循環器疾患について

代表的な疾患について簡単にご説明します。

高血圧  不整脈  心筋梗塞と狭心症  心不全  脳梗塞  大動脈瘤  心電図異常

下記の疾患は循環器疾患とはいえませんが、頻度が多いので載せておきます。

高脂血症  糖尿病  肝機能障害

 

高血圧

 以前は160/95以上が高血圧、140/90未満が正常血圧、その間は境界域とされており、血圧の治療の目標は140/90程度に置かれていましたが、最近はWHOやISH(国際高血圧学会)、米国高血圧合同委員会の報告などでも、目標血圧はもっと低くしたほうが良いということになってきています。具体的には、130/85以下にすることが望ましいと考えられています。ただ、血圧は変動しやすいもので、医者の顔を見ただけで30も50も上がってしまう人もいます。そのため、まず3回別々のときに測定して、3回とも高い場合には治療を考慮します。また、 自宅に血圧計がある方には、自宅で朝と夜に測定してもらい、その値も参考にします。

 肥満がある方は、まず体重を減らすのが一番です。運動不足、ストレス、不規則な生活なども高血圧の原因になります。もちろん塩分は控えめにしてもらいます。いろいろやってもなかなか下がらない場合には、薬を飲んでもらいます。血圧の薬は一度飲んだら一生飲まなくてはいけないと信じている人がいますが、そのようなことはありません。血圧が低めで安定してきたら、薬の量を減らしたり、やめたりすることももちろん可能です。しかし、かぜ薬のように1週間くらいでやめてしまっては何の意味もありません。血圧の薬を飲んでからその効果を判定するには、通常3ヶ月程度はかかります。血圧の薬による治療は半年、あるいは年単位といった長い期間で考えていかなくてはなりません。安定してきたからといって、自分の判断で薬を勝手に止めてしまうのは非常に危険です。やめたとたんに血圧が急に上がって、とんでもないことになる可能性があります。

 検診で血圧が高いといわれたら、まず医療機関でもう一度血圧を測ってください。その時に検診の結果、できれば以前の結果も一緒に持っていってください。そうすることによって、年毎の経過が良くわかり、検査や治療方針が立てやすくなります。昔から高いからとか、親も高いからと気にしないで放っておく方が結構いますが、親がどうであろうと、いつから高かろうと、高血圧を放っておくことは危険です。動脈硬化が進み、脳卒中や心臓病などの重大な病気になる可能性が高くなります。また、自宅に血圧計がある方は、時々自分で測ってみてください。体重を測るように、定期的に血圧を測定し、普段の自分の血圧の値を知っておくことは大切なことです。

 

  不整脈

不整脈とは、心臓の脈の異常です。代表的なものについて解説します。

上室性期外収縮・・・・・心臓には心房と心室という部屋がありますが、心室より上の部分である心房、房室接合部などで起きる脈の乱れのことです。たまに起きる程度であれば通常はほとんど問題ありませんが、心臓に何か別の病気(基礎疾患といいます)がないか、また何発も続けて出たりすることがないかどうかを、心臓超音波検査(エコー)や24時間心電図(ホルター心電図)などで検査します。それらの検査に問題がなければ心配はありません。

心室性期外収縮・・・・・心室で起きる脈の乱れです。これも単発で時々起きる程度であれば問題ないことが多いのですが、3連発以上続いたり、形がいろいろ変化するものなどは危険な場合があります。何が危険かというと、この不整脈をきっかけにしてさらに重症の不整脈が起きる可能性があることです。心室頻拍や心室細動といった、心臓の筋肉が痙攣するような脈の乱れが起きると、突然死につながることがあります。やはり、心エコーによる基礎疾患のチェックとホルター心電図による不整脈の重症度の評価が必要です。基礎疾患がなく、重症度の低いものについては、治療する必要はあまりないと考えられていますし、薬を使うと逆に重症の不整脈が起きやすいと言う報告も多くあります。

心房細動・・・・・心房の中で脈の乱れがたくさん起きて、脈が全く不規則になってしまう不整脈です。70歳以上では約10%の人にこの不整脈があるといわれています。この不整脈が起きた場合にいくつか問題があります。まず脈が極端に速くなったり遅くなったりすると、動悸がしたり、めまいがしたりします。また、心臓に基礎疾患のある人の場合には、心臓の仕事の効率が低下するために息ぎれやむくみなどの心不全の症状が出現しやすくなります。さらに、心房細動になると心房の中で血液がよどみやすくなって、血栓という血の塊ができやすくなります。これがどこかへ飛んでいってしまうと、血管を詰まらせて、脳梗塞などの重大な病気を起こします。心エコーによる基礎疾患のチェック、心電図検査などを受けるとともに、血液が固まりにくくなる薬を飲んで、血栓の形成を防止する治療をお勧めします。

房室ブロック・・・・・心房と心室の間には、電気的な刺激を伝える電線のようなものがあるのですが、この線の通りが悪くなってしまうのが房室ブロックです。1度から3度まであり、1度は伝わる時間が少し遅いだけのもので、通常心配ありません。2度は、時々刺激が伝わらなくなるもので、心配ないものもありますが、治療の必要な3度に近いものもあります。3度は全く伝わらないもので、これは通常体内ペースメーカーを植え込む必要があります。

洞不全症候群・・・・・心臓は自動的に動いていますが、そのための規則的な刺激を作っているのが洞結節というところで、心臓の上部の方にあります。この洞結節の機能がおかしくなって規則的な刺激が出なくなってしまい、結果として脈が非常に遅くなってしまうような病気です。程度にもよりますが、通常ペースメーカーの植え込みが必要です。

 

心筋梗塞と狭心症

 

 心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしています。心臓は、心筋という筋肉でできています。筋肉は動くために必ず血管から血液を介して酸素や栄養をもらわなくてはなりません。心臓も筋肉の塊である以上、やはり血管から酸素や栄養をもらっています。心臓の筋肉に酸素や栄養を運ぶ血管は、心臓の外側を這うようにして3本走っており、ちょうど冠(かんむり)のように見えるので、冠動脈(かんどうみゃく)といいます。
 この冠動脈に動脈硬化が起こってきて、血管の中が狭くなってくると、心臓の筋肉に十分に栄養や酸素を送ることができなくなります。これを心筋虚血といいます。虚血とは血が不足するということです。特に体を動かして心臓に負荷がかかった時(心臓の動きが激しい時)には心筋の酸素の需要が高まり、酸素の不足が起きやすくなります。このような病気を狭心症といいます。症状は、特に体を動かしたときに起きる前胸部の痛みです。典型的な例では、前胸部のかなり広い範囲が、締めつけられるような、押さえつけられるような苦しさを感じます。痛みがひどければ冷や汗をかきます。安静にしていると数分程度で改善してきます。20分以上続くようなら心筋梗塞を起こしている可能性が高いと考えられます。
 狭心症は、冠動脈の中が狭くなって起きるわけですが、これが完全に詰まってしまうと心筋梗塞になります。梗塞とは、血液が行かなくなって臓器の一部が死んでしまうということです。症状は狭心症と基本的に同じですが、一般的に狭心症よりも強い痛みで、長く持続します。心筋梗塞はかなり恐ろしい病気で、重症の不整脈が起こりやすくなるために突然死することもまれではありません。突然死の半数近くは心筋梗塞によると考えられています。救急車に乗って病院にたどり着けば死亡率は5%以下ですが、病院に着く前、救急車が着く前に20%くらいは死亡してしまいます。また、無事に退院したとしても、心臓の機能がかなり低下しますので、その後の生活に支障が出てくることがおおいにあります。
 最近は心臓カテーテル検査といって、足や腕の血管から細い管を入れてやって冠動脈を造影したり、冠動脈の狭いところや詰まったところを特殊な風船で広げる治療(PTCA)、さらにはコイルやメッシュ状になった金属の筒で広げる治療(ステント)などいろいろな治療ができるようになってきています。もちろん薬で様子を見ることも、バイパスの手術が必要になることもあります。
 でも、一番いいのはこういった病気にならないことです。結局冠動脈の動脈硬化が起きるのが原因な訳ですから、動脈硬化を起こさなければいいのです。動脈硬化は単に年を取るだけでも少しずつ起きますが、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、肥満、ストレス、運動不足など様々な原因(いわゆる生活習慣病)が積み重なって進行します。これらの危険因子をひとつずつ改善し、また治療を続け、動脈硬化の進行を少しでも防止すること、これが最も大切なことです。


 

 心不全

 

 心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしています。心臓は、心筋という筋肉でできています。筋肉は動くために必ず血管から血液を介して酸素や栄養をもらわなくてはなりません。心臓も筋肉の塊である以上、やはり血管から酸素や栄養をもらっています。心臓の筋肉に酸素や栄養を運ぶ血管は、心臓の外側を這うようにして3本走っており、ちょうど冠(かんむり)のように見えるので、冠動脈(かんどうみゃく)といいます。
 この冠動脈に動脈硬化が起こってきて、血管の中が狭くなってくると、心臓の筋肉に十分に栄養や酸素を送ることができなくなります。これを心筋虚血といいます。虚血とは血が不足するということです。特に体を動かして心臓に負荷がかかった時(心臓の動きが激しい時)には心筋の酸素の需要が高まり、酸素の不足が起きやすくなります。このような病気を狭心症といいます。症状は、特に体を動かしたときに起きる前胸部の痛みです。典型的な例では、前胸部のかなり広い範囲が、締めつけられるような、押さえつけられるような苦しさを感じます。痛みがひどければ冷や汗をかきます。安静にしていると数分程度で改善してきます。20分以上続くようなら心筋梗塞を起こしている可能性が高いと考えられます。
 狭心症は、冠動脈の中が狭くなって起きるわけですが、これが完全に詰まってしまうと心筋梗塞になります。梗塞とは、血液が行かなくなって臓器の一部が死んでしまうということです。症状は狭心症と基本的に同じですが、一般的に狭心症よりも強い痛みで、長く持続します。心筋梗塞はかなり恐ろしい病気で、重症の不整脈が起こりやすくなるために突然死することもまれではありません。突然死の半数近くは心筋梗塞によると考えられています。救急車に乗って病院にたどり着けば死亡率は5%以下ですが、病院に着く前、救急車が着く前に20%くらいは死亡してしまいます。また、無事に退院したとしても、心臓の機能がかなり低下しますので、その後の生活に支障が出てくることがおおいにあります。
 最近は心臓カテーテル検査といって、足や腕の血管から細い管を入れてやって冠動脈を造影したり、冠動脈の狭いところや詰まったところを特殊な風船で広げる治療(PTCA)、さらにはコイルやメッシュ状になった金属の筒で広げる治療(ステント)などいろいろな治療ができるようになってきています。もちろん薬で様子を見ることも、バイパスの手術が必要になることもあります。
 でも、一番いいのはこういった病気にならないことです。結局冠動脈の動脈硬化が起きるのが原因な訳ですから、動脈硬化を起こさなければいいのです。動脈硬化は単に年を取るだけでも少しずつ起きますが、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、肥満、ストレス、運動不足など様々な原因(いわゆる生活習慣病)が積み重なって進行します。これらの危険因子をひとつずつ改善し、また治療を続け、動脈硬化の進行を少しでも防止すること、これが最も大切なことです。
 

 

 脳梗塞

 

 脳梗塞といえば脳外科や神経内科の領域の病気と思う方が多いと思います。事実、脳のどの部分がやられてどのような症状が出ているか、どの程度回復するかといった脳自体の問題は、専門家には全くかないません。しかし、脳梗塞は、脳に血液を送っている血管が詰まって起きる病気です。血管の病気は循環器と深く結びついています。ですから、脳梗塞を起こさない、あるいは再発させないためには循環器医の果たす役割は大きいと考えています。

 どうして血管が詰まるのかといえば、ひとつは動脈硬化によるもの、もうひとつは血栓によるものです。

 動脈硬化・・・・・血管(動脈)の壁が硬くなって、壁の内側に変成したコレステロールなどの「かす」のようなものがこびりついてきて、中が狭くなってくる現象を動脈硬化といいます。高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、ストレス、肥満、運動不足などいろいろな原因で動脈硬化は進行します。単に年をとるだけでも少しずつは進行します。この動脈硬化が脳に血液を運んでいる血管に起こり、だんだんと血管の中が狭くなってきてあるとき全くふさがってしまうと、脳に血液が行かなくなって脳梗塞になります。血管の中がある程度狭くなってくると、短時間手足の動きが悪い、口が回らない、しびれる、めまいがするなどの症状が出やすくなります。このような症状があったら、なるべく速く検査をして、治療を始めることが大切です。完全に詰まってしまってからでは大変なことになります。

 血栓・・・・・血栓とは血の固まったもののことです。心房細動という不整脈がありますが、この不整脈になると心房の中で血液がよどみやすくなって血液が固まりやすくなります。その結果血栓ができて、それが心臓から血管の中を通ってどこかへ飛んでしまうことがあります。これが脳の血管にかなり起きやすく、結果として脳梗塞になります。不整脈がなくとも心臓の働きが悪い人や、ある種の薬(経口避妊薬など)を飲んでいる人、タバコを吸う人などでは起きやすくなります。心房細動の人には、私は血液が固まりにくくなる薬を飲んでもらって、血栓の形成を予防する治療を勧めています。100%有効というわけではありませんが、少しでも脳梗塞の危険性を減らしておいた方がいいと思います。

 

 

大動脈瘤

 

 大動脈瘤とは、大動脈という太い血管がこぶのようにふくれたものです。大動脈は、心臓から出て一度上に向かい、胸の上部でくるっと曲がって下の方へおりてきます。そしておなかに入り、へその下のあたりで2本に分かれて両足に向かいます。体格、部位にもよりますが、普通の大人の人で3cmくらいの太さがあります。
 その大動脈の壁が弱くなってきて、膨らんでこぶのようになったものが大動脈瘤です。ほんのわずかふくらんだものもあれば、10cmを超えるような大きなものもあります。胸部にできるものも腹部にできるものもあります。風船が大きくなればなるほど破れやすくなるのと同じように、大動脈瘤も大きくなると破裂しやすくなります。破裂すれば、激烈な痛みとともに出血多量でショック状態となり、生命の危機に陥ります。部位や、重要な血管の近くにあるかどうかなどにもよりますが、径6cmを超えるものは手術が勧められます。手術は基本的には人工血管を中に埋め込みます。特に胸部ではかなりの大手術になります。
 これとは別に、解離性大動脈瘤という病気もあります。これは、血管全体が膨らむ大動脈瘤と違って、大動脈の壁の内側に亀裂が入って内側の壁自体が裂けてしまい(これを解離といいます)、内側の壁と外側の壁の間に血液が入りこんでますます解離が進行するという病気です。通常動脈の太さも太くなりますので解離性大動脈瘤といいますが、最近は急性大動脈解離と呼ぶことが多くなってきました。胸部大動脈解離は非常に危険な病気です。
 大動脈瘤にしても、大動脈解離にしても、原因は高血圧や動脈硬化です。結局血管の病気を防ぐためには、高血圧、高脂血症、糖尿病、タバコ、ストレス、肥満、運動不足などの危険因子をいかに少なくし、健康な状態を維持していくかにかかっているのです。

 

心電図異常

 

心電図の異常には、いろいろな種類があります。その中でも多いものが、不整脈と左室肥大、ST、T波の異常です。

不整脈……上室性期外収縮、心室性期外収縮、心房細動、房室ブロックなどの種類があります。通常心エコー(超音波検査)で基礎疾患の有無を調べるとともに、24時間携帯心電図(ホルター心電図といいます)を行って不整脈の重症度を判定します。まったく問題ないものから、薬を飲んだほうが良いもの、ペースメーカーを入れる必要があるものまで様々です。

左室肥大……高血圧が続いたりすると、心臓の筋肉に負担が持続的にかかり、筋肉が厚くなってきます。これを肥大といいます。通常左心室の筋肉に肥大が起きますので、左室肥大と呼びます。肥大は一種の生理的反応ですが、度を過ぎた肥大は心臓の筋肉を疲労させ、最終的には機能の低下につながります。心電図で肥大の所見があるからといって、必ず本当に肥大があるとは言えませんので、心エコーなどで検査をします。その結果やはり左室肥大がある場合には、血圧の治療を含め、総合的な検査、治療が必要です。

ST、T波異常……心電図の1つの波のうち、後半の部分をST部分、T波といいます。ST部分が上昇あるいは低下していたりするのは、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患でよく見られる所見ですが、特に中年の女性には基礎疾患なく見られることも多くあります。T波が低かったり、ひっくり返っていたり(陰性T波といいます)する所見も、虚血性心疾患、左室肥大、心筋症などの多くの疾患で認められます。二次検査としては、心エコーや運動負荷心電図などを行います。

心電図で異常があるからといって、必ず病気があるわけではありません。ただ、心エコーやホルター心電図、運動負荷心電図などの二次検査をやってみないと、本当に大丈夫だとも言えません。どんな臓器でも大切ですが、心臓はその中でも最も大切なもののひとつです。重大な病気があれば、一発で命にかかわる可能性も十分にあります。ですから、検診で心電図に異常を指摘されたら、ぜひ前述のような二次検査を受けてください。

 

 

高脂血症

 

最近、この項目で異常のある方が非常に増えています。通常、検診では次の3項目を検査します。

○ 総コレステロール……善玉と悪玉コレステロールの合計です。悪玉のほうが量は多いです。何も他の病気がない人は220以下、高血圧や糖尿病がある人は200以下、心臓病がある人は180以下にするのが望ましいとされています。コレステロールは、コレステロールを多く含む食品を食べると上がります。代表的なものは、卵(卵であれば何でも多いので、筋子、いくら、たらこなどの魚の卵も多いです)、バターやチーズなどの乳製品、肉類(特に脂身の多いところ)、レバーやホルモンなどの内臓関係、油をたくさん使った料理(揚げ物、炒め物など)などです。

○ HDLコレステロール……善玉コレステロールです。50以上が望ましいとされています。善玉を上げるには、魚、特に青い魚(さば、いわし、あじなど)や豆類をたくさん食べることです。

○中性脂肪(TG)……これは皮下脂肪と似ている脂肪の成分で、食物の種類よりは、食べ過ぎ、飲みすぎ、運動不足、肥満などによって上がってきます。150以下が正常です。前の日の食事の内容などによってかなり変化します。飲み会の次の日などではかなり高くなることがあります。以前はあまりわるさをしないものと考えられていましたが、最近、動脈硬化をすすめる重要な因子であることがわかってきました。

 なぜ高脂血症が恐いのかというと、脂質が高いと血管の中に変成した脂肪の塊を中心とした「カス」のようなものがこびりついてきて、だんだん血管の中が狭くなったり、また血管の壁が硬く、もろくなったりする「動脈硬化」が起こりやすくなるからです。ちょうど排水管のなかにヘドロがこびりついてくるように、血管の中にも「カス」がこびりついてくるのです。そして、だんだん中が狭くなってくると血液が十分に流れなくなって、頭や心臓に血液が十分に行かなくなって、手足が動かなくなったり、また胸が苦しくなったりします。血管が完全に詰まってしまうと、脳梗塞や心筋梗塞になります。

 これらの病気はかなり重い病気で、時には一発で命を落とすこともあります。動脈硬化は若いうちから誰でも少しずつ進んでいきます。そこに高脂血症が加わると、スピードが急に速くなります。高血圧や糖尿病があると、ますます加速します。たちの悪いことに、最初のうちは何も症状がありません。症状が出てきたときには相当進んでいます。ですから、痛くもかゆくも何ともなくとも、高脂血症、高血圧、糖尿病などでひっかかった方はぜひきちんと再検査をし、必要であればしっかりと治療を受けて下さい。

 

 

糖尿病

 

 尿に糖が出るので糖尿病という名前がついていますが、尿に糖が出るかでないかはあまり重要ではありません。問題なのは血液の糖の値、つまり血糖値です。通常の人より血糖が高く、その結果糖があふれて尿に出るのであって、尿の中の糖の多さは一つの目安にはなりますが、この病気の本態ではありません。
 食事をとったり、お菓子を食べたりした後は誰でも血糖が上がりますが、正常な人ではすい臓からインスリンというホルモンが出て、血糖を速やかに低下させます。このインスリンの出が悪い場合、または出ていても効きが悪い場合(感受性の低下といいます)に血糖が上昇します。正常な人では空腹時で血糖は100前後、食後でも150程度です。
 糖尿病の原因として、遺伝的なものは確かに一部ありますが、絶対的なものではありません。それよりも、食べ過ぎ、飲みすぎ、肥満、運動不足、不規則な食生活などのいわゆる生活習慣の乱れによるところが大きいと考えられています。昔、食物が今ほど豊かでなく、車にもあまり乗らなかった頃はあまり糖尿病の人はいませんでした。しかし、現代の日本では約600万人の人が糖尿病もしくはその予備軍と考えられています。
 糖尿病は普通痛くもかゆくもありません。血液を採って検査してみなければわかりません。何ともないからといって放っておく人が特に若い人に多く見うけられます。しかし、糖尿病を放置しておくと、血管がボロボロになっていきます。細い血管がやられて目が見えなくなる網膜症、腎臓の機能が低下して透析をしなければならなくなる腎症、神経の機能が低下して感覚がなくなったり,ビリビリしびれる神経障害が有名な3大合併症です。しかしそれよりももっと恐ろしいのは、太い血管の動脈硬化を進行させ、脳梗塞や心筋梗塞などを非常に起こしやすくする事です。糖尿病の病歴が長い人、コントロール不良の人の血管造影検査をしてみると、はっきり言って「ボロボロ」といった状態の血管であることが少なくありません。
 このような合併症を防ぐためには、しっかりと糖尿病の治療をすることが大切です。まずしっかりと検査を受け、必要であれば飲み薬、あるいはインスリンホルモンの注射薬を使用します。毎日自分で注射をするというとかなり恐ろしい治療のように思うかもしれませんが、針も非常に細く、ほとんど痛くはありません。最近はペン型の注射器が主流で、操作も簡単になっています。また、定期的に血糖の検査をして、良い状態であることを確認していかなければなりません。
 HbA1cという検査項目を最近見かけるようになったかと思いますが、これは過去1‐2ヶ月間の平均の血糖値とよく相関するというものです。患者さんの中には、医者に来る直前だけ頑張って食事を減らしたりして、何とか血糖値をよく見せようとする人もいます。事実検査をしてみると血糖値はまずまずなのですが、このHbA1cを測ってみるとかなり高いということがあり、このような場合にはいつもはまじめに節制していないという事がよくわかります。
 糖尿病そのものは循環器の病気ではありませんが、血管をボロボロにするという意味では循環器と深く結びついています。血圧、コレステロール、糖尿病、肥満、タバコなどいろいろなものが相互に結びついて動脈硬化は進行します。正しい生活を心がけるとともに、これらの生活習慣病の治療をしっかりと続けていくことが大切です。

 

肝機能障害

 

GOT,GPT……いずれも肝臓の細胞が壊れた時に上昇します。肝細胞が壊れる原因はいろいろあります。ウィルス性の肝炎や、アルコールによるもの、胆石でも肝臓に障害の出ることもありますし、自己免疫性の肝炎などという比較的珍しいものもあります。ただ、検診で異常を指摘された方の場合、圧倒的に多いのは脂肪肝です。食べ過ぎ、飲みすぎ、運動不足、肥満などにより、肝臓に脂肪がついて機能が低下します。

ALP……胆石や胆管結石など、胆道系の疾患で上昇することが多いのですが、他の原因で上がることもあります。骨にも含まれているので、骨の病気でも異常を示しますし、妊娠していると高くなります。

LDH……肝臓の疾患の他に、白血病や悪性リンパ腫などの血液の病気、骨の病気、各種のガン、筋肉の病気などいろいろな疾患で上昇します。

γGTP……アルコール性の肝障害の時によく上昇しますが、禁酒すると比較的早期に正常の値になります。ほかに、胆道系の疾患でも上昇します。

肝機能異常がある場合、どのような原因で異常な値になっているかを調べます。超音波検査や、肝炎ウィルスの検査などを行えばかなりの事がわかります。あとはその結果に応じて、経過観察で良いものから、治療の必要なものまでいろいろあります。どうせ大した事はないだろうと思っていて、とんでもない病気だったりすることもありますので、異常を指摘されたら早めに医療機関を受診し、二次検査を受けていただいたほうが良いと思います。

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