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 「里古りて柿の木持たぬ家もなし」             芭蕉    
 柿は、日本で最も古い果樹といわれ、学名を「デオスピーロス・カキ」と言います。これは「神から与えられた食物」という意味です。さらに古くから漢方薬として用いられてきた中国では、「百果の王」といわれ、果物の代表といわれています。
 柿は、食物としてはもちろん、家庭薬として、塗料・染料として、防水・防腐・防虫剤として、さらに、道具の素材として、実、皮へた、種、花、葉、さらに幹など、丸ごと一本の木が活用でき、人々の生活になくてはならないものでした。活用範囲がとても広く、前出の芭蕉の句にありますように、昔はたいがいの家では屋敷内に柿を植えていました。まさに柿は「生活樹」「万能樹」とでもいうべきものでした。
 果実だけのことでいっても、まず、夏のまだ実が固くて青く、渋味の多い頃に「渋柿」をとり、しぼって柿渋をつくり保存します。次に、秋に赤く実った甘柿を生で食べ晩秋になると、枝に残っていた柿も少なくなり、ゼリーのように甘い「熟し柿」になります。その熟し柿も終わると、皮をむいて軒下につるしておいた「干し柿」が、おいしくいただけるのです。夏ごろの柿渋づくりに始まって、無病で秋冬を乗り切るための成分をたくさん含んだ柿を、順々に次の年の春先まで食べて健康を守ったのです。
 柿渋は薬ではありません。しかしながら古人はその知恵を駆使し、利用してきたのです
 少しは柿渋のことを知っていただけたでしょうか。これを機に柿渋とおおいに触れあっていただきたいと存じます。 

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