「自閉症」チェックシート

―さまざまな「自閉症」のバリエーションが有り得ることを、確認するためのものです。―

(2001.9.2〜9.6/2002.4.2追加

※これは、「診断」のためのチェックリストではありません。
(注1): 「診断」のついた「自閉症」児・者を対象としています。
(注2): 通常ならあって当然の感情・動機に欠ける(或いは、解からない)ということは、前提条件になっています。
(注3): 本人には自覚症状がないことが、多々あります。第三者による観察が必要なゆえんです。
1、○がたくさんあって重度だから・どこどこに○がついているからよりタイヘンだということ
  はありません。どこの項目に○がついていようと、事の重大さは皆同じです。
2、置かれている環境や、本人自身の(生理的・心理的・精神的な)状態によって、同じ一人の
  人でも、○のつく項目が変わっていきます。
3、これは、現在、どのような課題に直面しているかを理解し→解決するためにはどのようなこ
  とが必要か知り→社会に対してどのようなことを訴えていけばいいか、を考えるための参考
  資料です。
  行動・身体的な「かかわり」方の特徴
視線・表情・身振りなどが、ぎこちなかったり硬い感じがする。  
視線・表情・身振りなどを、他者に興味を示し・自己を主張するサインとして使えていない。  
姿勢が悪く、ふにゃふにゃした感じがする。  
姿勢は良いが、堅苦しい感じがして動作もぎこちない。  
身体の大きさや動作・行動に見合った物理的距離を、周囲の物や人との間にとることができない。  
他者の表情・動作・行動に無関心。  
他者の表情・動作・行動に注意は向くが、意味が理解できず関心がないような振る舞いをする。  
他者の表情・動作・行動の意味を取り違えて、間違った(奇妙な)反応をしてしまう。  
他者の表情・動作・行動に対して、どう反応していいかわからずフリーズしてしまう。  
10 他者の表情・動作・行動に続いて起こることを予見できず、トラブルを回避できない。  
11 他者から不審に思われるような、行動や態度をとってしまうことがある。  
12 普通なら見れば分かるようなことでも、情報の読み取りが悪くいちいち説明を求める。  
13 複数の他者の行動を見て、暗黙の内に了解している行動上のルールを読み取ることができない。  
14 行動上のルールを理解することはできるが、状況に応じて即座に行動を調整できない。  
15 いついかなる状況でも一定の決まった行動をとろうとして、周囲とのトラブルを起こす。  
16 順を追った、明確で具体的な動作の指示がないと、自分のするべき行動が分からない・できない。  
17 一連の動作を身体で覚えることができず、次にやることや順序を考えながら行動している。  
18 自分のするべき行動が分かっていても、要求に応じて身体を操作することに困難がある。  
19 身体感覚が希薄だったり自分の外観に無関心なため、身だしなみの配慮ができない。  
20 予期せぬ事態や割り込みなどで一連の動作が遮断されると、自分のやっていることが判らなくなる。  
21 癇癪・自傷・他害・突然走る・その場で寝転がる・眠ってしまう…などの衝動的な行動がある。  
22 さまざまな要因によって、パニック発作を起こす。  
23 興奮しやすく、一度興奮し出すとなかなか収拾がつかない。  
24 その場の状況にそぐわない、強迫的・反復的・儀式的・固執的な行動がある。  
25 感覚的・身体的に許容できない環境条件がある。(或いは、相当に我慢していることがある。)  
26 身体の一部または全身を使った、常同的・反復的で日常的な動作がある。  
27 注意の転動が激しく、課題遂行上の障害になっている。  
28 実行能力の障害があり、{企画立案→見積り→実行する}ことに困難がある。  
29 様々な行動パターンを駆使して、(内心は不安でも)外見上は普通に振る舞うことができている。  
30 いくつかの行動パターンを使用しているが、状況の読み違いや失敗が多い。  
31 使用できる行動パターンが限られていて、活動範囲がせばめられている。  
※ここでいうルールとは、右側通行などの行動上の取り決めをさします(社会的なルールではありません)。

 

  心理的・言語的な「かかわり」方の特徴
特定の個人や愛着対象者としか、かかわりを持つことができない。  
何かに没頭するあまり、他者の存在を忘れているような感じがする。(孤立)  
他者に対して自分が興味関心を持っているモノを示して、共感や批評を求めようとしない。(孤立)  
他者が呈示するものに、ほとんど興味関心を示さない。(孤立)  
他者が情緒的な共感を求めて働きかけると、拒絶する。(孤立)  
他者に関心を示そうとせず、達成感や喜びの共有に応じない。(孤立)  
相手の言ったことをオウム返しするか、決まったパターンの反復的な答え方をする。(孤立)  
見たこと・聞いたこと・思ったことを、そのまましゃべってしまう。(一方的)  
自分が興味関心を持っている事柄を、一方的に他者に見せたり教えようとする。(一方的)  
10 他者に対して自分が興味関心を持っているモノを示して、一定の反応を常に求める。(一方的)  
11 どんな話題に対しても、自分のこと・自分の知っていることしか話さない。(一方的)  
12 他者には通じない、独特の言葉使いをする。(一方的)  
13 何の説明もなしに難解な用語を使い、他者が理解しようとしまいとおかまいなしにしゃべる。(一方的)  
14 話し始めのタイミング・話し終わりのタイミングを、いつもつかみ損ねる。(一方的)  
15 相手が期待する反応ができないばかりか、人の気持ちを損ねるようなことを言ってしまう。(一方的)  
16 相手が期待する反応をパターン化して、機械的に応じすぎる。(一方的)  
17 状況に応じて、声の抑揚や大きさを調節できない。(一方的)  
18 状況や相手に応じた話法や言葉使いの選択ができない。(一方的)  
19 自分の言ったことに自分で答えたり・笑ったりして、自己完結してしまう。(一方的)  
20 自分独自の考えに固執して、決してそれを変えようとしない。(一方的)  
21 何を見聞きしても、自分のこと・自分に対する指示だと思ってしまう。(一方的)  
22 言葉の表面的な意味しか理解できなかったり、比喩的表現を理解できなかったりする。(言語力)  
23 語や文の置かれた文脈を無視し、自分自身で意味づけしたり結合したりしてしまう。(言語力)  
24 論理的な推論をし過ぎるあまり、現実離れした結論を導いてしまうことがある。(言語力)  
25 口頭では双方向のコミュニケーションができないが、書面では不都合を感じさせない。(言語力)  
※ここでは「言語力」としてありますが、本当の問題は「心理的距離」にある場合もあります。

 

  「こだわり」特性のパターン
興味関心を持つ対象が極端に狭く、その内容や強さが尋常でない。  
通常、無意味・無価値だと思われているものに、特別な意味や価値を付加する傾向がある。  
特定の分野に興味関心を持ち、細部にわたる専門的・暗記的な知識が豊富である。  
物の一部や機能とは関わりのない要素(音・振動・光・感触・匂い…)への固執がある。  
予期しない出来事・予想に反する出来事に、ひどく混乱する。  
時間割や予定の変更に、対応できない。  
環境の変化に抵抗を示す。安定していられる環境条件が決まっている。  
一度覚えたことがら・仕事・手順・動作を、変更できない。  
自分の「こだわり」を他者に強要したり、自分の「こだわり」に反する他者の行動を許さない傾向がある。  
10 これらの「こだわり」が、人との「かかわり」を阻害する要因になっている。  
11 これらの「こだわり」によって、人との「かかわり」や「コミュニケーション」が可能になっている。  
12 これらの「こだわり」が職能に結びつき、社会生活を可能にしている。  
13 これらの「こだわり」が趣味に結びつき、余暇生活の楽しみになっている。  
※常同運動や儀式的な行動パターンの有無ではなく、「こだわり」の対象と柔軟性をチェックするものです。

 

  集団との「かかわり」方。
集団での活動には無関心で、ほとんど常に孤立している。  
集団での活動には無関心ではないが、自分で決めたところ・できるところだけ参加する。  
集団での活動に参加しようとするが、方法がわからずなかなか入れない。  
集団での活動に参加する意欲はあるのだが、入れてもらえない。  
集団での活動に積極的に参加しているというより、安定した一定の位置付けがある。  
リーダーや上位者とだけ「かかわり」を持とうとし、他の成員とは距離を置いている。  
数人の援助者や理解者との「かかわり」を保って、集団内におさまっている。  
数人の友人か話し相手がいる。  
置かれた立場に応じて、自分のとるべき行動パターン(役割)を決めて対処している。  
10 置かれた場面に応じて、自分のとるべき行動パターン(キャラクター)を決めて対処している。  
11 集団内で暗黙の内に了解していることが分からずに、危険な目に遭ってしまう。  
12 集団内で暗黙の内に了解しているようなことを明確にしようとして、ヒンシュクを買ってしまう。  
13 集団での取り決めに、断固として従おうとしない・明らかに反抗する。  
14 集団活動での振る舞い方がわからないため、不安症・恐怖症・緘黙症・抑うつ状態になりやすい。  
15 集団活動での過緊張から、胃腸症状・過食などの身体症状を起こしやすい。  
16 問題行動が多く、ほとんど集団行動ができない。  
17 集団的ないじめやからかいに遭いやすい。  
18 何らかの集団に参加・帰属することを、積極的に拒否する。  

  


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