自閉的特性を持つ人々

「自閉症」の診断基準をすべて満たしてはいないけれど、その内のいくつかの症状を持っている、という「自閉症スペクトル障害」に属す人々は、確かに存在しています。そういう人々のことを、「自閉的特性をもつ人々」として、まとめてみたいと思います。

しかし、幼児期の自己中心性を脱却できていない人すべてをそう呼ぶわけにはいきません。それだけなら、ただの"わがまま"になってしまいます。やはり、何らかの障害があるものに限定すべきです。そこで、以下のような表にしてみました。

下の項目のすべてが揃っていなくても、そのひとつひとつによって引き起こされる症状は、どれをとっても日常生活上の不都合を生じるのに、充分なものと言えるでしょう。ただ、どれか一つだけでは、注意の欠陥・言語の遅れ・学習上の困難・思いやりのない人等と大差ないものもあるので、多岐にわたって全般的に該当する項目がある場合を、「自閉的特性」とします。

「自閉症」というほどのことはないけれど、「アスペルガー症候群」と言って良いかどうか分からない。しかし、「自閉的」な特徴を持っていて、日常生活上の困難や悩みを持っている人々が、それに当たると思います。

 

社会的相互作用   1.対人的な情報の入力の障害〔程度と範囲の問題〕
  • 触覚・前庭機能の異常のために、人との接触や身体の位置の移動が不快。そのため、自分を人間集団の中の一員であると、認識しにくい。
  • 体内の感覚が強すぎて、身体の外にある対象に注意が向かず、外界の情報が入りにくい。
  • 視覚・聴覚そのものは正常なのに、その中から有益な情報を弁別できずに、個々の刺激に反応してしまう。そのため、対象に関するそれ以上の情報が遮断されてしまう。
  • 視覚・聴覚情報の内、言語に関するもの(文字・音声)が正確だと、言語障害が起きにくい。
  • 視覚・聴覚情報の内、非言語に関するもの(他者の身体の情報)が正確だと、人の表情や立場を想像する能力の障害が起きにくい。

2.人的な情報の統合の障害〔時期と正確さの問題〕

  • 主観的な情報を統合して、自己の主体としての「自我」を形成しにくい。
  • 主観的な情報を統合して、自己像をまとめあげることが困難。
  • 客観的に存在する、社会的存在としての自己を認識しにくい。
  • 客観的に存在する、他者をひとつの像としてとらえることが困難。

3.人との係わり合いの障害〔タイプ、あるいは、場面や相手による〕

  • 孤立:人に関心がなく、他者の存在をほとんど無視する。
  • 受動:自分から係わろうとしないが、求めに応じると言いなりになりやすい。
  • 奇異・積極的:人と係わろうとするが、係わり方が正常でない。が、係わり欲求は強い。
  • 奇異・消極的:人との係わりに失敗経験があった為、係わり欲求が失せてしまったもの。
  • マニュアル対応:人との係わり方が分からない為、決まりやルールで対処しているもの。
コミュニケーション   1.コミュニケーション手段の、意味の把握の障害
  • 言葉の意味を、客観的に妥当な範囲で、正確に把握できているかどうか。
  • 人の表情・身振り・行動の意味を、読み取ることができるかどうか。
  • 字面以上の意味や言外の意味を、理解できるかどうか。

2.コミュニケーション手段の、使用の障害

  • 単語を想起できるかどうか。
  • ふさわしい状況・場面・文脈の中で、語句などを使用できるかどうか。
  • 他者に、自己の経験を伝えようとする意思が、あるかどうか。
  • 相手が、話を聞いているかどうか確かめながら話せるかどうか。
  • 非言語的手段(表情・身振り・手振り)を駆使して、相手に好感触を与えられるかどうか。
  • 相手の表情やしぐさなどから、自分に好感を持って聞いているか判断できるかどうか。
  • 相手にも分かるように伝えるために、話をまとめたり、筋立てすることができるかどうか。

3.他人との会話

  • 自分から会話を始められるかどうか。
  • 会話を継続できるかどうか。
  • 相手の気持ちを損ねずに、会話をやめられるかどうか。
限局した興味と行動   1.同一性の保持(自分独自の決まりごとに固執して、反復する)〔内容と程度の問題〕
  • ちょっとした変化にも抵抗するか、手間取りながらも対応できるかどうか。
  • その際、パニックを起こしやすいかどうか。また、その程度。
  • 自分の"こだわり"を超えて、外からの働きかけに応じ、その対象や方法を変えることができるかどうか。
  • 個人的な範囲で済むものか、他人をも巻き込むものか。
  • 社会的に妥当な範囲内のものか、異常なものかどうか。

2.興味の限局(限られたものにしか興味を持てない)〔対象と程度の問題〕

  • 自分に関心が無い情報は一切無視するか、多少なりとも関心を寄せられるかどうか。
  • 自分にとって価値のある事実や関係だけを抽出してしまう傾向を越えて、対象そのものを理解しようとできるかどうか。
  • その対象が、物だけか、人を含められるかどうか。
  • その人も、ドラマなどの架空の人やタレントのような特別の人物に限られるか、現実に係わっている人にまで広げられるかどうか。
  • 興味や関心のない話題についていけない時の態度。妨害したり、意図的に話題を変えようとするか、あるいは、無理してでも参加しようとするか、傍観するか、逃避するかどうか。
想像力の障害   1.想像力そのものの欠陥
  • 人が、物と違って、心や意志を持った存在だと認識してはいるものの、そのようなモノとして接することができにくい。ついつい、物扱いしてしまう。
  • 人の立場が自分と違うことを、想像しにくい。
  • 他者も自分と同じと思っている。あるいは、自分と違う他者の存在を認めにくい。
  • 相手の言葉や表情から、人の気持ちを読み取りにくい。または、読み違えている。
  • 自分が人に好かれているか・嫌われているか・どちらでもないか、正確に判断できない。
  • 自分の発言や行動によって起きた相手の反応を、その都度、読み取ることができない。
  • 他者の経験や心の動きを、時間・空間的な一連のつながりの中で、推測できない。

2.妥当な言動に結びつけられない

  • 相手が自分の思った通りでない言動をすると、意表をつかれてしまう。その際、その現場で即座に、ふさわしい対応がとれない。
  • 自分の言動によって相手の心に生じる感情や考えを、読み間違えている。その為、自分の想定したものと違う反応が起きて、困惑する。

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