忍法一覧
最初に、忍法は兵法ではありません。忍者のことを兵法者と
呼ぶこともありません。目指すところが違うからです。
しかし、兵法・・・武術一般の中に位地するとされ、いわゆる
「武芸十八般」中にあげられることもあります。
例えば新陰流には「裏」があり、タイ捨流など隠密法として伝
わっており、諸流にも本筋以外の術法として含まれております。
兵法に繋がるところも少なからずあります。それを良く現した
のが、「万川集海」の中の「陰忍」の編にかかれている、「光に
対する心得」です。
「月光は外から中へ入るものであり、家の中の光は、内から外
へ差し出るものである。それゆえ、月の夜に忍ぶときは、月光を
身に受けてはならず、家の中からでているときは、光源を避けね
ばならず、これを”光足”を避けるというのである」と書かれていま
す。これは、有名な剣術者である宮本武蔵が書いた「五輪書」
の中の「景気を知ること」に相応しています。古くは「孫子」のとい
た「忍び入る時は、相手の気鋭時を避け、情気がきざす機会が
よい」という兵法にも通じているそうです。
対立者があれば、相手の情報を得たいだろうし、混乱させたい
だろうし、あわよくば抹殺したいと思うのが人情です^^。
現代社会でも、尾行や盗聴器をしかけたり、一部社会では暗殺
すら行われているのですから、戦国の世になれば、人間社会の
発生とともに存在する暗い一面をになっていた者の使う”術”が
忍法と言わなければなりません。
これらの行動だけをみると盗賊と代わりありません。
忍者行動には、「忍者とはちゅう盗術」なりという直載な表現が
あります。
三大忍法書の1つ「万川集海」においては、「そもそも、忍芸は
ほぼ盗賊の術に近し、もし天道の恐るべきも知らず、無道の者の
手熟して悪道をなさば、ひっきょう盗賊の術を開くことにもないなん」
と述べています。
例えば、相州乱破を率いて小田原北条家のために働いた風魔
小太郎、甲州透破を率いて武田家のために尽くした高坂甚内らは、
主家を失うとともに新興地江戸を盗み荒らし、ただの盗賊として処刑
されました。
そうかといって、忍者行動は即盗賊ではありません。異なるのは
忍者は命令者により、ある目的のために忍術を使う公的組織の者
です。忍者の標的にされた者からすれば、相手が忍者だろうと盗賊
だろうと同じ気分でしょうけど・・^^。
下は「万川集海」にかかれている忍法の一部です。
1、くノ一の術
本来は九一の法(道)ですが、女子供(女装も含む)を利用して
相手を油断ささせる術でした。偶然にも漢字で”くノ一”と書くと”女”
となることから、”くのいち”と呼ばれるようになりました。
2、うずら隠れ
袖でもって顔を隠し、手足を縮め、鶉のように息をこらしてうずくま
り、寒夜に霜を聞く如く寂然とするさまです。
その分けは顔をあげると、しらじらと見えるし、息が荒くなる。俯け
ば全身萎縮して見えるばかりでなく、意識の統一がはかられ、覚悟
が生ずるからだそうです。
3、身の虫の術
不平不満をもつ者を手なずけ、扇動したり、誘惑したり、敵将の腹
中に入って害を加える虫の如く利用する術です。
4、天唾術
天に唾するたとえの如く、敵方から忍び込んできた忍者をかえって
利用し、敵方に損害を与える術です。
5、参差の術
参差とは高低、大小の凹凸、出入りのあることで、例えば、敵が城
を出たとき、入れ違って、入り、敵が戻った時に、やはり入れ違って
忍びでることです。
これらは、特に漫画や映画などで描かれている忍者や忍法と異なり、
驚くべきようなことは殆どありません。
しかし、こういうごく自然の振る舞いの中で行われて、目的を果たす為
の術が忍法なのです。