お元気ですか

  毎月、役場から町の広報を送っていただき、ありがとうございます。
  月に一度、懐かしく見る故郷の風景、そして情報…。
 心だけは故郷で暮らしているつもりになれます。
  「ことぶきのみやこ」と書いて寿都。この小さな漁師町が、私をはぐ
 くんでくれました。年々人口が少なくなってきていると聞くのが、少し
 寂しい気がします。
  海があり、山があり、風が吹き、そこに暮らす人たちがいる。どこに
 でもあるような田舎町のように見えるかもしれませんが、私にとっては
 唯一無二、かけがえのないふるさとなのです。
  今でも「出身はどちらですか?」と聞かれると「寿都です」と答え、
 あっけにとられている相手に、長々と故郷の自慢をすることもたびたび
 です。
  寿都で漫画家として暮らすことを夢見て、上京し、なおも夢見続け、
 いつの間にか厄年を過ぎました。息子がこの春中学生になり、寿都で
 暮らしていた年月よりも、東京で暮らす日々の方が長くなってしまいま
 した。
  ”故郷を離れて故郷を知る”といわれますが、自分にとって本当に
 大切なものの価値は、自分の手から離れてしまった時初めて気付く
 こともこの年齢になって知りました。「故郷をいまだ忘れがたく」です。
 夢と現実のはざまでもがき続け、今年四十三歳になります。もう少し、
 こちらで頑張りたいと思います。何時の日か夢をかなえるために。そして 
 大切なものたちと再会するために。


  北海道新聞(夕刊)2004(平成16年)4月26日(月)より

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