■ ■   ■ power      


「今度、ウータイに行くそうだな。俺も付いて行くからな」
 有無を言わさない強引さで、ルーファウスは彼の極秘任務に付いて来てしまった。
 勿論、彼は猛反対した。
 いくら戦争が終結して、数年が経ち、ウータイが神羅カンパニーに迎合したとはいえ、反神羅思想の持ち主は必ずいるのだ。その証拠に、神羅のお膝元と言うべき、ミッドガルには多数の反神羅組織が存在し、毎日の様に暴挙を繰り返しているのである。
 ルーファウスにしてみれば「何処に居ても同じ」なのだろう。
 しかし、護衛をする彼にしてみれば、セキュリティーのしっかりしているミッドガルを一歩出れば、危険度は数倍…いや、それ以上に増すのである。
 それでも――。
「お前がいれば、安心だろ?」
「当然です!! 指一本、髪の毛一筋でさえ、触れさせはしません!!」
「なら、全然問題無いじゃないか」
「…………!?」
と、不覚にもルーファウスのペースに、まんまと嵌められてしまったのだった。
 斯くいうルーファウスも、ただの気紛れや、何の考えも無しに、こんな事を言い出した訳では無い。
 長年の敵対国だったとはいえ、ウータイは亡き父・プレジデント神羅の生まれ故郷であり、恋人――しかも今回も我がままを言って、困らせている目の前の人物――である、ツォンの故郷でもあるからだ。
 前者はともかく、既に故郷との縁を切っているツォンが、以前言っていた言葉が引っ掛かっていたからだ。
『理屈を抜きにして、自分の原点が “そこ”にはあるんですよ』
 父親がウータイ出身である以上、自分にもツォンと同じウータイの血が流れている訳で、ならば自分の原点も“そこ”にあるのではないか、と考えたからなのだ。
 この事は、ツォンには言っていない。
 言えば、「あの国でなくても、あなたの原点はミッドガル(ここ)にあるでしょう」と言うに決まっているから。

 いつもなら、ルーファウスを任務に同行させるのは、絶対に止めていた。
 それも、まだルーファウスのお守役の任に就き始めた頃、スラム街に連れて行き、反神羅組織に遭遇した事があったからだ。帰社後、当時のタークス主任に手厳しく指導された。その時、ルーファウスも一緒に灸を据えられ、以後は一切、この手の我がままは言わなくなった。
 故に、ルーファウス自身も自分が任務に同行させる事は無い、と承知している筈である。
 ただ、いつもの我がままとは、少し違う感はあった。
 結局、自分はルーファウスには甘いのだ。他人には絶対に見せない、子供じみた我がままを言う時の表情を見せられると、嫌とは言えないのだ。

power

「結局、ツォンの魂って、救われないんだなぁ」っていう話。
ルーの「浴衣の着乱れた姿」ってのを使ってみました。


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