注意の転動が激しい子どもへの対処法

「注意の転動」、いわゆる「不注意」の障害の診断基準〔DSM−4による〕

  1. 学業、仕事、またはその他の活動において、しばしば綿密に注意することができない。または、不注意な過ちをおかす。
  2. 課題または遊びの活動で、注意を持続することがしばしば困難である。
  3. 直接話しかけられた時に、しばしば聞いていないように見える。
  4. しばしば指示に従えず、学業、用事、または職場での義務をやり遂げることができない(反抗的な行動、または指示を理解できないためではなく。)
  5. 課題や活動を順序立てることがしばしば困難である。
  6. (学業や宿題のような)精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う。
  7. (例えばおもちゃ、学校の宿題、鉛筆、本、道具など)課題や活動に必要なものをしばしばなくす。
  8. しばしば外からの刺激によって、容易に注意をそらされる。
  9. しばしば毎日の活動を忘れてしまう。

「注意欠陥多動性障害(ADHD)」の診断基準のうち、上記の「不注意」だけが該当する子ども。いわゆる、多動のない「注意欠陥障害(ADD)」のこどもというのは、どのクラスにも必ずいます。更に、症状が軽い、「症候群」の範囲だともっと多いし、たいていの親は「うちの子は集中力がない」と嘆いています。


「不注意」の「障害」は、必ずしもADHDだけに見られるものではありませんが、ADHDを中心に考えると、だいたい、下のような順序で重症度が増して行きます。(必ずしも、厳密な順番ではありません。)

また、「自閉症」にも「注意」の障害があって、表面的には上記の項目が当てはまっていても、「理由」が異なります。しかし、明確に区別がつけられないケースもあります。

  1. 「注意」ができないというよりも、方法が解からない。または、或る一つのやり方に固執して、切り替えができない。
  2. 何か他の事(多くは、現実的でないファンタジー)に「注意」が集中していて、自分が今置かれている現場に「注意」が向かない。
  3. 自分に話かけられていることそのものが判らない。或いは、話しかけられていることは解かっているが、何かの反応を求められていることが解からない。或いは、興味が向いていない事柄を、意図的に無視する。
  4. 指示そのものを理解できない。或いは、本人の理解度や作業能力に合わせて動素分解し、構造化した「手順」を与えられないと、作業そのものができない。
  5. 作業の流れが一本線でないと、混乱する。
  6. 興味の向いていることだけに「注意」が集中しすぎて、他のことを一切やろうとしない。興味のない事柄に「注意」を向けていられる時間が短い。
  7. "目の前に無い物は存在しないに等しい"ので、自分の持ち物に対する「注意」を意識して持続する必要がある。そうすると、活動ができなくなってしまう。活動に「注意」が集中すると、持ち物に「注意」を向けられない。
  8. 身体知覚の障害のために、今現在 遂行しようとしている課題そのものを忘れてしまう。(例:着替えの最中に、着替えしていることを忘れてしまう。着替えしていることを意識して、手順を守ることに「注意」を集中していないと、その作業そのものができない。途中で中断させられると、どこから始めていいか分からなくなってしまう。)
  9. 本人自身の独自の日常活動のルーチンへの「こだわり」があると、ごく普通の生活リズムにそれを合わせて実行するのが困難。

合併している症状が重ければ、「不注意」の度合いも強くなります。しかし、症状が軽いほど医療機関を受診する確率が低くなり、本人の怠惰(だらしない、なまけている)や反抗(できるのにわざとやらない)と見られ、二次的な情緒障害になりやすい傾向があるので、「障害」の軽重の程度と問題の深刻さは、必ずしも比例していません。

どちらにしても、「注意」する機能や実行能力に「障害」があるのに、「不注意」を指摘されることが、最大の過ちです。


以下、項目別に「対策」をあげます。


不注意な過ちを、よくする。

課題遂行中に、他のことをしてしまう。

注意の持続ができない。

話しかけても、答えない。

順序立てた行動ができない。

持ち物をよくなくす。忘れ物が多い。

片付けができない・常に物が散乱する。

T、散乱した物を片付ける方法を教示する手順の第一段階。

  1. ゴミだけを拾って捨てるように指示する。
  2. 床に落ちている物を、拾ってどこかに上げることを指示する。残ったゴミを捨てさせる。
  3. 大きなカゴや箱を用意して、その部屋に散乱している物はそこに入れるように指示する。
  4. 最初は、カゴはその部屋に置いたままにしておく。次第に、部屋ごとに使用目的を構造化し、関係のないものは置かないようにする。(例:遊んでいい部屋や時間帯を限定する。)

U、一日、一部屋ずつ以下の指示を付け加える。

  1. 中くらいの箱を用意し、おおまかな分類をさせる。この時、分類不可能な物を入れる箱も作ること。
  2. 私物は、自分の部屋や机に持っていくように指示する。
  3. 分類した箱から、元あった収納場所に戻すように指示する。
  4. 片付ける箱の数をだんだんに増やしていく。

V、同時に片付ける部屋や箇所を、だんだん増やしていく。

W、監視なしでできるようにする。最終確認だけする。


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