りんごにまつわる物語
〜白雪姫〜



最近ベストセラーにランクインしているグリム童話。白雪姫は、このグリム童話のひとつです。
グリム童話というのは、グリム兄弟が民衆の間に語り伝えられてきた伝承を書きとめ、童話集にしたものです。
しかし、グリムは版を改めるたびにこの童話集に手を入れたため、ドイツの口頭伝承というよりは、より彼らの創作に近くなったようです。
何故なら、最初に出版された童話集は、語り口が子供向きではなく、性的な表現やしばしば残酷な表現もみられるという批判があったからなのです。
しかし、童話というものだけでなく、その読み手である子どもたちもまた、十分に残酷なものではないかとも思われるのです。
このオリジナルなグリム童話が現在、非常に世の中で読まれています。
それでは、白雪姫のオリジナルはどのようなものだったのでしょう。


まずは白雪姫を殺そうとする継母。これは初版では実母なのですね。
しかし、実母が娘を殺そうとする、という設定はいかにも教育上まずいということで継母に変更になったのでしょう。
(その方が説得力はあるのかもしれませんが、継母イコールいじめのイメージを植え付けては、世界中の継母様に失礼ではないかと思いますが…)
この母親であるお妃は、雪の日に黒檀の窓辺に座って縫い物をしていたとき、針で指を刺してしまいました。血が3摘雪の中に落ちるのを見てお妃は、「この雪のように白く、この血のように赤く、そしてこの黒檀のように黒い子供が欲しい」と思いました。そしてその願い通りに生まれたのが白雪姫、という訳です。
(ここで思うのは、何故針で刺した指の血が雪に落ちたんだろうということです。それには、窓を開けて縫い物をしなくてはならないのではないかと思いますが、雪の日に窓を開けて縫い物をするとは、このお妃はあまり寒さを感じない人間であったということなのでしょうか。
しかも「雪のように(肌が)白く、血のように(唇が)赤く、黒檀のように(髪が)黒い」子供を望んだのだとは思うのですが、雪のように唇が白く、血のように髪が赤く、黒檀のように肌が黒い子でも、お妃の希望通りではないかなどと考えてしまいます。)


やがて白雪姫がすくすくと大きくなり、7つの頃にはお妃をしのぐほどの美しさになりました。自分がこの世で一番美しいと信じていたお妃は、彼女を世界で最も美しいと答えていた彼女の鏡が、「白雪姫はあなたの千倍も美しい」と答えるようになったことに我慢ができなくなり、姫を心から憎むようになりました。
そこでお妃は一人の狩人を呼んで言いました。
「白雪姫を森の奥深く、遠く離れたところへ連れて行って、そこで刺し殺して、証拠に肺と肝臓を持ってきなさい。それをわたしは塩茹でにして食べるから」
(肺と肝臓の塩茹で…肝臓はレバーですが、牛のレバーでも好まない人は多いです。これを食べるというのですから、お妃はなかなか癖のある食材を好む方のようです。)
狩人は白雪姫を森へ連れて行って殺そうとしましたが、美しい姫の命乞いに彼女が哀れになり、姫を逃がしてやりました。狩人が代わりに猪の子の肺と肝臓を持ちかえると、お妃はそれを塩茹でにして平らげました。
(人間と猪の味の区別はお妃にはつかなかったようなので、彼女も常に人間の内臓を食べていたというわけではなかったようです。)


さて、狩人に逃がしてもらった白雪姫は、7人のこびとたちの家へ迷い込み、そこで7人のこびとたちのために、家でお留守番をして家事をしながら、かくまってもらうことになります。
(お姫様なのにどうしてすぐ家事ができてしまうのでしょうか。)
一方、魔法の鏡で白雪姫が死んでいないことを知ったお妃は激怒し、自ら白雪姫を手にかけるべく、7人のこびとたちのいる山へとやってきます。
ここで、お妃はのべ3回白雪姫を殺そうとします。お妃はその都度、物売りの女や農作物を売る百姓女などに化けています。
(白雪姫は買い物をするのが好きだとお妃は知っていたのでしょう。実際、あれだけこびとたちに注意されているのにもかかわらず、すぐ物売りを中へ入れてしまうのですから…)
白雪姫は、最初は黄と赤と青の絹で編まれた紐で絞殺されそうになり、次は毒の櫛を髪にさされて毒殺されそうになり、最後は毒りんごでやはり毒殺されそうになります。
この毒りんごは「見た目には美しく赤い頬をしていて、見た者は誰でもそのりんごが欲しくなりました」というおいしそうなりんごだったようです。
しかし、白雪姫がさすがに警戒して(それが当たり前だ)、百姓女に化けたお妃からなかなかりんごを受け取らなかったので、お妃は白雪姫を安心させるために、りんごを二つに切って、きれいな赤い方を姫に差し出します。
「ところがこのりんごはとてもうまく細工されていて、赤いほうの半分にだけ毒が入っていました」
(ということは、このりんごは半分だけ赤い頬をしていて、半分は青いということになります。そんなツートンカラーのりんごが果たして美味しそうに見えるのでしょうか。)
白雪姫は、百姓女のお妃がとてもりんごをおいしそうに食べるのを見て、(食い意地を押さえることができなくなったのでしょうか)とうとう窓から手を伸ばして残りの半分を受け取ると、そのままかじりつき(本当にお姫様なんでしょうか)、そのひとかけが口に入った途端姫は倒れました。そして今度こそ死んでしまったのです。


仕事から戻ってきた7人のこびとたちは、今までのようにどうにかして白雪姫を蘇生しようと思いましたが、駄目でした。こびとたちは3日間泣きつづけた後、姫を埋葬しようと思いましたが、姫が生きているときと少しも変わらず美しかったので、ガラスの棺を作らせて姫を寝かせました。柩には金文字で名前と生まれを書きました。そして7人のうちのひとりが毎日残って姫を見守りました。こうして白雪姫は長い間ガラスの棺に横たわっていたのです。
そこへある日、ひとりの若い王子がこびとたちの家へやってきて、泊めてもらおうとしました。そして部屋へ入り、棺の中の白雪姫を見てその美しさに一目ぼれしました。王子は金文字を読んで、姫が王女であることも知りました。そこで王子は7人の小人に頼み込み、この白雪姫の入った棺をなんとか貰い受けました。
(今ではこの部分が、王子のくちづけで姫が蘇生する、と変わっています。眠れる森の美女と似ているようです。)
王子は棺を城に運ばせ、自分の部屋に置かせました。そしてその傍らに座り、かたときも目を離しませんでした。そして自分が出かけることになり、白雪姫を見られなくなると、悲しくなって何一つ喉を通りませんでした。
(なので、王子はいつも召使いたちに棺を担がせて運んでいたようです。それもまた変です…)
ところが、いつも棺を担いで歩かされている召使いたちはとても腹を立てていました。
(それはそうでしょう、白雪姫だけでも軽くはなさそうなのに、ガラスの棺なんて重いものを担がされているのでは。きっとその様子も人に笑われていたのかもしれません。)
あるとき、召使いの一人がとうとう棺を開けて白雪姫を高く持ち上げました。「死んだ娘ひとりのおかげで、おれたちは一日じゅうひどい目にあってる」。そう言うと、白雪姫の背中を手でどんと殴りました。すると白雪姫の飲みこんだりんごの芯が(ひとかけ食べただけのはずなのに、何故芯が?)喉から飛び出し、白雪姫は生き返りました。要は、ずっと仮死状態だったのでしょう。
王子は勿論喜んで、次の日にはもう白雪姫と結婚式をあげました。


この結婚式には、あのお妃も招待されました。お妃がその朝、魔法の鏡に聞くと、鏡は国じゅうで一番美しいのは、この結婚式の主役である若い女王だと答えました。お妃はたいそう不安になりましたが、妬ましい気持ちからやはりその女王を見ておかなくてはならないと思い、結婚式へ出席しました。そこに白雪姫の姿を認めて、お妃は死ぬほど驚いたでしょう。
そしてお妃は、火の中で真っ赤に焼かれた鉄の靴を履いて、死んでしまうまで踊りつづけなければなりませんでした。
(これが白雪姫の復讐だとしたら、こわい話です。)


ところで、一体、白雪姫のお父さんはどこに行ってしまったのでしょうね?


<参考文献>

「初版 グリム童話集2」吉原高志・吉原素子訳、白水社(1997)