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2004年4月14日

三人の勇敢な日本人の方々が、早く無事に帰って来られますように…

「やらない系」なのか、それとも「できない系」なのか

例えば、先日の六本木ヒルズの回転ドア事故について。 結局のところは安全対策を疎かにしていたことが事故の原因であったわけですが、安全対策が疎かになった理由として、安全対策の責任者が「子供が挟まれる危険性を認識していたけれども、対策費用の節約や回転効率など別の要因を優先した」のか、それとも「子供が挟まれる危険性そのものを認識できていなかった」のか、この二つの可能性の間には本質的な違いがあります。
前者であれば、事故の原因は責任者の価値観や倫理観にあるといえます。 あまり良い用語ではないのですが、前者のような原因を持つ事故や事件などを「やらない系」と呼ぶことにします。
一方後者であれば、事故の原因は責任者の能力不足(危険察知能力の欠如)ということになります。 後者のタイプの事故や事件などを「できない系」と呼ぶことにします。

事故や事件などに限らず、例えば「得点力不足」という異名を欲しいままにしてしまっているサッカー日本代表の攻撃陣についても、シュートを打てる機会があるのにシュートを打たないのであれば「やらない系」、ゴールを狙っているのにシュートを打てども打てども入らないのであれば「できない系」に分類できます。
もっとも、サッカー日本代表の場合は根本的なコンディション作りや選手起用の影響も大きいと思われますが、そこはそれ。

事故や事件や問題点をこのような二通りの観点で捉えることは無意味ではないと思われますが、どうも最近の事故や事件などを見ていると、以前と比べて「やらない系」よりもむしろ「できない系」の割合が増えているように思えるのです。 例えば、炎天下の車内に我が子を置き去りにして親がパチンコなどに興じ、子供を死なせる事件が続発しましたが、親が極悪非道かどうかという前に、そもそも「炎天下の車内に子供を長時間放置したら死ぬかもしれない」という危険性を認識できていなかった親も実は少なくないのではないかと思うのですよ。 だって、本当に子供が邪魔であれば、そもそもパチンコ店まで連れて来たりしないでしょう?
「やらない系」には法整備や世論の圧力、もしくは逆に問題解決への報酬などによってある程度は対処できるでしょう。 しかし、「できない系」にはそれらの施策は(少なくともその予防には)無力です。 何故なら、それらの人々は「やりたくないからやらない」わけではなく、「やろうと思ってもできない」のですから。
「できない系」の事件や事故を防ぐには、人材配置を工夫するなどの対処療法もありますが、根本的には「教育」「学習」、もしくは病的要因であれば「治療」が必要です。 そして、教育や学習、治療という方法は、法整備や報酬で対処するのに比べ、一般的には長い年月と手間を要し、つまりより困難です。 従って、その「できない系」の事件や事故が増えていることはまことに忌々しき事態であると考えられます。

日本全体が本当に手遅れな状態になる前に、何か大々的に手を打たなければならないのではないかと思うのですが。 とりあえず自分にできることの一つとして、自分自身が「できない系」の事件や事故を引き起こす側にならないですむよう、日々精進していきたいものです。

堅苦しい話ばかりでも何なので、プロ野球中継を見ていて抱いたささやかな疑問

北海道日本ハムファイターズのSHINJO選手や西武ライオンズのG.G.佐藤選手のように、登録名にアルファベットを含む日本選手が現れていますが、それなら英語圏出身選手の名前もアルファベットで登録してあげれば良いのになぁ、と。

ようやく念願のデビュー

研究集会「組合せ論的表現論とその周辺」の報告集がMathSciNetに掲載されました。 私の分も載っているので、ついに念願のMathSciNetデビューを果たすことができました。 よかった。

2004年4月16日

人質になっていた日本人3人遂に解放、なのかなあ

いや、本当ならばもちろん喜ばしいことですし、極めて幸運なことだとも思うのですが。 今までの経緯が経緯なので、本当にこの情報を信じてしまってよいものなのかなぁ、と疑心暗鬼に駆られてしまうわけです。 まったく、我ながら随分と疑り深くなったものですなあ。

2004年4月18日

他愛の無い話であってもこうして世の中に発信できる、そんな平和が失われませんように。

今度こそ。

件の三氏が解放されたという情報は今度こそ本当だったようですね。 もう一方の日本人人質の両氏も幸いにも無事だったようですし、まだ他国の人質の方々もおられるとはいえ、まずは胸を撫で下ろしておられる方も多いことでしょう。
さて、件の三氏に対する最近の論調について気になることがあります。 現在、巷には膨大な数の三氏への批判の言葉が飛び交っておりますが、確かに三氏の行動はその通り無謀だったのかもしれません。 しかしそうだとしても、三氏による人道支援や現地取材という行為、それ自身は依然として素晴らしい行為であるはずです。 それを忘れてはならないと思います。
「自業自得」「国益を損ねた」などの言葉の下に三氏の責任を問うのはよいですが、その際にも三氏の功績に対する最低限の敬意を払うことが望まれます。 そして願わくば、三氏への言及に留まらず、今後民間の報道陣や支援団体、さらには自衛隊を引き続き駐留させるのであれば自衛隊が、現地で安全に活動できる環境をいかにして整えるか、がもっと論じられるようになってほしいと思います。

話は変わって。 アテネ五輪サッカーのアジア最終予選、イラクの属する組では、4試合終了時点(6試合中)でイラクが4チーム中同点首位(2チーム)だそうです。 ちなみにこの組から本大会へ進めるのは首位の1チームのみです。
イラク代表は、かの有名な日本サッカー「ドーハの悲劇」の対戦相手ということで日本とも縁深いチームなのですが、その件を未だに根に持っている日本のサッカーファンは幸いなことにほとんどいないと思われます。 というわけで、イラクの方々を活気付けるためにも、イラク代表の予選突破へ向けてささやかながら応援したいと思います。

本日の更新(4月18日)

「フロアバレー簡易ルール」を最新版に更新しました。 また、「漢字ホモロジー群研究室」に、関連ページや過去の判断事例を追加しました。

2004年4月26日

五七五 ああ五七五 五七五

というわけで、最近川柳という表現形態に興味を持っています。 日頃長々と書いたり喋ったりすることが多い身として、その対極にある「自分の主張を17文字に凝縮する」という作業に新鮮味を覚えるのですよ。 興味を持ったきっかけは某ラジオ番組のコーナー「勝ち抜き時事川柳」なのですが、そこで披露される作品群には毎回笑わせられっぱなしです。 よくもまぁ、たったの17文字であんなに人を食った感を醸し出せるものだなぁ、と。 いや、人を食っていない真面目な作品もちゃんとあるんですけどね。
ちなみにそのコーナーの前回のチャンピオンの作は「あのオーナー 今の成績 自己責任」。 「あのオーナー」がどのオーナーなのかわからない人には全く面白さが伝わらないということを差し引いても、チャンピオンの座に相応しい破壊力抜群の作品だと思います。 …ほんとに悪戯者の作者さんですなぁ(満面の笑みで)。

そこでいくつか習作をば。

ものすごく久しぶりに詰将棋の話を書いてみます

そう思い立ったのは「史上初の玉座裸玉完全作発見か」との報(「おもちゃ箱」内)を見たからです。 裸玉創作をしたことのない身で僭越ながらその困難さを想像すると、通常の詰将棋創作が「彫刻を置く台の形や台の脚の位置や脚の本数を変えたり、もしくは彫刻にちょっと手を加えたりしながら、安定した美しい置き方を探す作業」だとするならば、玉座裸玉の創作は「彫刻を棒1本だけで支えるための棒の位置を追求する作業」のようなものなのでしょうか。
詰将棋400年の歴史上初の快挙(まだ完全作だと証明されたわけではないのですが、今のところ不完全との指摘は無いようです)だというだけでもその困難さは想像できますね。 無事に完全作だと確かめられることを願っております。

2004年5月19日

最近のサッカーについて

しばらく多忙のため更新を滞らせていた間に、サッカー界では色々なことがありました。

まずはアテネ五輪男子サッカーアジア最終予選から。 イラクのいるC組は、前回の更新時には4試合終了していて、イラクが勝点6で首位だったのですが、その後第5節でイラクが痛い敗北を喫しました。 その時点で残り1試合ずつを残し、オマーンが勝点8で首位、以下クウェート(勝点7)、イラク(勝点6)、サウジアラビア(勝点6)となっていました。 イラクにとっては、自身が最終戦でサウジアラビアに勝ち、さらに同じ日の試合でオマーンとクウェートが引き分けることが予選突破のために必要かつ充分、という中々に厳しい情況に置かれていたのですが。
迎えた5月12日の最終戦、イラクはサウジアラビアを見事に下し、しかも本当にオマーンとクウェートが引き分けてくれたのです。 その結果、イラクの予選突破が決定しました。 状況が状況ですので、イラクの予選突破は通常にも増して素晴らしく、価値のあることだと思います。 心より祝福致します。 そして願わくば、日本とイラクの代表が、決勝トーナメントで再会できますように。
ちなみに残りのA組は、韓国が6戦全勝、しかも無失点という圧倒的な強さを見せつけて予選突破しました。 韓国の皆様おめでとうございます。 それにしても、確かに韓国の前評判は高かったのですが、6試合無失点ですか。 全勝というだけでも普通は大変なことなのですが。

そして女子のアジア最終予選、トーナメント準決勝。 既にご存知の通り、アジア最強と謳われる北朝鮮を3対0という望外の得点で破り、男女揃っての予選突破を果たしました。
女子サッカーの試合はこの予選で初めて見たのですが、何のことはない、男子同様に面白い試合ではないですか。 戦術も技術も体力もしっかり備わっていましたし、シュートがちゃんと枠に飛ぶあたりはむしろ男子代表の試合よりストレスを感じずに観戦できたとも思います(まぁ、男子でもU-23代表選手は比較的ちゃんと枠に飛ばしますけど)。 そして何より、あの見事なまでの多数の熱狂的なサポーターの皆さん。 …あんな雰囲気の中にいきなり放りこまれては、そりゃ北朝鮮の選手も驚いてクリアミスやオウンゴールしちゃいますよ。 あれだけの「ホームの利」を作り上げたサポーターと、そのホームの利をきっちりと活かしきった選手の皆さんに拍手。
ちなみに、予選突破を決めた後の決勝戦は負けてしまったのですが、それはまぁご愛嬌ということで、本番での活躍も期待されます。

などと書いていたら、「アテネ五輪からサッカーが除外される危険性が」とのニュースを発見。 どうやら、国際サッカー連盟(FIFA)と、五輪で採用されているドーピング検査規定を策定した世界反ドーピング機構(WADA)の間でドーピング検査について意見の相違があるらしいです。 というか、そんな揉め事は予選を始める前に済ませておいて下さいよ、と思うのは私だけではないと思うのですが。 流石にこれで本当にサッカーを除外したら非難囂々ですから、何とかするのだとは思いますが、どうやって収拾をつけるのでしょうね。

国内に目を転じると、東京ヴェルディ1969の森本選手が、15歳と11ヶ月でのJリーグ初得点という快挙で、Jリーグ最年少得点記録を大幅に更新しました。 記録自体も見事ですが、達成した日付が覚えやすいのが良いですね。 5月5日のこどもの日に最年少記録更新だなんてまるで作ったかのような展開ではありませんか。
ちなみに、得点の場面で森本選手をフリーにしてしまった責任者は日本代表選手でもあるDFの茶野選手ですが、先日とあるサッカー誌での茶野選手のインタビューを読んだところ、あの失点を「自分のミス。普段なら考えられないこと」と語っていました。 もちろん、そのミスをきちんと得点に繋げた森本選手はやはり素晴らしいのですが、その記事を読んで少し安心しました。 だって、いくら森本選手が「怪物」と騒がれる逸材だと言えども、もし仮にあの失点が「DFに大きなミスもなく、普通に振り切られた」結果なのだとしたら、記録を喜ぶよりも、15歳の新人に普通に振り切られてしまうような選手がDFを務める日本代表の行く末に対する心配が先に立ってしまいますもの。 でも、あのような受け答えをしていたのですから、日本代表の試合では「普段では考えられないミス」はしないで、日本のゴールを守ってくれるものと思います。

漫画『詰将棋パラダイス』

某詰将棋作家のサイトによると、上記の題名の漫画が『別冊ヤングマガジン』に載っているらしいです。 そう聞くと、ヤングマガジンの読者層と「詰将棋」というものを知っている層との間にどれだけ共通部分があるのか甚だ心配になるのですが、そんなことはお構い無しに、どうやら「詰将棋が橋渡しになる純情恋愛漫画」なのだそうです。 将棋が趣味の女の子(中学生?)が、好きな同級生の男の子から、突然自作の詰将棋を見せられてびっくりするのだそうです。 そして、自分もお返しに出題したりして、「難しくしすぎたかな…」なんてどきどきするのだそうです。 なるほど、青春ですなぁ。
それにしても、いくら日本人の趣味が多様化しているといっても、まさか恋愛漫画に詰将棋が登場するとは。 いつぞやの、ヒロインと元数学者が恋におちた某ドラマから受けた衝撃を上回りますよこれは。 私は実物を見ていないので、まだこの雑誌が売り切れていなければいいなぁと切に願っています。
なお、念の為に注意しておきますと、『詰将棋パラダイス』という名前の詰将棋雑誌は実在します(というより、詰将棋雑誌の最大手です)。 だからといって、名前の使用に関して許可を取らなければならないのかどうか私にはわかりませんが、もし必要だとしても文句はどこからも出ないでしょうね。 何しろ、タダで宣伝と普及活動をしてもらっているようなものですから。

本日の更新(5月19日)

先日、友人Y下氏からの指摘で、漢字ホモロジー群関係での彼からのメールを見落としていたことに気が付きました。 ごめんなさい。 というわけで関係する内容を更新。
ちなみに、先日出席した組合せ数学セミナーで、北陸先端科学技術大学院大学に以前いらしたという方とお会いしまして、「前の学長は示村さんという方ですよね?」などと漢字ホモロジー群ネタでお近づきになろうという悪い考えが頭をよぎったのですが、辛うじて踏み止まることができました。 いやあ、日常のどこに危険が潜んでいるかはわからないものですなぁ。

2004年6月11日

えらく間が空いてしまいましたが、前回書いたことについて

何かと忙しかったので前回更新からえらく間が空いてしまったのですが、前回書いたことのその後について。

ようやく確定したのでご報告

今年度から日本学術振興会の特別研究員(DC2)に採用されました。 任期は2年間です。 既に内定は貰っていたものの、採用決定の通知がまだ届いていなかったので発表を控えていたのですが、初回の奨励金が口座に振り込まれたことからするとどうやら無事に採用されたようです。 このことで私の研究の方向性が変わるわけではないのですが、期待外れだと思われないようにより一層気を引き締めて研究を進めなければいけませんね。
そんなわけで、数学の小部屋内の職歴の欄に特別研究員を追加。

だからというわけではないのですが、たまには数学っぽい話も

今日Yahooで見つけた、「仕事のストレスによる精神障害が原因であるとして2002年度に労災認定された自殺者のうち、半数以上が月100時間以上の残業をしていたことが判明」とのニュース(共同通信)について。 この記事では、調査に当たったとある病院の助教授の談話として「長時間残業と精神障害発症の間に因果関係があると考えられる」との意見が紹介されており、またYahooトピックスによる題名も「残業と精神障害に因果関係」というものでした。 (なお、元の記事自体の題名には「因果関係」との言葉は使われておりません。)
そりゃ、そんなに長い時間残業していたら精神的にも辛くなるよなぁ、と思わず納得してしまうような記事ですが、しかし本当に両者の間に「因果関係」があるとみなすためには上記のデータだけでは足りないはずです。 例えば、仮に精神障害の有無に関わらず日本の全会社員の半数以上が月100時間以上の残業をしているのだとしたら、両者の間に因果関係がなくとも、精神障害を発症した人の中にそのような人が半数以上含まれている可能性は充分にあるわけですから。
というわけで、「因果関係があると考えられる」との談話を掲載するのであれば、少なくとも、会社員全体における長時間残業をしていた人の分布が上のように偏っているわけではないというデータぐらいは一緒に載せてもらいたかったなぁ、と思います。 まぁ、ひょっとすると実際に全体の分布自体が偏っていたのかもしれないのですが…

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製作者 縫田 光司(ぬいだ こうじ)  連絡先はこちら

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