子供は欲しい。だが結婚はしたくない。そう考えた看護婦が、全身を包帯をまきつけて入院していた技術軍曹から「欲望なし」で精液をもらいうける。これがT・S・ガープの由来である。やがて母が学校看護婦として住み込んだ名門校にガープも学び、レスリングに熱中する。だが、コーチの娘ヘレンに作家のほうが好きといわれたことから作家志望に変わる。さて、18歳でガープは、母ともどもウィーンに移り、母は自伝の、ガープは小説の執筆にとりかかる。そして自伝『性の容疑者』は超ベストセラーとなり、8カ国語に翻訳され、母は初めての女性運動化に祭り上げられ、まわりにフェミニスト、性転換した巨漢の元フットボールのプレイヤー、強姦され、舌を切られた少女の事件に抗議して自らの舌を切り取るエレン・ジェイムス党員たちが集まってくる。
サンリオ版 (上下) より |
この小説の複雑かつユニークなストーリーを文章で説明するのはおそろしく困難である。 …つまり一人の男が生まれるべくして生まれ、数奇な運命を辿り、死ぬべくして死んでいく物語である。その全体を彩るものは誇張されたコメディーと誇張された暴力であり、登場人物のそれぞれはまんべんなくそのふたつの洗礼を受けることになる。 村上春樹 「反現代であることの現代性」より |
・映画『ガープの世界』 1982年・米 監督:ジョージ・ロイ・ヒル 出演: ロビン・ウィリアムズ(T・S・ガープ) メアリー・ベス・ハート(ヘレン) グレン・クローズ(ジェニー・フィールズ) ジョン・リスゴー(ロバータ) 受賞: 1982年アカデミー賞 助演男優賞 ジョン・リスゴー 助演女優賞 グレン・クローズ |
『ガープの世界』の主人公T・S・ガープの著作一覧を作ってみました。