軽度発達障害と高機能自閉症
―「子どもを守る文化会議」分科会資料(2000.8.24作成)―
◎発達障害とは?
- 1980年以降に診断基準が明確化された新しい分野。
- 子どもに固有の精神医学的障害。
- 通常、幼児期・小児期または青年期に初めて診断される障害。
- この分類は発症年齢によるもので、成人期まで臨床的関与を求めてこない場合がありうる。
◎軽度発達障害とは?
1、知的障害が「軽度」である
- 精神遅滞(IQ70以下)ではない。
- 行政的・法的支援が受けられない。
2、特徴
- 通常、遅滞や機能障害は発達の障害が確かに認められる以前から存在しており、成長するにつれて次第に軽減していく。しかし、軽度の障害は成人になっても残存することが多い。しかし、発症は常に乳児期か児童期である。
- 中枢神経系の生物学的成熟に強く関係する機能の発達の障害、あるいは遅れである。
- 多くの精神障害に見られやすい軽快や再発のない安定した経過をとる。
3、診断カテゴリー(ICD‐10/DSM−4による)
- 会話および言語の特異的発達障害(言葉の遅れ・吃音症)
- 学習能力の特異的発達障害(読字障害・書字障害・算数障害)
- 運動機能の特異的発達障害(発達性協調運動障害)
- 社会性の質的な異常を中核とする広汎性発達障害(自閉性障害)
- 明白な行動障害(注意欠陥多動性障害)
4、治療と対応
- 医学的処置(心理発達検査・投薬治療)と教育的な措置を並行して行う。
- 家族や教師が、躾ができていない・本人の努力が足りない・性格が悪いといった問題ではなく、「障害」であると理解することが大切。
- 早期に発見して適切な治療をすれば、経過が良好となる。
- 心理的な負担が軽減しない限り、他の精神疾患を合併する可能性が大きいので、問題行動を起こさなければ良いというものではない。
- 周囲の人たちや社会にも理解を呼びかける必要がある。
◎高機能自閉症について
- 上記の診断カテゴリー3に「自閉性障害」が含まれていることの意義。いわゆる、知的障害を伴わない「自閉症」が有り得ること。(従来の「自閉症」概念は、主に重度精神発達遅滞を伴うものに限られていた。)
- 「自閉症」を「広汎性発達障害」の下位分類に位置付けることで、「自閉傾向児」と呼ばれていた子どもたちを包括する概念が生まれた。
- テンプル・グランディン、ドナ・ウイリアムス、グニラ・ガーランドなどの「自閉症」世界の体験を記述した手記が出版され、注目を浴びるようになった。
※「自閉性障害」は、以下の三つが組になった社会性の障害である。
- 【かかわりの障害】年齢または発達水準に相応しくない、社会的相互関係の発達の質的異常。(身体的・感覚的・認知的な原因によることが多い。)
- 【コミュニケーションの障害】言語を含むコミュニケーション能力の発達の質的異常。(会話のあるなしには関係ない。)
- 【こだわりの障害】反復的または常同的な行動、あるいは執着的な行動・興味・活動のパターンがある。(特定のモノにしか興味を示さない。)
※従って、周囲の状況・相手の気持ちや要求に応じた言動ができない。
◎結語
- 「障害」というのは、本人の困難さを示すものであって、不能を意味するものではない。
- 学術的な論争や社会通念に巻き込まれるよりも、目の前にいる一人の子ども(或いは、人)を救う為には何が問題なのかという観点で見るべきである。