2000年11・12月の読んだ本。



2000年11月の読んだ本。
(小説5冊、その他2冊、計7冊)
  • カート・ヴォネガット 『青ひげ』  ★★★★☆
 大邸宅に孤独に暮らす元抽象表現派の画家であり、前大戦において多くの勲章を得たアルメニア人の老人ラボー・カラベキアンの回想録。そんな彼の元をおとずれた謎の女性は何者なのか?カラベキアンがひた隠しにする納屋の中にはいったいどんな秘密が隠されているのか?
 ヴォネガットの作品にしばしば見られる回想録の形をとっているこの作品だが、過去と現在が交互に語られているのにもかかわらず、ちっとも読み辛くないのがすごい。うっかりしているといつのまにか感動させられている油断大敵)の作品です。

  • 村上春樹・柴田元幸 『翻訳夜話』  ★★★☆☆
 数多くの英語の作品を日本語に翻訳している(英語が読めない僕などにとっては、ほんとにほんとに有り難い)お二人による共著。ただ単に英文を読むことすらままならない人間としては、翻訳してくれる人がいなければどうしようもなく(アーヴィングの作品を読むことも出来ない!なんてこったい!!)ただただお二人の話しに感心するばかりだった。オースターとカーヴァ−の村上訳と柴田訳を読むことも出来るお得な一冊。

  • 村上春樹 『辺境・近境』(再読)  ★★★★★
  • 村上春樹 『辺境・近境 写真編』  ★★★☆☆
 村上春樹による傑作旅行記とそれにまつわる写真集のくみあわせ。春樹さんは『遠い太鼓』や『雨天炎天』などの旅行記を書いていますが、おもしろさとバリエーションの豊かさでは一番の作品といえるのではないでしょうか。
 瀬戸内海の無人島でのキャンプ、讃岐うどんをめぐる冒険、そして大作『ねじまき鳥クロニクル』にも登場したノモンハンの戦場跡までさまざまな場所へ意欲的に足を運んでいる。交通機関や情報網が高度に発達した現代では、アメリカ大陸を横断するよりも、香川でうどん屋めぐりをするほうがより辺境を旅することになるのかもしれないと語っている。
 中でも一番印象的だったのは、少年時代を過ごした神戸の街を阪神大震災以降はじめて時間をかけ自分の足で歩いてみる、というものだった。大学入学を機会に故郷の神戸から東京に出てきて以来、国内だけでなくアメリカやヨーロッパなどあちこちを渡り歩いてきた春樹さんですが、やはり故郷の風景が、少年時代に自分の目や身体で体験したそれと、あまりにも急激に暴力的に変化してしまったことに大きな喪失感を覚えたようです。そのことが、いつもの春樹さんのエッセイや旅行記にみられない哀しい印象を与えているのかもしれません。
 僕は一人っ子という点では春樹さんと同じなのですが、父親の仕事の都合で少年時代あちこち引っ越していたので、いわゆる幼なじみも少ないし(殆どいないといってもいいのかもしれない)、「ここが僕の故郷の風景であり、原点なんだ」という場所があるわけでもないので、おそらくは彼が震災後の神戸を歩いたそのとき、実際にどのように感じたのかを理解するとは出来ないのかもしれません。でもこの短い旅行記は、僕に、今度ひとりで(鈍行列車にでも乗りながら…)少年時代を細切れに過ごしたあちこちを歩いてみたい。と思わせたようです。
 そのとき僕がどう感じるのかは、見当もつかないのですが…。

  • P・オースター 『ムーン・パレス』  ★★★★☆
 「それは人類がはじめて月を歩いた夏だった。そのころ僕はまだひどく若かったが、未来というものが自分にあるとは思えなかった。僕は危険な生き方をしてみたかった。とことん行けるところまで自分を追いつめていって、行きついた先で何が起こるか見てみたかった。」
という、かっちょいい書き出しで始まるこの小説は、偶然やら運命やらについて考えさせられる作品です。
 (自称)青春真っ只中の僕としてはその書き出しだけでわくわくしてしまった。物語の展開に圧倒されているうちに、どんどん読めてしまう侮り難い一冊であった。

  • 村上春樹 『夜のくもざる』(再読)  ★★★★★
 「超短篇小説」と銘打たれたこの本はとてもおもしろくて、僕の大好きな本の一冊です。笑えること間違いなしと、自信をもってお奨めします。
 例えば「フリオ・イグレシアス」という作品なんかは、
「蚊取り線香をだましとられたあとでは、もう海亀の襲撃から身を守る手だては何ひとつ残されてはいなかった。」と始まるのですよ!どうです面白そうでしょう。(そうでもないって?(笑))
 ジョン・アーヴィングなどの長い作品を多く読まれている方、気分転換にどうでしょうか?

  • ジョン・アーヴィング 『オウエンのために祈りを』(再読)  ★★★★★
 『オウエン〜』の再読です。お金がないので最近は再読ばかりなのです(笑)。この作品はまだ文庫になっていないのでハードカヴァーを定価で買うと上下で5000円位してしまいますが、絶対読んで損はないですよ!図書館で借りてでも読む価値はあると思いますよ!ところで『オウエン〜』も含まれている新潮社のジョン・アーヴィング・コレクションのシリーズは文庫化されるんでしょうかねぇ。新潮社にはぜひ文庫化をお願いしたいものです。(あわよくば早めにね。(笑))
 再読でもやっぱりオウエンは格好良かったです。




2000年12月に読んだ本。
(小説3冊、エッセイ2冊、その他1冊、計6冊)
  • 村上春樹 『回転木馬のデットヒート』 (再読)  ★★★★☆
 村上春樹の短篇小説集。作品の冒頭で春樹さんは、「この本の作品は実際に人から聞いた話をアレンジしたものであり、正確には小説ではない」という趣旨の事を言っているのだけれど、ほかのところでは、「いやいや、実はね、本当は全部フィクションなんですよ」と、それを否定している。いろいろ深読みすることはできるだろうけど、僕は後者が真実なのでは、と思っている。どちらが正解なのかは永遠の謎だけれど、この本の短篇作品が、人の感情に直接訴えかける「何か」を持っているのは確かな事だと思う。

  • 村上春樹 『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』 (再読)  ★★★★★
 村上春樹の作品の中でも僕が特に好きなものの一つ。年に一回ずつ位読み返しているほどです(読み過ぎでしょうか?(笑))。この作品をSF作品と勘違いして(思いこんで?)敬遠している方もおられるようですが、僕はSFとは違うのではいかと思っています。まあ、はっきりいってSFだろうとなかろうと、そんなジャンルなんてまったく気にならない面白さなのです。管理人絶対お勧めの一冊です!ほんとですよ!

  • 椎名誠 『中国の鳥人』 ★★★☆☆
 シーナさんの摩訶不思議短篇作品集。椎名さんの作品はあまり読んでいないのだけれど、書店でなぜか気になって手に取った一冊。中国の山奥、タクシーの中、渓流の谷、などさまざまなシチュエーションでわけのわからない不思議な物語が展開される迷作。他の作品も読んでみようかな。

  • オムニバス 『INTERVIEW 素顔のアメリカ作家たち』 ★★★☆☆
 以前読んだ、村上春樹編・訳の『月曜は最悪だとみんなは言うけれど』とだいたい似た作りの本で、海外の作家のインタビューを翻訳したものと、それについての一言コメント(エッセイ?)のようなもので一冊の本としてまとめられています。僕はアーヴィングのインタビューが載っていたので買ったようなものなのだけれど、他の作家のインタヴューも(作品を一度も読んだ事の無い作家であっても)なかなか面白く読めた。作家ってひとくせもふたくせもある愉快な人が多いのかもしれない。

  • 大槻ケンヂ 『行きそで行かないとこへ行こう』 (再読)  ★★★★☆
 大槻ケンヂさんとは、バンド活動をしつつテレビにも度々登場し顔にひびのはいっている、あのオーケンさんです。この人のエッセイは本当に面白くてやみつきになってしまうほど。僕のようなダメ人間の方(特に男の人)は是非読んで見て下さい、きっとはまりますよ(笑)。今度は彼の小説も読んでみようかな。

  • 大槻ケンヂ 『オーケンののほほんと熱い国へ行く』 (再読)  ★★★★☆
 ここの所寒い日が続いているので本の中だけでも暖かく(笑)、というわけでオーケンのエッセイの再読。バックパッカー大槻ケンヂによるインド・タイの旅行記です。大槻ケンヂのエッセイはプロレス、UFOといったあやしげな話題が繰り返し出てくるという欠点(?)があったりしますが、ほんとに面白いのです。早稲田の大槻教授じゃないですよ、間違えないよ〜に(笑)。

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