- 8月1日(火)
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- 集中講義の準備を進めている。
- 某所の日記の移行作業。2013年1月分について、まずは2013年1月8日の分:
累次積分の順序交換不可能性に関するシェルピンスキーの結果を紹介した@kadamasaruさんのノートを(だいぶ前にダウンロードしていたのに、今頃になってようやく)読んだ。曰く、ZFC上で連続体仮説を仮定すると、正方形状の閉領域上の(つまり、実2変数の)関数を二つの変数について順次(ルベーグ)積分したとき、積分する変数の順番を入れ替えると(どちらの順番でも積分の値自体は定まるのに)最終的な値が一致しなくなる例が存在するとのこと。私の勝手な直感だと、連続体仮説が成り立たない場合の方が実数集合の構造が豊かになるような想像をしていたのだけど、連続体仮説の否定ではなく連続体仮説の成立を仮定した場合にこういう奇妙な例が現れるというのがなんとも趣深いなぁと思った。
- ↑次は2013年1月15日の分:
先日Twitterでの会話の流れから生じたちょっとした問題。数学で「aがbともcとも異なる」ことを「b≠a≠c」と表す書き方は、紛らわしい場合がある(*1)し決して行儀のよい書き方とはいえないのだけれど、自分用のメモなどではそういう書き方を使ってしまうこともあるかもしれない。さて、上のような横着した書き方で「aとbとcが全て異なる」ことを1行で表そうとすると、例えばa≠b≠c≠aと書けば不等号3個で用が足りる。では、一般にn個の元が全て異なることをこのような書き方で表そうとすると、不等号を最小で何個使うことになるだろうか?
なお、3個の元のときを例にとると、上のa≠b≠c≠aのような無駄のない書き方だけでなく、a≠b≠c≠b≠a≠cみたいな冗長性のある(同じペアについての不等号関係が2回以上現れる)書き方でも構わないことを注意しておく。(そういう書き方を許さないとすると、n=4の場合で既に条件を満たす書き方が存在しなくなってしまう。)
(脚注*1) 一つの問題として、等号の場合にはb = aとa = cがb = cを導くのでb = a = cと書いたら「aとbとcが全て等しい」の意味で誤解はないのだけど、不等号の場合にはそういう導出関係は一般には成り立たないので、どこまでの範囲で等しくない関係が言えているのか混乱する場合がある。
これ、改めて考えてみると「n頂点の完全グラフのすべての辺を通る最短の道の長さ」のことだなぁと思い、それはさすがに既知だろうと思って調べてみたら見つかった。10年越しに疑問が解決した。
- ↑↑次は2013年1月20日の分:
昨日と今日は大学入試センター試験だったらしい。受験者と関係者の皆様お疲れさまでした。
さて、そのセンター試験、そりゃまぁ現状のセンター試験に利点が全くないとは言わないけれども、ずっと今の制度でセンター試験を続けていくのは問題があるので、どうにか改善してもらいたいものだと思っている。50万人規模を対象として二日間に亘って一斉に試験を行い、しかも英語リスニング問題用の機器まで登場するとあってはトラブルを完全に防ぐなんて無理ゲーすぎる、という運営側の阿鼻叫喚はさておき、受験生にとっての問題としては、年1回(しかも真冬)しか受験の機会がない点はぜひとも見直されるべきだと考えている。
極論を言えば、現状のセンター試験で良い成績を収める受験者というのは、それまでの学習内容を良く身につけている人ではなく、年にたった1回の試験に向けて、それこそ「落ちる」「すべる」といった単語にまで神経質になるような極限の精神状態の中、真冬の寒さで風邪をひくこともなく、試験の当日のみに調子の良かった人である。つまり、その人本来の学習の出来不出来ではなく、スポーツ選手さながらの「プレッシャーの中で本番当日にピークを合わせる調整能力」が試験結果に大きく影響を及ぼしてしまう。でも、そんな能力は大学での学びに必要な能力なのか?例えば、本人がしっかり勉学に励んでいたとしても、体質的に寒さに弱ければそれだけで試験において大きく不利であるし、また緊張しやすい性格かどうかも大きく関わってくる。そのような要素は、本当に大学入試で試されるべき要素なのだろうか?
もし仮に、現在のような年1回の一発勝負ではなく、自動車運転免許試験のように頻繁に試験を実施…はさすがに労力的に大変かもしれないが、せめて年数回実施される試験の中で一番良い結果の成績を用いるといった制度にできたとしたら。上で例示した寒さへの耐性といった本質的でない要素の影響や、受験者の本領発揮を阻害する強烈なプレッシャーをだいぶ排除できるのではないだろうか、と思うのである。まぁ、かく言う私自身はどちらかというと試験当日だけやたら調子が良かったことで得をした側の受験生だったのでこんなこと言うのもアレなのだけど、折角試験される側もする側も苦労して試験を行うわけだから、どうせなら本当に試されるべき能力が試される試験制度に近付けてほしいなぁと思う次第である。
これねぇ…。そもそも他に良い制度が(コスト面が現実的かどうかも含めて)あるのかどうかもさることながら、ここまで大規模なシステムができあがってしまっていると「移行作業をどうするのか」という問題が確実に発生するんですよね…。「今年度は移行期間なので大学入試を中止します」というわけにはいかないので。本当に悩ましい話である。
- ↑↑↑次は2013年1月26日の分:
妻が借りてきていた映画版「るろうに剣心」のDVDを観た。初めに実写化の話を耳にしたときには、ジャンプ漫画の実写化ということで(自主規制)や(察して下さい)のときのようなアレな出来だったらどうしようと心配していたのだが、実際見てみると完全な取り越し苦労だったようでとても面白く観ることができた。個人的には、特に剣心が戦う殺陣の場面が非常にスピード感溢れる作りで、よくこれだけ雰囲気のある殺陣を実現したなぁと驚きだった。ストーリーも役者さんの演技も良かったと思うので、原作好きで映画版をまだ観ていない方には視聴をお勧めしておきたい。
(えっ、あれもう10年前の作品なの…!?)(正確には、DVDレンタルが始まったのが10年前だから公開自体はもっと前ですね)
- 8月2日(水)
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- 年に一度の数学教員全体の会議があった。対面での開催で、それ自体はまぁ許容範囲なのだが、人数が多いのに会場がそこまで広くない教室なのである。このご時世なのでもっと広い部屋を使ってほしいものである。
- 8月3日(木)
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- 8月4日(金)
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- 在宅勤務の合間を縫って病院で定期診察を受けてきた。
- Twitter経由で知った情報。日本の(少なくとも高校までの)学校教育では自然数の中に0を含めない流儀になっているが、こちらのウェブサイトによると、ISO標準の一つ(ISO 80000-2:2009)では0を自然数に含める定義を採用しているとのことである。(念のため、「だから皆0を自然数に含める定義を使うべし」という主張ではありません。)これもだいぶ驚いたのだが、それと合わせて書いてあった以下の文章
The Chinese goverment published a standard in 1993, requiring all institutions in China teach that 0 is a natural number.
によると、現在の中国の学校教育では0を自然数に含める流儀になっているようである。こういうのも国によって違うものなんですねぇ。
- 8月5日(土)
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- 週末。近所のパン屋さんで昼食用のパンを買ってきた。今日もとても暑いのだが、この夏から使っている帽子のおかげで昨夏よりは外出時の負担がだいぶ軽減されている気がする。
- 8月6日(日)
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- 翌日から東京都立大学で準同型暗号に関する集中講義をすることになっており(これまでにもちょくちょく言及していた件はこれのこと)、この日は移動日ということで現地入り。宿に着いた後、夕食を食べに出かけたら大雨に降られて大変だった。
- 8月7日(月)
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- 集中講義初日。加法準同型暗号の一つであるPaillier暗号の動作の具体例を紹介する際に、683の12乗を1225で割った余りを板書で計算するという事態に陥った(「陥った」と書いているが、その具体例を選んだのは自分なので正しく自業自得である)。公開鍵暗号という分野、ちょっと具体例を考えようとすると大きめの数が出てくる傾向があるのでわりと数学徒泣かせの面があるかもしれない。
- 8月8日(火)
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- 集中講義二日目。準同型暗号の紹介という本来の目的からするとやや脇道ではあるが、Paillier暗号のような素因数分解型の暗号方式の安全性評価との関連で素因数分解アルゴリズムについて紹介するなどした。
- 8月9日(水)
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- 集中講義三日目。完全準同型暗号の具体例として自分(と共著者)が提案した方式の説明をするというかなり手前味噌な構成にした。といっても理由なくそれを選んだわけではなく、比較的単純な構成法なので説明には適すると判断してのことである。なお、根本的に完全準同型暗号という技術自体が複雑な代物なので、「比較的単純」とはいっても説明するのに2コマ分の時間をほぼ丸々費やすことになった。
- 8月10日(木)
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- 集中講義四日目(最終日)。完全準同型暗号を用いた秘密計算に関連する話題として、有限体上の(同じ体に値をとる)関数の多項式による具体的表示にまつわる話をした。有限体上の関数はどれも多項式表示できる(したがって和と定数倍と積の演算の組み合わせで実現できる)というのは完全準同型暗号の理論の基盤となる事実であり、代数学の基礎的な知識だけで証明可能なのだが、その界隈でない方々には意外と知名度が低いらしいという印象である。
- 8月11日(金)
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- 前日に集中講義を終えた後でもう1泊したのでこの日に帰路につく。この時期は九州(帰る先)に台風が来た後で関東(今いる場所)にも台風が来そう、というなかなかスリリングな状況だったのだが、九州の台風が去ってから関東に次の台風が来る前に帰路につくという絶妙なタイミングだったので助かった。
- 8月12日(土)
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- 週末。前日までの集中講義の疲れもあったのでのんびりと過ごした。
- 8月13日(日)
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- 週末。夕食用にカレーライスを作るなどした。今の住まいに引っ越してから大きめの鍋を買ったので、カレーライスなど煮込み系の料理が作りやすくなった気がしている。
- 8月14日(月)
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- 大学の夏季休暇(学生の、ではなく教職員用の)中。なのだが、集中講義とその前の準備とその後の疲労のため、メール対応が色々と滞り気味だったのでそれらに手を付けるなどした。
- 8月15日(火)
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- 夏季休暇中。なのだが、集中講義のレポート採点と組合せ論の講義のレポート採点を片付けていた。
- 8月16日(水)
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- 夏季休暇も最終日ということで、明日からの仕事のために少しだけ気を引き締めて過ごしていた。
- 8月17日(木)
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- 所属先の大学院入試初日。自分が試験を受ける側だったときの精神状態を思い返すと、試験を受けている皆さんに対して心の中で応援せずにはいられない気持ちになる。
- 8月18日(金)
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- 所属先の大学院入試二日目。何を、とは言わないが、大事なことを成した。
- 8月19日(土)
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- 週末。試験を受ける側の皆さんには遠く及ばないものの試験をする側も(特に面接には)それなりに気力や体力を使うもので、結構疲れが溜まっていた。
- 8月20日(日)
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- 週末。このところ趣味と実益(というより、修行)を兼ねて、群論の基本的な定理の証明をソラで再構築したりしているのだが、Sylowの定理の証明(特に、有限群のp-Sylow部分群の個数をpで割ると1余るという部分)の再構築にだいぶ苦戦していた。何とか証明できたのだが、改めて見直してみてもずいぶんと都合の良い定理だなぁと感心してしまう。
- 8月21日(月)
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- この日は在宅勤務。ひょんなことから、同僚の某氏が新型コロナウィルスに感染したことを耳にした。お大事にしてください。
- 8月22日(火)
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- 先週に組合せ論の講義のレポートの採点を終えて成績の登録も済ませていたのだが、受講生から「どうして単位が取れてないんですか」(←大意)という問い合わせがぽつぽつ届いている。昨年度までは(残念ながら単位を落とした受講生はいたものの)そういう問い合わせは来ていなかったのだが、当事者としてはそういう問い合わせの一つもしたくなるのが人情というものだろうから、むしろ昨年度までそういう問い合わせが来ていなかったことの方が不思議だったのかもしれないなぁ、などと思いながら粛々と問い合わせに返答していた。
- 8月23日(水)
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- とある学生の博士論文審査の副査(つまり、総責任者ではない審査員)を引き受けていて、今日はその本審査の日であった。予備審査の際にも一度研究成果の説明は受けているのだが、その際には気が付いていなかった(けれども技術的にはわりと重要な気がする)疑問点があったのでコメントをするなどした。まぁ「疑問点」とは言っても、そんなに重たい内容ではないので大勢に影響はないものと思われる。
- 8月24日(木)
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- 色々と事務仕事が溜まっていたので頑張って処理していた。
- 8月25日(金)
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- 在宅勤務の日。とあるオンライン会議の予定があったことをすっかり失念していて、開始10分前に気が付いて冷や汗をかいた。
- 8月26日(土)
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- 週末。大変幸せなことに現在の自宅の近所には美味しいパン屋さんが2件もあるのだが、そのうち1件で昼食用のパンを買ってきた。このパン屋さん、毎週日曜日(と月曜日)が定休日のため、週末にこのお店のパンを堪能しようと思うと土曜日を逃すわけにはいかないのである。
- 8月27日(日)
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- 週末。一昨日の件をはじめ、このところ予定に関する記憶があやふやなことが多い(もちろん記憶にだけ頼っているわけではなく手帳に予定をメモしているのだが、「今日は会議は入っていないはずだ」と間違って思い込んで手帳を確認せず、後から冷や汗をかく)と感じているのだが、今日も何気なくメールの整理をしていたら、確かに既に受信していたのに全然見覚えのないメールが発掘されて、しかもそのメールには明日会議があると書かれていた。うわぁ超危ない。本当に気を付けなければ。
- 8月28日(月)
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- 会議と研究打ち合わせが計3件あって慌ただしかった。
- 8月29日(火)
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- この日から4日間、所属部署が主催するイベントがあり、何かと忙しい…のだが、今日の午前中に某国際会議で自分の論文発表があったのでその時間帯だけそちらにオンライン参加していた。発表は、一度国内学会で発表済の内容だから大丈夫だろうと気楽に突入したら意外と時間が掛かったので最後の方に焦る羽目になった。未熟である。
- 8月30日(水)
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- 所属部署が主催するイベント2日目。この日は懇親会があり、以前共同研究していた方々に久々にお会いして色々とお話しができたので良い時間だったのだが、ソフトドリンクの品揃えがあまり充実していなかったのが残念だった。この手の懇親会はお酒の品揃えがやたらと充実する傾向があり、良いお酒を振舞うこと自体は別に反対しないのだが、ソフトドリンクも充実させてもらえると私のようにお酒を飲めない参加者にとってもありがたいのになぁと常々思っている。
- 8月31日(木)
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- 所属部署が主催するイベント3日目。私が座長を務めるセッションで面白い研究のお話を聴けたので大満足である。