飛行機雲を見ると


飛行機雲を見ると、君の微笑を思い出すよ。
君は希望に満ちた笑顔でいつもこう言っていたね。
「僕はパイロットになって、世界中を飛び回りたいんだ!」
いつでも、何処にいても、君の瞳に映る青空はとても綺麗だった。

僕達が18歳になった年に戦争が始まった。
君はパイロットになった。戦闘機のパイロットに。
焼け落ちた町にいても、灼熱の荒野からでも、
君が送ってくれたたくさんの絵葉書には、いつも青空の写真が写っていたね。

君からの手紙が途絶えた頃、空は灰色に染まった。
そうして戦争は終わったけれど、君は遂に帰って来なかった。
誰かの命を奪いたかったわけじゃなくて、ただ自由に空を飛びたかっただけなのに、
君はあの綺麗な青空も君自身も喪ってしまったんだね。

飛行機雲を見ると、君の笑顔を思い出すよ。
僕達は空の蒼を取り戻したけれど、君は此処にいない。
僕はもう青い空の色をした君の瞳を見ることは出来ないんだ…もう、2度と。

飛行機雲

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