喘息の「元を断つ」薬=吸入ステロイドについて
 

喘息は、気管支が狭くなるためにゼーゼーしたり、呼吸が苦しくなったり、咳が続いたりする病気です。どうして気管支が狭くなるかという事は以前はあまりわかっていませんでしたが、ここ10年ほどで画期的な進歩がありました。
 喘息の本態は、気管支粘膜の慢性的な炎症です。好酸球、リンパ球、肥満細胞などの炎症に関係する細胞が多数見られ、それらの出す物質によって気道上皮の損傷が起こり、その結果としていろいろな刺激に対して非常に過敏な状態になっており、このため容易に気管支の収縮が起きて、気管支内腔が狭くなり発作が起きます。つまり、気管支が狭くなるのが喘息の本態ではなく、あくまでそれは炎症が続いているためにその「結果」として起こる事なのです。
 従来から使われている喘息の薬は、主に気管支を広げる作用を持つものです。これはこれでもちろん有効であるし、現在も必要な薬ではあるのですが、結局は狭くなった気管支を広げる、あるいは狭くなるのをなるべく防止するという、いわば対症療法的なものです。喘息の本態が気管支粘膜の慢性炎症であることがわかった現在、この慢性炎症を押さえる薬、つまり「元を断つ」薬がもっとも有効と考えられ、これが吸入ステロイド薬です。喘息の国際的ガイドラインや厚生省/日本アレルギー学会の喘息ガイドラインでも、中等症異常の喘息患者さんには積極的に吸入ステロイドを使用するように勧めています。
 私は、以前の勤務先の時代から吸入ステロイドを積極的に使用しており、その劇的な効果に非常に驚いています。しょっちゅう発作を起こして点滴したり入院していた人が、吸入ステロイドを使用してからほとんど発作が起きなくなりました。少し歩くとゼーゼーしていた人がウォークラリーに参加できるようになり、カラオケで大声で歌えるようになりました。「まるで世界が変わったようだ」と患者さんの何人かから言われます。
 ステロイド薬というと、副作用があるからいやだと、名前を聞いただけで拒否する人がいます。確かに、経口薬のステロイドは長期に飲むといろいろな副作用が出てきます。しかし、吸入ステロイド療法で使うステロイドの量は経口薬の10分の1以下で、また気管支粘膜という局所に作用するもので、全身的にはほとんど吸収されません。長期的に使用しても副作用は認められないという報告が圧倒的です。
 このように優れた薬である吸入ステロイドですが、まだまだ使用していない医療機関がたくさんあるのが現状です。多くの医師がその有効性を認識し、もっと積極的に吸入ステロイドを使用し、喘息による死亡を減らし、多くの喘息の患者さんのQOL(quality of life =生活の質)が高くなることを期待します。
 
 

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