカハシ」とは広島東洋カープのプロ野球選手高橋慶彦選手の事なのですが、う〜ん何て言ったらいいかなあ。阪神大震災に関する連作、村上春樹の『神の子どもたちはみな踊る』のように、この作品は高橋慶彦選手に関する連作なのですが、野球に関する知識は無くても十分楽しめる作品群はとても面白いものばかりです。
 村上龍作品の中ではあまり知られていない部類に入るのかも知れませんが、かなりいいと思いますよ。『コインロッカー』や『五分後の世界』等の傑作とはまた一味違った良さがあります。

  • 江國香織 『ホリー・ガーデン』  ★★☆☆☆
 『こうばしい日々』に続けて今月2冊目の江國作品。やはり言葉(日本語)の選び方が上手い人という印象は変わらなかったが、僕の趣味(あまり良くはない趣味(笑))で言わせて頂くと、「何か物足りない作品」という所に落ち着いてしまわざるを得ないみたいです。残念ですが…。
 いや、やっぱしこうゆう言い方は良くないですね。はっきり言います。ストーリーが全然面白くなかったのです。それではいくら言葉の使い方が素晴らしくても、所詮「美しい文章の奏でる、つまらない話」でしかありませんから…。でもこの人の文章好きだなあ。

私的読書記録へ戻る

HOME