***杜若***


 ねぇ、君は、ジンクスってあると思う?

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 女の子は占いが好きだ。
 星を数え、水鏡を覗き、花弁を千切って未来を見る。
 偶然と直感。確率は50/50。
 そうして見透かした未来を引き寄せる為に――或いは回避する為に、彼女達は幾つものおまじないを生み出す。
 四つ葉のクローバー、枕の下の写真、銀色のスプーン、etc.etc.…。
 それはまるで魔法のようで、男共は呆れると同時に時に感心してしまったりもする。
 たぶん、きっと、女の子はみんな魔法使いで小さな女神様だ。

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 竹刀を傍らに置き、面を着ける前に髪を手拭で覆う。
 戦いに向けて高揚していく気分と、醒めていく感覚。
 だが、ふと投げかけられた声に、俺の意識は心地良い緊張から現実へと引き戻された。
 「それ、菖蒲?」
 顔を上げれば、道場仲間が白い布の上に淡い青で描かれた花を指差している。
 「ううん、杜若」
 内心の未練に蓋をしてそう答えれば、彼はきょとんとした顔で鸚鵡返しに呟いた。
 「カキツバタ?」
 「そ、杜若」
 「菖蒲とどう違うんだ?」
 しきりに首を捻る彼に、ちょっと苦笑してしまう。
 まぁ解らなくはないけどね。俺だって、最初は全然見分けつかなかったし。
 唇に浮かぶ笑みが苦笑いから思い出し笑いに変わるのを何とか抑えようとしていると、今度は先輩が俺の手元を覗き込んできた。
 「あれ?そういえばおまえ、この間の試合の時もその手拭じゃなかったっけ?」
 「うん、これ、幸運のおまじないだからさ」
 結構効果絶大なジンクス。俺だけの魔法。
 だけど、にっこりご機嫌で頷く俺に、周りからはどっと笑い声が上がる。
 「おまじないー?」
 「何だよ、始まる前から運頼みかよ」
 「かーわいーなぁ、もう」
 「何とでも言えよ」
 からからと笑う友達や先輩に、俺は思いっきり顔を顰めて舌を出してやった。
 もちろん俺だって幸運だけに頼るつもりは毛頭ない。腕は磨くし、心も鍛える。
 でも、その上で、幸運も掴み取る。
 だって昔から言うだろう?運も実力のうちってね。

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 ねぇ、君は、ジンクスってあると思う?
 杜若の花が、俺の勝利のジンクス。
 「この花の花言葉はね、「幸運は必ず訪れる」なのよ」
 そう教えてくれたのが隣の家のお姉さんで、俺の勝利の女神だってのは内緒だけどね。



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